《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》と狂ネコ病

9月中旬の木曜日の夜。

長時間のオペを終えた俺は、10時過ぎに家に帰った。

玄関でロボが大鳴きしながら帰りが遅いと文句を言い、後から興した亜紀ちゃんと柳が階段を駆け下りて來た。

「おう、ただいま」

「「遅い!」」

「あんだと!」

二人の頭を引っぱたく。

ロボを抱き上げて、1分で敘々苑の焼弁當を作れと言った。

1分で豚の生姜焼きが溫められてご飯と一緒に出て來た。

二人がジョジョ立ちをしていた。

「何かあったのか?」

「「はい!」」

腹が減って夢中で食べている俺に、二人が話し出す。

今日の「カタ研」で、坂上が「業」の生開発を示唆したことを興して話した。

「なるほどな! お前ら、素晴らしいな!」

「「はい!」」

二人がやっとニコニコする。

俺に釣られて、亜紀ちゃんもハムを焼いて食べた。

俺が喰い終わり、柳がコーヒーを淹れてくれた。

三人分。

「さてと。じゃあ、お前らはどうする?」

「「え?」」

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「なんだよ、そこを話し合ったんじゃねぇのか」

「いえ、この大発見で大騒ぎになって」

「どうせ亜紀ちゃんと雙子が騒いだだけだろう?」

「みんなで「ヒモダンス」を踴りましたよ?」

亜紀ちゃんの頭を引っぱたく。

「まあ、目の付け所は良かったけどな。お前らの思い上がりはどうにもなぁ」

「「え?」」

「要するによ。お前らは俺に褒められたいってだけなんだよ。だから新しい発見をしただけで、俺に報告したくてウズウズしていた。俺が本當にしいのは、実際にどうするのかってことなんだよ」

「「!」」

「もちろん発見は嬉しい。有難い。でもな、そこで満足するだけじゃな」

二人が黙り込んだ。

褒められたがっていることを自覚した。

まあ、それも俺が喜ぶ顔を見たかったというには違いないが。

「褒められたいのが真ん中に無ければな。しでも対策を話し合ったと思うぞ? それこそが重要なことなんだからな」

「「はい」」

折角の発見を説教で返すのは申し訳ないが、俺はこいつらに自覚と責任を持ってしかった。

コーヒーを飲み終わり、風呂上がりに三人で飲もうとった。

二人は笑顔で用意をすると言ってくれた。

風呂から上がると、亜紀ちゃんと柳がつまみを用意してくれていた。

巾著たまご、雪野ナス、ジャガイモの煮転がし、新ショウガの漬

「タカさん、何を飲みます?」

「今日は冷酒にするかな。理媛を開けてくれ」

「わーい!」

「じゃあ、私は甘酒を」

柳が冷やした甘酒を自分の分で出して注いだ。

俺と亜紀ちゃんは冷酒だ。

「石神さん。さっき亜紀ちゃんと話してたんですけど」

「うん」

「病原菌を使うということは、薬が必要ですよね」

「そうだな」

「あとはワクチンとか」

「そうだ」

その後は出て來なかった。

「病院には製薬會社の連中が毎日のように來る」

「はい」

「接待もしたがっている。自社の薬品を使ってしいからな」

「はい、分かります」

「接待も高い店で飲み食いさせてくれる。料亭やがつくような店とかな」

「はい」

「うちのような日本有數の大病院で扱われれば、直接の利益だけじゃない。他の病院への宣伝効果もある」

「はい、信頼できる薬品だということですよね?」

「そういうことだ」

亜紀ちゃんが大好きな巾著たまごを嬉しそうに食べている。

「ところで柳。製薬會社が新薬を開発するのにどれくらいの金や期間がかかっていると思う?」

「え! すいません、知りません」

「一般に、一つの新薬で500億円以上。期間は10年以上だ」

「「!」」

亜紀ちゃんが巾著を口から零した。

「これは一般的な新薬の場合だ。高度な開発になれば、その10倍以上かかることもある。出來なかったものも多い」

「そんなにですか!」

「それだけの費用と年月をかけても、売れなかったり他社がもっと優れたものを開発することもある」

「でも、私たちは費用面では大丈夫ですよね?」

亜紀ちゃんが言う。

「開発出來ればな。言っただろう、失敗することも完しないこともあるんだって」

「「……」」

俺が雪野ナスが味いと言うと、二人も食べて味いと言った。

「柳、ウイルスの薬品について、どの程度知っている?」

「いえ、あの、ほとんど知りません」

娘も知らないよな?」

亜紀ちゃんが颯爽と手を挙げる。

「実はな、細菌に対しての抗菌薬は沢山あるんだ。でもな、抗ウイルス薬というのもは無いんだよ、まあ、ほんの幾つかの者に対しては「ある」と言っているが、萬能ではない。抗菌薬ほどの効果は認められないんだ」

「どうしてですか?」

「基本的には、ウイルスの構造が単純過ぎるんだよ。細菌ほどの大きさになれば、その特徴がいろいろ出て來る。だから標的に出來るんだよな。でも、ウイルスは特徴が無いんで、標的に出來ないんだ」

「じゃあ、ウイルス兵をばら撒かれたら……」

「はっきり言って、お手上げだな」

「「そんな!」」

雪野ナスは本當に味いと言うと、二人も頷く。

「だから、ウイルスに関しては昔から「ワクチン」で対応してきた。狂犬病は致死率100%だが、我が尊敬するパストゥールが開発したワクチンを接種していた場合だけ助かることが出來る」

「そうなんですね!」

「狂ネコ病はないけどな!」

「にゃ!」

柳が時々ロボに噛まれるが安心だと言った。

「じゃあ、ワクチンはどうして効くんだ?」

「えーと、弱毒にして摂取するんですよね?」

「そうだ、要するに人の免疫機構を利用するということだ。人間が開発する薬では対応出來ないウイルスにも、免疫機構は対応出來る。人はそれだけ高能ってことだな」

「スゴイぞ、人!」

「人バンザイ!」

二人が喜ぶ。

「じゃあ! ワクチンを作ればいいんですね!」

「まあ、そうだけどよ」

「柳さん! 良かったですね!」

「うん!」

二人が喜ぶ。

「さてと。じゃあ、どうやって「業」が作るウイルスを手にれるんだよ?」

「「へ?」」

「元が無けりゃ、ワクチンだって作れないだろうよ」

「「あー!」」

俺は笑って言った。

「まあ、ここからはお前たちでも考えてみろよ」

「「はい!」」

「一つ言っておくが、小出しにすれば俺たちがワクチンを作ることは敵も知っている」

「「!」」

「もしくは、ワクチンを開発している間に蔓延するほどの強烈なウイルスの場合だ」

「「!」」

「あいつもバカじゃない。まあ、俺たちもな!」

「「はい!」」

俺は先に寢るので、つまみは全部食べろと言った。

「とにかくだ! お前たちが発見してくれたことは本當に嬉しい。ありがとうな」

「タカさん!」

「石神さん!」

二人の頭をでて、俺は自分の部屋へロボと言った。

まあ、ウイルス兵については考えていたことで、蓮花とも話している。

デュール・ゲリエの増産もその一環だし、製薬會社を傘下に置いているのもそうなのだが、あいつらの手柄にしておこう。

無駄だとか既にやっているというのは関係無い。

何かをしようとする、その意志こそが重要なのだ。

ロボが俺の腕を甘噛みした。

「これで俺も狂ネコ病だな!」

「にゃ!」

俺は笑って眠った。

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