《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》「神殺し」 Ⅳ
俺はしばらく、自分の狀態が認識出來なかった。
自分のが、まだ自分のものと信じられなかった。
何かを見ていた気がしたが、その記憶が急速に薄れて行った。
鈍痛と、手足が上手くかせないような気分になっていた。
目を開ける。
「「「「タカさん!」」」」
子どもたちが俺の上に覆いかぶさって來た。
それで俺が布団に寢かされていることに気付いた。
「おい」
「タカさん! 生きてるんですね!」
亜紀ちゃんがび、四人の子どもが大泣きしている。
麗星も覆いかぶさって來たが、すぐに子どもたちに放り出される。
麗星が、俺の足先を摑んで大泣きした。
「おい、待て。狀況が分からん」
「?」
亜紀ちゃんが俺の顔を摑んで、キスをしてきた。
ますます分からん。
しばらくみんなに抱き著かれたままで、徐々に意識が戻って來た。
何か大きな神から引き剝がされたような気がした。
やっと自分を取り戻して行く。
そんな覚だった。
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手足をかしてみた。
まだ鈍いが、ちゃんとく。
元に戻るという確信が芽生えて來る。
どういう理由なのかは分からん。
「俺は生きている。そろそろどいてくれ。苦しいぞ」
「タカさん! すみません!」
亜紀ちゃんが他の兄弟をどけた。
ルーとハーは最後まで俺にしがみついていた。
口には出せなかったが、亜紀ちゃんが一番邪魔だった。
「おい、どうして生きている?」
俺は真っ先に思い浮かんだ疑問を出した。
俺に抱き著いたままで、ルーとハーが互に説明していく。
「タカさんに言われた通りに、蓮花さんとアラスカへ連絡したの」
「この部屋に戻ろうとしたら、大騒ぎになってたの!」
「ロボと「柱」さんと「小柱」ちゃんが來てたの!」
「障子を突き破って飛び込んで來たの!」
「ロボがタカさんの頭に爪を刺したの!」
「「小柱」ちゃんがタカさんのにったの!」
「「柱」さんが踴ったの!」
なんだ?
「「タカさんが生き返ったのぉーー!」」
「そっか」
まだよく分からないが、取り敢えず後でまた聞こう。
今はそれどころではないくらいに、全員がれている。
俺がが渇いたと言うと、麗星が五平所に銘じてすぐに白湯が用意された。
起き上がろうとすると亜紀ちゃんに止められ、せめて上を起こさせろと言った。
亜紀ちゃんが俺の背中に回り、自分で座椅子代わりになった。
俺の背中を抱き締めている。
「蓮花とアラスカには俺が生きていると連絡したか?」
「うん、皇紀ちゃんが。蓮花さんが號泣してたって」
「電話しよう」
「もうちょっと後でね。もうし確認させて?」
「ああ、分かった」
ルーとハーが「手かざし」で俺の狀態を診ていた。
念りにやっているようで、しばらく掛かりそうだった。
「麗星、俺は「神殺し」の呪いで死ぬはずだったんだよな?」
「はい。言い難いのですが、それは免れぬ運命であったはずなのです」
「「神」が上位存在だからだな」
「その通りでございます。道間家は妖魔を一部使役出來ますが、「神」は妖魔よりも遙かに高い存在なので、人のではどうしようもないのでございます」
「どうして俺は助かったんだ? ロボがどうしたとか言っていたが」
麗星が俺をジッと見ていた。
泣き腫らした顔だったが、尚も麗星はしいと思った。
「あなたさま。ロボさんとは一何者なのでございますか?」
「え? カワイイねこ」
亜紀ちゃんが後ろで頷いている。
「ロボさんがあなたさまの頭頂に爪を刺しました。その瞬間に、あなたさまを覆っていた神の呪いが消えました」
「手かざし」をしていた雙子も頷いた。
二人も確認したらしい。
「あり得ません! 神の呪いは、より上位の神にしか解くことは出來ません!」
「ロボがカワイ過ぎるからか」
「あなたさま!」
なんで俺が怒られるのか。
ロボがカワイイのは俺のせいじゃねぇ。
「「柱」たちも何かやったんだろう?」
「はい。小さな方があなたさまのにりまして、治癒のようなことをしていました。大きな方は離れて同じく治癒を施していたように見けられました」
「そうか」
「あの二も、「神」に間違いございません! 神の呪いをけたあなたさまを癒してしまうなど!」
「カワイイからだよね?」
ハーが言ったので、俺は首を縦に振った。
しょうがねぇ。
「そういえば、どこにいるんだ?」
「ロボさんはお食事を。柱の方々は帰られたようです」
「帰った?」
「はい。庭に出て、そのまま飛んで行かれました」
「なんだよ、禮を言いたかったのに」
仕方が無い。
戻ったら禮を言いに行こう。
「あなたさま、ところでおはいかがですか?」
麗星が我慢しきれなかったように俺に聞いて來た。
「ああ、もう大丈夫だ。しだるいくらいかな。まあ、死に掛けたからなぁ」
「さようでございますか。どうぞ、いつまででもここで養生下さい」
「まあ、そうもいかん。し休んだら帰るぞ」
「いけません! せめて數日はここでお休み下さいませ!」
麗星が納得しそうもないので、とにかく経過を診てからだと言った。
雙子が言った。
「うん、本當に大丈夫っぽい」
「いつものタカさんの波だね。悪いものも全然ないよ」
「そうか」
「ロボが爪を刺したらね、タカさんのが真っ白になったの」
「多分、「神の」になったんだと思う」
「おい! 白髪になってねぇだろうな!」
「大丈夫だよ! 皮のだけ」
「あ、あった」
背中にいた亜紀ちゃんが俺の髪を一本抜いた。
「ほら、白髪ありましたよ?」
「抜くんじゃねぇ! もったいないだろう!」
みんなが笑った。
「腹が減ったな。麗星、すまないが食事を作ってくれないか?」
「はい! みなさまの分もご用意いたしますが、あなたさまは消化の良いで宜しいですか?」
「ああ、野菜カレーをもらおうかな。子どもたちが作り方を知っているから、任せてもらっていいかな?」
「はい、それはもう。亜紀ちゃん、頼む」
「私はここにいます」
「おい!」
皇紀とルーとハーが笑いながら、三人でつくると言った。
「じゃあお前らも「し」いただけよ。しだぞ!」
「「「はーい!」」」
五平所が三人を連れて行った。
れ替わりに、ロボがって來た。
「ロボ!」
俺の足に乗り、上半を持ち上げて顔を舐めて來た。
俺もロボの顔にキスをしていった。
「ありがとうな! お前のおでまた助かったぞ!」
「にゃー!」
亜紀ちゃんも俺に顔を並べてロボにキスをする。
「まったく大したネコだ。流石は外科醫のネコだな!」
「にゃー!」
食事が出來るまでに、俺は皇紀に電話を借り、蓮花とアラスカのターナー將に連絡した。
ターナー將はまだ指令書を取り出していなかった。
蓮花は言葉が出ずに、ただ泣いていた。
俺が一方的に話し掛け、その間もずっと泣きじゃくっていた。
「もう大丈夫だからな。これから野菜カレーを食べるんだ。お前も何か食べておけよ」
蓮花は泣きじゃくりながら、自分も野菜カレーを食べると言った。
「なるべく早く時間を作って顔を出すよ。お前の顔が見たくてしょうがないんだ」
「はい、わたくしも、是非! お待ち申し上げております」
「ああ、必ずな」
蓮花も何も食べてはいなかっただろう。
野菜カレーがいいだろう。
本當に申し訳ない。
後から雙子から蓮花の決意の言葉を聞いた。
俺はその後の景を見たような気がしたが、たちまちにその記憶が霧散した。
ただ、蓮花がどれほどの悲痛と絶を味わったのかだけは分かった。
俺は電話を置いて、深々と頭を下げた。
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