《星の家族:シャルダンによるΩ點―あるいは親友の子を引き取ったら大事件の連続で、困する外科醫の愉快な日々ー》大銀河連合「天下一ぶ Ⅴ

最後の大將だけあって、これまでの連中とは違った。

俺の「機」を読んで、悉く攻撃を回避していく。

俺も相手の「機」を読んで、攻撃と防を展開する。

大技を出す隙も無く、俺たちは撃ち合っていた。

決定打はお互いに出ない。

やはり強い。

俺がギアを上げて行く。

スピードが上がり、相手もそれに付いて來る。

お互いにフェイントも読まれ、リズムを崩しても追いついて行く。

俺は「螺旋花」を撃ち出していくが、その波け流されているのをじた。

相當な強者だ。

重差でサル星人の攻撃が重く、「螺旋花」で俺の攻撃が重い。

拮抗した撃ち合いになっていた。

「行くぞ」

サル星人が言い、上方から凄いプレッシャーをじた。

無數の拳が俺に降り注いでくる。

「千斬!」

俺は咄嗟に「虎王」を思い描きながら「龍刀」を放った。

何発かサル星人の拳を喰らった。

サル星人の腹を蹴って距離を取る。

追撃は無かった。

した俺の左腕は折れ、サル星人の拳と両腕から大量のが零れている。

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に撃ち込まれた一発は、何本か肋骨を折っている。

相手はもう両腕が使えないだろうが、こっちもそれほどいい狀態でもない。

「さて、そろそろ終わるか」

俺は「龍刀・煉獄」でサル星人のを刻んだ。

「見事」

最後にそう呟いて、サル星人は四散した。

大歓聲が沸き、アナウンサーが吼え、子どもたちが闘技場へ上がった。

《グランマザー》によって俺たちの優勝が宣言され、優勝のトロフィに當たるだろう綺麗な金屬の塊と、目録が授與された。

『大銀河連合歌』が合唱され、俺たちは笑った。

地球的にはとても音楽とは思えなかったためだ。

一旦控室へ連れられ、全員が治療というか、正常狀態に書き換えられた。

雙子の「手かざし」はまったく意味が無かった。

俺たちは貴賓室のような場所へ連れて行かれた。

暗い部屋だが巨大な円形の窓が開いており、その前に青白い恒星が浮かんでいる。

「このままお帰り頂いても宜しいのですが、しお話をしておこうと思いまして」

「ああ」

「大銀河連合の中には、石神様たちを認めようとしない者もおりました」

「逆に認めている奴の方がいないんじゃないのか?」

《グランマザー》が微笑んだ。

「そのようなことは。何しろ「ロボさん」の傍にいて、認められている方々ですので。なくとも、石神様たちがいるおで、宇宙の脅威は回避出來ていると考えて居ります」

「そうか」

「ただ、「ロボさん」がどうして石神様と共にいるのかが分からないことから、石神様方を軽視する者がいることも事実でした」

「よく分からん理由で懐かれているだけということだな」

「その通りでございます。ですので、中には石神様を調べたいとか、脅して言うことを聞かせたいと考える愚か者もおりました」

「そうらしいな」

「果ては地球ごと破壊してしまおうという本當の愚か者も。流石にもうそのような者はおりません。私の全てを掛けて止めました」

「頼むな」

「今回のことは、石神様方に楽しんで頂く目的はもちろんございましたが、同時に石神様方のお力を知らしめす意図もございました」

「ああ、よく分かっているよ。いい宣伝になったか?」

「はい、それはもう! この大會に出場するだけでも名譽でございます。それが予選を突破することが出來れば、誰しもが認める存在に」

「おい、じゃあ優勝までは考えていなかったのか」

「申し訳ございません。もしやという思いはありましたが、私の目的は予選突破で十分でございました」

「なんだよ!」

《グランマザー》がまた微笑んだ。

「まあ、いいけどな。本當に楽しかった。な、皇紀!」

「うーん」

笑えと言うと、素直に笑った。

「そう言えばなんか貰ったみたいだけど、なんなんだ?」

「はい。あの金屬にはまず優勝者の名前が刻まれ、大銀河連合の本部に飾られます」

「そうなんだ」

「目録については幾つかございますので、改めて説明いたしますが、一つは星の所有です」

「え、いらねぇよ」

「優勝者の指示通りに改造いたしまして、居住も可能なようにいたします。その他のご希も隨意に」

「テラフォーミングするのかよ!」

「はい。既に技はございますので、如何様にも。もちろん移手段もご用意いたします」

「……」

「石神様?」

俺の様子が変わったので、《グランマザー》が尋ねて來た。

「やっぱりいいや。それは放棄する」

「さようでございますか。でもいつでも命じ頂ければ対応いたします」

「分かった」

「別な條件への移行も承ります。相談の上となりますが」

「考えておくよ」

「私も考えてみます」

話は終わったので、俺たちは帰ると言った。

「最後に一つだけ。本日の大會は「大銀河連合ニュース」で大々的に取り上げられます」

「おい、取材とかは困るぜ?」

「かしこまりました。上手くやっておきます。それで、全試合の様子をお渡し出來ますが、もらっていただけますか?」

「ほんとか! ブルーレイとかにも出來る?」

「はい、もちろん。では後日お渡しいたします」

「良かったな! 皇紀!」

「エヘヘヘヘヘ」

気の抜けた笑い方をした。

「じゃあ、もういいな! 帰るぞ?」

「はい。またあちらで」

「楽しかった! ありがとう!」

子どもたちも禮を言った。

全員で帰還した。

■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■

「おい、今何時だ?」

「お晝の12時40分でございます」

「百年後とかじゃないよな?」

「オホホホホホ!」

寢た時と同じ、ビーチベッドの上で全員が起き上がる。

に違和は無い。

「では、今日はこれで失禮いたします」

「おお、ありがとうな!」

《グランマザー》はビーチベッドと共に上昇して消えた。

すぐにロボの飯をやり、俺たちの晝食も作った。

素早く作れるそぼろ蕎麥にする。

確認したが、調の悪い人間はいない。

あの狀態の俺たちを殺すことも可能だろうが、そうすればロボが黙ってはいない。

だから信用した。

「タカさん、さっき星を貰えるって話があったじゃないですか」

亜紀ちゃんが食べながら聞いて來た。

「ああ」

「どうして斷っちゃったんですか?」

「あると困るからな」

「はい?」

亜紀ちゃんも他の子どもたちも不思議がっている。

「リゾートとか」

「狩場とか」

俺は雙子の意見に笑った。

「いらねぇよ! 俺はこの家と別荘まで持っているしな。これ以上のものはいらない」

「でも、いつ開発してもいいみたいだったですから、持っているだけでも良かったんじゃないですか?」

「ダメだ。弱くなる」

「え?」

子どもたちにはまだ分からないのかもしれない。

「「業」との戦いに敗れれば、そこへ移住することが出來る」

「あ! そうですよね!」

「そうすれば、俺たちは必ず負ける。逃げることを考えてしまえば、絶対に弱くなる」

「「「「「!」」」」」

「誰も死なせずに、苦しい思いをさせずに、最初から移住することだって出來る。でも、俺はそれはしない」

「「「「「……」」」」」

「大銀河連合と同じことになるんですね」

亜紀ちゃんが言った。

「そうだ。俺たちは生き延びて、そして滅びる。俺たちがあの大會で優勝出來るまで強くなったのはどうしてだ! 俺たちが戦おうとし、踏ん張って來たからだろう!」

「「「「「はい!」」」」」

「レイは俺たちが戦おうとしているから命を投げ出してくれた! レイの命を俺は捨てるわけにはいかん!」

「「「「「はい!」」」」」

「俺たちは戦うんだ。誰が死のうと、負けて地球が滅びるとしてもな! 最後まで戦うぞ!」

「「「「「はい!」」」」」

もしかしたら、《グランマザー》は俺を試したのかもしれない。

幸福を求め、安全安心を求めれば、俺たちは滅びる。

今宇宙最強であったとしたって、それを求めればダメになる。

そのことを教えようとしてくれたのかもしれない。

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