《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》シベリア大走 Ⅲ

俺は中心の最も妖魔が集した中心部へ向かった。

亜紀ちゃんには右翼から。

柳に左翼を。

そして雙子には超長距離タイプの妖魔の殲滅を命じた。

ジェヴォーダンが妖魔の軍勢に混じっていることが「ウラール」の霊素レーダーで分かっている。

増援で來たデュール・ゲリエに、その討伐を命じた。

今回は「バイオノイド」は來ていないようだった。

恐らく他無く撃破されることを見越して、無駄な消耗を避けたのだろう。

デュール・ゲリエは広域殲滅裝備を施しているが、それは主に航空戦力とミサイル攻撃のためのものだ。

輸送機が襲われることを想定した、対戦闘機やミサイルの裝備だった。

ジェヴォーダンにどこまで通用するのかは分からない。

しかし、デュール・ゲリエに有効な武裝が無かったとしても、それはディスインフォメーションになる。

強力な攻撃力に特化した裝備もあるが、それならばジェヴォーダンとも渡り合える。

それとは別に、下位の妖魔相手であれば、デュール・ゲリエの広域殲滅攻撃も有効なはずだ。

Advertisement

今はとにかく數を減らしたい。

接近しなければ「水晶騎士」の攻撃は喰らわないし、高速機なので「弓使い」の攻撃も回避出來るはずだ。

「ウラール」の霊素レーダーとリンクして、妖魔の攻撃はデュール・ゲリエにも伝達出來る。

まだ、どのような妖魔が他にいるのかは分からないが。

戦況を見て、不味いようならば拠點防衛に回すつもりだった。

俺は様々なことを高速思考していた。

「虎王」が妖魔の場所はおろか、どういう相手かも俺に伝えて來る。

虎白さんは知っていたが、「虎王」は攻撃と同時に「極星結界」を生する。

だから俺にはどんな攻撃も通じない。

完全なものとは思っていないので注意は怠らないが、「業」のれる妖魔であれば、ほぼ大丈夫だろう。

それに「虎王」の極技を使えば、広域殲滅が可能だ。

しかし、それを今の段階で「業」に知られたくはなかった。

だから範囲を絞りながら、俺は戦った。

一振りで數百の妖魔を撃破していく。

Advertisement

妖魔の攻撃、反撃もあるが、俺に屆くことはなかった。

亜紀ちゃんと柳は「オロチストライク」を主に使っているはずだ。

ただ、余りにも遠方過ぎて、俺にも気配は分からない。

インカムで話すことは出來るので、何かあれば言ってくるだろう。

ルーとハーには、超長距離タイプを殲滅したら、柳の左翼戦線へるように言っている。

超長距離タイプと思われる妖魔は、「ウラール」が位置を把握している。

そう時間は掛からないだろう。

10分が経過した。

俺は既に數十萬の妖魔を斃したはずだ。

大分狀況が見えて來た。

妖魔は「オーガタイプ」という、鬼のような形狀の者が最も多かった。

の8割。

その他に「水晶騎士」タイプとそれと同等の上位妖魔が1割。

殘りは俺たちがまだ遭遇していない者だ。

天使に似た形狀やヴェオウルフタイプと思われる者とその他。

渋谷に現われた憑依タイプのものはまだ見ていない。

戦力としては弱いのだろう。

それぞれの戦線から報告が屆く。

「亜紀です! 現在約10萬を撃破! 続けます!」

「ルーです! あと2か所! 防衛の妖魔が多數いて、手間取ってます!」

「柳です! 現在約3萬を撃破! 頑張ります!」

「「ウラール」より! 高速タイプが収容所へ抜けて來ました!」

「よし! 最後方のデュール・ゲリエ10は拠點防衛に向かえ!」

「羽! そっちへヴェオウルフタイプが行くぞ! デュール・ゲリエと共闘しろ!」

「了解!」

「紅! 思い切りやれ!」

「了解です!」

今回紅に裝備させた「バハムート」は拠點防衛のための武裝だ。

高速移ではなく、高速攻撃に特化している。

數百の砲塔が全を覆い、紅のAIと連して各砲塔が瞬時に未來予測しながら目標を撃破していく。

砲塔からは「オロチストライク」を解析したエネルギー波が発される。

「安定」の概念である「バハムート」をその名稱とした。

まだ1%も撃破していない。

「業」との戦いが數と質の戦いとは考えていたが、これだけ桁違いの數をぶつけられると如何に苦戦するのかが分かった。

経過20分。

雙子は既に柳の戦線の左翼へ合流している。

超長距離タイプの攻撃を浴びなかったのは幸いだ。

「ウラール」が予想外に早く到著したので助かった。

ジェヴォーダンは30であることが分かり、その全てをデュール・ゲリエと子どもたちが撃破したようだった。

