《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》の力
「ひどい事故が起こるところだった」
笑い話にしているが、肩をすくめるフレドさんにちょっとかける言葉が思い浮かばない。
ほんとに、そんな事故が起こらなくて良かった。
「でも、どうして今日の俺の服じゃなくて冒険者活の時の格好なの?」
「琥珀の中では『フレド』のイメージはこの姿じゃからの」
今日のフレドさんはオフの日なので、セーターにリネンのシャツというラフな格好をしている。琥珀が化けた姿は、外套に防を付けた、冒険者活時のフレドさんだった。でも確かに、私もフレドさんの姿を思い浮かべるとこの格好になるかな。
私服もたくさん見てるはずなのにね。
「でも琥珀のこの……変化のってすごいね。外見だけじゃなくてそのものが変わってる。重さも明らかに琥珀の時より増えてるし」
琥珀が普段と同じように、ぼすんと腰を下ろしたソファが大きく軋む。先に座ってたフレドさんがぐらりと揺れるのを見て、そんな想が出た。
……この、増えた分の質量ってどこから來てるんだろう。魔法に似た琥珀の「変化の」で生み出されたにしては……魔法理論四原則では、魔力で作り出したものは作り出すのに使われた魔力を消費すると消えるはずなのだが……。それに、魔力で生み出された質でもなさそうなのがまた不思議だ。機會があればじっくり調べてみたいが……その時はフレドさん以外の人に変してもらわないとだな。
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「琥珀さん、髪のは姿を変えるのに必要なのですか?」
「そうじゃな。けどもっと尾が増えたら、見ただけのものでも姿を変えられるようにもなるのじゃぞ」
「それはまた、すごい話ですね。私の知っている『魔法』では到底不可能な技ですから、すごいとしか言いようがありませんが……」
「そうじゃろう! よく分かってるのう」
エディさんは素直に稱賛を口にした。中は琥珀だと分かっているけど、こうしてフレドさんの顔で無邪気な得意げ顔になってるの、なんだかすごく可い……。
はっ。普段の琥珀の方が、の姿で可いはずなのに、私ったらどうしてこんな事考えてるのだろう。
変な考えを吹き飛ばすように、私は頭をふるふると振った。……さっきみたいに、変な事をする前で良かった。
「確かに……これで狐耳が消えて、目のも俺と同じになったら見分けがつかないだろうなぁ」
「何、目のだと?」
パッと顔を上げた顔は眉間にシワが寄って、不機嫌そうな表をしていた。フレドさん本人がしているのを見た事が無いタイプのだなと思ったら、また私はドキッとしてしまう。
どうしたんだろう、おかしい。
「そうですね。フレド様の瞳のは濃いピンクですが、琥珀さんが姿を変えたフレド様の瞳は……緑をなさってますね」
「なんだとぉ。アンナ、鏡! 鏡はどこじゃ!」
「待ってくださいね、リアナ様の支度用の鏡がドレッサーに……」
「待てんから洗面所に行ってくる!」
ドタドタと走り去る琥珀。が人男のものだから、いつもの調子で走っているだけなのだろうがとても騒々しくじる。これはホテル経由で階下のお部屋にお詫びするのは決定だな、と冷や汗が出た。
「ぬぅ……確かに目のがフレドのに変わってないのじゃ。耳の他は完璧に変化のが使えたと思っておったのに……」
「琥珀ちゃん、まぁまぁ。そのうち出來るようになりますって」
洗面所から戻ってきた琥珀は、納得がいかなさそうな不満げな顔だ。いつもニコニコしてるフレドさんの顔でそんな表をされると、見慣れないせいだろうか、すごくソワソワしてしまう。
「それにしても……確かにすごすぎて、琥珀がこんな事が出來るなんて言えないなぁ」
「そう、ですね……これはちょっと、隠しておかないと危険だと思う」
「え? どういう事でしょうか」
真剣な顔で言った私とフレドさんを、アンナが互に見やる。
「だってアンナさん、悪い奴がこの事を知ったら、絶対琥珀を利用しようとしますよ?」
「……あ……それは確かに」
そう、琥珀の「変化の」は完璧すぎる。魔法など、姿を変えてる痕跡すらじさせず別人になれてしまうのだから。
今は狐耳という分かりやすい目印があるけど、それだってフードを被ってしまうとか、誤魔化す方法はある。この力にまず目を付けるのは犯罪者だろう。あとは影武者を探してる貴族や王族も興味を持ちそうだけど。いずれにせよ良い話ではない。
フレドさんのその説明で理解したアンナは、すぐに理解して表を曇らせた。
「フレドめ、失禮な奴だな! 琥珀が悪い奴に手を貸したりする訳なかろう!」
「いや、琥珀は悪い事しようと思ってないだろうけど。悪い奴は悪人ですって自己紹介なしに近付いてくるんだよ?」
「くどい! 琥珀は騙されたりせんのじゃ」
「自分は大丈夫、じゃなくて。そんな騙そうとするような悪い人が近付いて來るかもしれない、そうなってしくないの。だから他の人には言わないで緒に……」
「嫌じゃ! トッドやララ達にも見せて驚かせるんじゃ!」
……冒険者下位ランクの子に頼まれて手を貸しそうになった一件から一晩しか経ってないのに、とちょっと呆れてしまう。長って、本當に一何の話なんだか。
あと、これは偏見かもしれないけど、「自分だけは絶対に騙されない、気付ける」って言ってる人って……騙されるよね。
しかし困った、私達の言葉に頑なになってしまって、正論を聞きれてくれそうにない。もしかして……反抗期ってやつかな。
「では琥珀さん。広場にあるカフェで馳走するから、自分の姿になって好きなだけケーキやジュースを頼んでしい……そう頼まれたらどうしますか?」
突然、考え事をしてたエディさんが話し出した。緒にしないとダメだよ、と聲をかけてた私達には耳を貸そうとしてなかったが、否定の言葉ではないためか素直に話を聞いている。
「なんじゃ。そんな頼みなら何回だって聞いてやるぞ」
「でもですね。実は、それを頼んだ人は……琥珀さんが自分の姿でカフェでケーキを食べてる間に、泥棒をしていたんです。後から捕まりそうになって、『その時間はカフェでケーキを食べてた。見てた人はたくさんいる』って言い逃れをしました」
「なっ……」
ちょっとしたお話仕立てでされた説明に、先に「頼みを聞く」と言ってしまった琥珀は極まりが悪そうに私の顔をチラッと見てきた。
うん、気付けたなら良かった。
まぁ、実際はこんな分かりやすくなくて、もっと巧妙に騙そうとしてくるだろう。悪事に手を貸したとすら思わないようなやり方で。
「こうやって、悪い事に使いたい人がたくさん聲をかけてくるかもしれないんですよ。琥珀さんの『変化の』が素晴らしいばかりに」
「……何? 琥珀のが素晴らしいから、じゃと?」
「そうなんです。琥珀さんの『変化の』がとてもすごいもので、本人と見分けがつかないくらいそっくりに変してしまえるせいで……もっと一目で分かるくらいに出來が悪い変だったら、リアナさん達も『緒に』とは言わなかったと思うんですが……」
ぴくり、と琥珀が耳を立てる。エディさんの聲掛けが巧み過ぎて、思わず心してしまった。すごい。
エディさんに全力で乗っからせていただこう。エディさん、ありがとうございます。琥珀のこの力が知れ渡ってしまう事を考えたら何を言ってでも緒にさせた方が良いもの。
「うーむそうか。……琥珀がすごいから、悪い奴がこれを目當てにしてしまうのか。それは……仕方ないのう。緒にしておくか」
エディさんの言葉に、三人で口々に同意すると、満更でもなさそうな顔になった琥珀が「緒にする」と口にする。
よし、やり切った……。四人、そっそりと目で合図して無言で頷き合ったのだった。
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