《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第3章 1983年 プラス20 – 始まりから20年後 〜 6 タイムマシンと者(5)

6 タイムマシンと者(5)

「こんな時間だから、お店やってないかもしれないけど、わたし、やきとりが食べたいな……」

「やきとり? どうしてまた? 他に何かあるんじゃない? 壽司とか焼とか……、あと、この時代のレストランはメニューが多くて、どれにしようか迷うくらいだし……」

なんてことを剛志は返すが、智子は即座に首を振った。

「もしも戻れるんなら、二十年後、わたしもこの時代を生きるってことになるでしょ? だったらその時まで、楽しみに取っておいてもいいじゃない? でも、やきとりのことはそういうんじゃなくて、この時代のやきとりがどんなだかわかればね、剛志くんのお父さんに、こんなのはどうって、教えてあげられるなって思ったの。もちろん、わたしの言うことなんか信じてもらえないかもしれないけど、とにかく、何かヒントくらい、見つかるかもしれないじゃない?」

こんな言葉に、剛志の心は思いっきり震えた。

はっきり知っているはずはない。それでもきっと、児玉亭が楽ではないと薄々じていたのだろう。もしかしたら町の誰かから、そんな話を聞いたのかもしれない。

剛志が小學校の頃までは、それなりの人気店だったのだ。ところが中學に上がった頃から、あの辺り一帯に競合する呑み屋が増え始める。売り上げは日に日に厳しくなって、借金もあった児玉亭の経営狀態は決していいとは言えなくなった。

きっとそんな狀態を智子は思い、やきとりのことを言い出したのだ。

こんなことまで智子に思われ、剛志に「ノー」と返せるわけがない。

それから二人は駅前まで歩いて、晝間からやっているやきとり屋を探した。

しかしどこもかしこも夕方から。

三軒目もやはりダメで、そこで申し訳なさそうに智子が言った。

「ごめんなさい。やきとりはもう諦める。その代わりに、あの時代にはなかったものがあれば、それをぜひ、わたしにご馳走してください」

そんな言葉に、新宿まで行くか? 剛志は一瞬そう思うのだ。

しかしそんなことをしてしまえば、彼の戻りは夜になってしまうだろう。そうなればそれだけ長く、智子の両親はもちろん、あの時代にいる自分が苦しい時間を過ごすのだ。

剛志は改めてそんな事実を思い出し、己の思いつきをしっかり反省。そうして駅前にあったハンバーガーショップへ智子を連れて向かうのだった。

ところが予想を遙かに超えて、彼はそんなところを気にってくれる。

「自分の時代にこの店ができたら、わたし絶対食べに行きます!」

嬉しそうな顔でそう言って、白魚フライを挾んだバンズに大口開けてかぶりついた。それからあっという間に晝食を済ませ、さっき見知った事実を智子にしっかり説明する。

あとは腰掛けるだけで、昭和三十八年の三月十日に戻れるはずと、自信たっぷりに告げたのだった。そうして再び巖倉邸へ向かうが、いよいよ屋敷の門をくぐろうとすると、智子が不安そうに剛志に向かって聞いてくるのだ。

「もしもね、あの林に戻った時、まだあそこが燃えていたらどうしよう?」

「いや、それは大丈夫だよ。あの火事はね、不思議なくらいあの後すぐに消えたんだ。雨が降ってたってこともあるだろうけど、燃えていたのは短い間で、夜には完全に消えてたと思うよ」

二日目になっても、まだ燃えている。そう思ってしまうくらいの火事だったのだ。

それなのに、伊藤さえ始末できれば炎なんかに用はない――まさしくそんな印象で、火事は実際、あっという間に鎮火した。

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