たちも、デュール・ゲリエの広範囲攻撃がヴェオウルフタイプを足止めし、紅の高速連でほとんどを撃破出來ているようだ。

は他へ回り込もうとするヴェオウルフタイプをデュール・ゲリエと連攜して撃破している。

しかし、妖魔の大軍団は徐々に収容所へ近づいている。

既に距離300キロになっていた。

俺たちの撃破數が斷然ないせいだ。

俺は次の手を考えていた。

その間にも「虎王」を振るいながら妖魔を斃している。

武神「月狼」を出撃させるか。

「天の王」を呼ぶか。

「虎王」をもうし解放するか。

それとも……

「亜紀ちゃん! 敵前方10キロに「最後の涙」をぶちかませ! 地面にを作れ!」

「はい!」

オープンにしているので、柳たちにも聞こえている。

俺たちは空中へ上がった。

妖魔の大軍団の前方に、長さ200キロ、幅200メートル、深さ2キロの渓谷が出來る。

そのまま落ちる奴はいないが、進軍が停止した。

俺はそのまま高速で飛びながら、「虎王」の《無限斬》を使った。

妖魔のが飛び散りながら消えていく。

「今の攻撃で5000萬の妖魔が消えました!」

「ウラール」から報告がった。

「クロピョン! あいつらを谷へ墜とせ!」

妖魔たちが立っている地面がせり上がり、多くの妖魔が亜紀ちゃんが開いた渓谷へ落ちて行く。

「全員で「オロチストライク」を連しろ!」

「「「はい!」」」

俺は地上に殘っている妖魔たちを撃破していった。

逃げ場のない谷の中で、妖魔が次々と殺されて行く。

しかし、まだ大多數の妖魔が殘っている。

「蓮花に武神「月狼」の出撃を伝えろ!」

俺の命令が「高速皇紀通信」で蓮花に伝えられる。

高度に暗號化された通信は、絶対に解読出來ない。

4分後。

次元跳躍により、武神「月狼」が現著した。

長40メートルで四つ足の狼の姿をしている。

は幅50センチ、長さ3メートルの銀の特殊合金で覆われている。

9メートルの尾も同じ合金の連なりだ。

大きな口には長さ50センチから1メートルの牙が生えている。

「妖魔を手當たり次第に喰え!」

「月狼」は天空に雄びを上げ、妖魔の群れに突進した。

大きく口を開け、顎の前の空間が揺らめく。

俺は巻き添えにならないように、一度子どもたちを集めた。

亜紀ちゃんが真っ先に飛んで來る。

「タカさん! あれは!」

「武神「月狼」だ。まだ出したくは無かったんだがな」

「月狼」は疾走しながら妖魔を平らげて行った。

「なんですか、あの攻撃は!」

柳と雙子も到著した。

三人も「月狼」の姿と攻撃に驚いている。

「あれはタヌ吉の「地獄道」なんだ。タヌ吉に頼んで、あの武神に裝備したんだよ」

「え!」

ればどんな妖魔も助からない。「業」の妖魔の《數》に対抗する手段の一つだけどな。でもまだ足りないようだ」

「月狼」は俺たち以上の速さで妖魔を駆逐しているが、時間は掛かりそうだ。

「俺たちは抜けた妖魔を片付けるぞ!」

「「「はい!」」」

武神「月狼」は、あの「地獄道」によって空間をジャンプ出來る。

飛行しながら空間を「喰い」、短時間で移できるのだ。

そんなことが出來るのは、武神「月狼」だけだ。

これはタヌ吉との約束に寄り、他のシステムには組み込まないことになっている。

言い方は難しいのだが、別にタヌ吉が出し渋っているわけではない。

タヌ吉は俺のために何でもしたいと思っている。

摂理に関わる問題らしい。

タヌ吉がもうとも、出來ないことなのだ。

だから俺たちのタヌ吉の「地獄道」を解析出來たわけでもない。

使うことが出來たというだけだ。

ブラックボックスともし違う。

何故山がその姿でそこに在るようになったのか。

それは誰にも説明できない。

しかし、我々は山の姿を見ることは出來るし、登ることも出來る。

存在しているものは扱えるということだ。

武神「月狼」が來たことで、戦いの趨勢は決まった。

輸送機C17も4度目の著陸が終了しそうだ。

収容所周辺の妖魔はほぼ羽と紅、そしてデュール・ゲリエが駆逐している。

今のところ被害は無い。

ルーとハーがんだ。

俺にもプレッシャーがじられた。

尋常では無い巨大なプレッシャーだった。

    人が読んでいる<星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困惑する外科醫の愉快な日々ー>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください