《魔王様は學校にいきたい!》炎帝

「アタイ參上ーっ!!」

炎帝ミーア・ラグナクロス、燃え立つ舞臺に躍り出る。

盛る猛火に巨軀を裝い、神レーヴァテインを攜え、威風堂々の仁王立ち。爛々と輝くその姿は、天の啓示をけたかのように神々しい。

「よーし、思いっきり暴れちゃお……はダメだった、ちゃんと人間達を守りながら──」

「なっ、お前は!?」

「──うん?」

クルリと振り返ってみれば ミーアと変わらぬ背丈の大男が構えている。かつて南ディナール王國で激突した、その大男の名は──。

「ああ、えっと確か……まあいいや!」

「おいっ!?」

──その名は火の魔人アブドゥーラ、なのだがミーアは名前を思い出せず。「まあいいや」とぞんざいに諦め、赴くままに辺りをキョロキョロ。

広がる火の海、燃える陸上艦ロイヤルエリッサ、殺到するガレウス邪教団の軍勢。一通り狀況を確認すると、徐に神レーヴァテインを一振り。

「そおおおぉれっ!」

たった一振りで火の海は凪ぎ、ロイヤルエリッサの火災は鎮火する。炎帝の名を冠するだけあり、炎の制圧はお手のである。

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「まだまだ、いくよおぉ……熱っ!」

再びレーヴァテインを一振り、制圧した炎を一気に解放する。圧倒的な火力と勢力、それでいて無差別に広がりはしない。ガレウス邪教団の軍勢だけを狙い、極めて緻に燃え広がる。

「ふぅ、片づいた!」

「一瞬でガレウス様の軍勢を……名はミーアだったか、相変わらずの強さだな」

規格外の力を目の當たりにするも、アブドゥーラは僅かも気圧されていない。むしろ闘志を増してすらいる、その証拠に纏う炎は旺盛そのもの。

「そっちは、その……ごめん忘れた、なんて名前だっけ?」

「俺の名はアブドゥーラ、火の魔人アブドゥーラだ!」

「そうそうアブドゥーラだったね、なんだかスッキリ」

丁寧に教えてもらって、ようやくミーアはアブドゥーラの名を思い出す。上機嫌にレーヴァテインをクルクル、なんとも快活で奔放なものだ。

「それじゃ、スッキリしたところで……やる?」

「願ってもない、以前は手も足も出なかったが……だが今は違う!」

「ふーん?」

「ガレウス様のお力を授かった俺に負けはない!」

巨人と魔人の大激突、その火蓋を切ったのはアブドゥーラだ。拳から極大の火球を放つ、もちろん一発だけではない。巨拳を突くこと數十、數百、放たれた火球は數知れず。

「アタイ相手に炎で戦いを挑むなんて無謀だよ!」

降り注ぐ火球に対し、ミーアは軽やかにレーヴァテインを一振り。微かな火のすら殘さず、全ての火球を薙ぎ払う。

「なんだと!?」

「アタイの神レーヴァテインは、全ての炎を統べる神。レーヴァテインを持つアタイには、どんな炎も通じないんだから!」

「くっ……いいだろう、ならば拳で沈めるまで!」

炎は通用しないと悟るや、アブドゥーラはミーアに薄し、絶え間ない毆打の嵐を見舞う。

一方のミーアは避けない、防がない、ただ突っ立っているばかり。

「ォオオオオオオッ!!」

「……」

「オオオオオッ!」

「……」

「オオオ……オォ……ッ」

「……あれ、もうお終い?」

アブドゥーラの全全霊、息を切らすほどの連続毆打を浴びながらミーアは平然としたまま。鼻の一滴すら流していない、まるで何事もなかったかのよう。

「ぜぇ……ぜぇ……、バカな……っ」

「アタイ相手に力勝負は無謀だよ」

レーヴァテインを地面に刺し、空になった両手はの橫。腰を落として左足を前へ、膝を曲げて重心を乗せる。

「アタイは巨人族の中でも特別なの」

右拳をグッと引き絞る、左拳は目線の高さ。メラメラと瞳を燃やし、眼前の敵に狙いを定める。

「膂力において並ぶ者なし……ただし、ウルリカ様を除いてね!」

右足で強く地面を押し、同時に腰を回して半を戻す。左拳を深く引き、右拳を真っ直ぐ前へ。

「いくよおおぉ……っ熱っ!!」

「ぐぉ──」

アブドゥーラは咄嗟に両腕を差させ、衝撃に備えて満の力を籠める。しかしミーア會心の一撃は、とても防げるものではない。

「──っ!?」

「ふうっ!」

アブドゥーラは空の彼方へ、遙か夜空の星となる。

一人殘ったミーアは、燃える拳を天高々。燦々と輝くその姿は、やはり天の啓示をけたかのように神々しい。

「はいお終い、今回もアタイの勝ちーっ!」

こうして、二度目となる炎帝と火の魔人の戦いは、炎帝の完全勝利で幕を閉じたのであった。

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