《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》11
皆様、お世話になっております すずすけ です。
ホテル療養で暇ですので、大晦日ではございますが投稿いたします。
完全回復に向かっております。コメントでもお気遣いくださり大変嬉しくございます。今後とも拙作をよろしくお願い致します。
それでは。
年越し蕎麥は食べましたか?
「いやー……、それは困ったな。それじゃ完全じゃないだろう? あたしとは友好であるけれども、あたしたちとは敵対することもあるってことだからな」
「そうだね」
リディアはエインズの肩を組んでいた腕を解き、腕組みしてしの間考える。
「あたしの重きは『次代の明星』なんだよな。べつに、個の魔師としてエインズさんと仲良くなるのが最優先というわけでもない」
リディアは後ろにゆっくりと下がりながらエインズと距離を取りはじめる。
「あたしだけの邪魔、あたしだけの友人であればそのどれもそう。けどね、あたしたちの邪魔になる因子であれば話は別だな。あたしたちはあたしを越えてすべきだ」
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十分に距離を開けたところでリディアのきが止まった。
ソフィアは警戒態勢を取り、リディアを注意深く見つめる。
「おい、なんか空気が変わったけど俺はいつ寢れるんだ?」
タリッジは一応といったかんじで橫に立てかけている大剣に手をかけながら尋ねるが誰も返答しない。
「それに、魔師の問いをしてきたけど、実際はどうなんだろうね。大したことのない魔師、話にもならない魔法士だったら、その度合いに応じてさっきの妨害の責任を取ってもらわないとね」
「挨拶は、すませた。あとは……」
瞬間、ゆったりと流れていた部屋の空気は一転して嵐のような激しいものに変わる。
「消えたっ!」
注意深く察していたソフィアが目の前のリディアを見失った。
ソフィアがすぐに周囲を見回すとリディアの姿を確認できた。
しかしそれは。
「どうしてこの一瞬で!」
エインズの懐まですでにり込んでいたリディアは握りこぶしを作り、指の間に針を數本握ってその腕を振りかぶっていた。
「っ!」
これにはエインズも驚いたようで、眼を見開いてすぐに飛び退く。
「おやおや、お前の焦った顔も悪くないね」
間一髪のところでリディアの拳を躱したエインズ。
上から下に拳を振り下ろしたリディア。空を切ったその拳を今度は下から上に振り上げる。その際に指を開き、間で握っていた針を投げる。
エインズは無詠唱魔法で風の壁を飛んでくる針に対して展開する。この壁にそれほど高い防はない。しかし人間が投げた針程度の攻撃であれば十分に防げる簡単な魔法。
ここがアラベッタの書斎ということもある。周囲に被害を與えかねない魔法をいきなり使うのは気が引ける。どうしようもない狀況であれば手段を択ばない。極論、それこそ屋敷を吹き飛ばすほどの高火力の魔法を一つ放てばすぐに解決するものだが、それでは覚えた魔法に酔って粋がる魔法士風と変わらないようで魔師エインズとしてそれは避けたい。
風の壁を展開し終わったエインズは飛んでくる針と、その後ろで不敵に笑みを浮かべ続けるリディアを見ながら次のきを考える。
その時、エインズはリディアが小さく何かを呟いたのが口のきで分かった。
(詠唱? いや、魔力を纏っていないから違うし。彼らの仲間なんだったら無詠唱ができないわけでもないだろうし)
風の壁に當たった針はその場で風力に負けて床に落ちる。
あの呟きはなんだったのか、結局リディアの攻撃はその後の追撃を見せずにひとまず収まった。
「なんだ? 俺の出番か?」
タリッジが大剣を片手に立ち上がる。その闘気は十分なようでやる気満々のようだ。
「いいえ、あなたはアラベッタ様を連れて書斎を離れてください」
「なんでだよ」
ソフィアがタリッジに顔を向けずに続けた。
「この狹い空間で貴様の剣は扱いづらいだろう。アラベッタ様の護衛をしてくれ」
「はっ、そんなの簡単じゃねえか」
「無駄に調度品を破壊したら貴様の実費で弁償することになるが? それでもいいのであればぜひとも手を貸せ」
タリッジは手にしたクレイモアと書斎に置かれている調度品を目で互に見て冷や汗を一つ流す。
「分かった、この場はお前の言葉に従ってやるよ。ほらあんた、行くぞ」
ソファに座ったままのアラベッタに手を差し出すタリッジ。
「貴様、敬語を使え」
「あー……、さっさとしろ、でございます」
ため息をつくソフィアを橫にアラベッタは差し出されたタリッジの手を取り立ち上がり、今一度リディアの姿を確認する。
次代の明星のトップ、リディアの顔を忘れないように。
「エインズ殿、ソフィア殿、ご無事で」
「……」
「そいつで役に立つか分かりませんがアラベッタ様も」
「ああ」
ソフィアの悪態にタリッジは肩をすくめただけで、タリッジは気にせずアラベッタを連れて書斎を後にした。
書斎にはエインズとソフィア、そしてリディアの三人が殘った。
「二人を逃がしてよかったのですか?」
「あんな小者の二人程度、何の苦にもならないさ」
「そうではなく、あなたの手配書間違いなく出回りますよ似顔絵付きで」
「ちょっとばかし、あたしの名前と顔が知れ渡らないと……。その、なんだ? あたしの存在が無名のままじゃ箔が付かないだろう?」
避難したアラベッタは間違いなく部下を使ってリディアの特徴を伝えてモンタージュを作製させるだろう。
そうなれば『次代の明星』トップのリディアの手配書は王國に出回るだろう。それがどれだけ自を拘束させるものなのか理解していないリディアではない。
(それとも彼の魔はその拘束から逃れられるものなのか)
エインズは二人の會話から推測を立てていく。
「さて、邪魔が減ったんだ。もうし激しくやり合おうじゃないかエインズさんよ。魔とやり合った時はもうし苛烈だったぜ? かなりボコられたけどな」
苦笑いを浮かべながら頭をかくリディア。
「へえ、あの魔師リーザロッテともやりあったのか、それは面白い」
エインズはリディアに歩み寄りながらソフィアに聲をかける。
「彼は僕の相手だ、邪魔はしないでねソフィア」
その目はまるで敵意が込められておらず、輝いているほどだった。
「かしこ、まりました」
エインズのこういった場面にソフィアは何度と居合わせてきた。だからこそ彼が引くべきところというものは徐々に理解できてきた。
この狀況、ソフィアが何を言おうともエインズは何も変わらない。かえって狀況を悪くするだけで何の利もない行となってしまう。
「……」
ソフィアはリディアとエインズをその目におさめながら後ずさり壁際まで靜かに後退した。
「さ、君の本気を見せてくれ。もちろん彼ではなく僕だけに」
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