《凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ〜TIPS€ 俺だけダンジョン攻略のヒントが聞こえるのに難易度がハードモード過ぎる件について〜【書籍化決定 2023年】》正月特別短編・【アレフ・プレイ・ゲーム その4 アレタ・アシュフィールドの帰還】

「う、わ、アア……そんな、そんなのって……じゃあ、エレシアが死なないと、白死病がいずれまたこの世界に蘇るってことは……」

「おい、おいおいおいおい。おいおいおいおいおいおいおい。クラーク先生よお、まさか、これ」

「……自殺だろうね。"黒い手"の暗殺者の仕事はつまり、自ら手を下すことではなく、この事実。エレシア・マリフォスが原種染者であることを彼に信じさせるだけだったのさ。だから、我々の調査では兇も痕跡もなかったわけだ」

ゲーム畫面の前、四つん這いになりくグレン、神妙な顔でうなずく味山とソフィ。

アレフチームはまた試練の時を迎えていた。

「あ、ああ……」

「グレン、エレシアは自殺に見せかけられて殺されたんじゃなく、本當に自らで自らの命を、終わらせたんだ……。誇りある、自死、さ」

「ぐあ、うう……そんな、そんなのってないっすよ! なんで、なんでっすか!? なんで、エレシアが死なないといけないんすか! こんな、こんないい子が……慣れない都會に出てきて、自分の蕓やまで売って、それでも貧しい故郷の家族たちの仕送りにほとんどその金を使って……あともうしだったんすよ! 彼の夢が葉うまで、あとし……店を、店をさあ、開きたいって……お酒とそこで生まれる笑顔が好きだから店を開くのが夢だって、俺に教えてくれたんすよ。し、照れながらさあ! あともうしだったんスよお!!」

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グレン・ウォーカー、男泣き。人した灰髪の丈夫が一目も憚らずワンワン泣いている。

普通なら、割とドン引きする景ではあるがーー

「分かるよ、グレン。きついよな。辛いよなぁ、推しがよお、どんだけ頑張っても死んじまう時は……ほんとによお」

「グレン、君は、ワタシの知らないうちに長していたんだな。人の苦しみを己の痛みとしてけ止めることが出來るほどに……ラドンも、今の君を見ればきっと喜んだはずだよ」

完全にライフ・フィールドという沼そのものの住人と化しているバカ2人が、今まさに沼に落ちようとしているグレンの肩をぽんぽんと叩く。

「タダ、センセぇ、俺、俺はどうすればいいんすか。エレシアは、もう、彼は死ぬしかないんすか……」

「……アジヤマ?」

「すまん、わかんねえんだ。このライフ・フィールドのキャラストーリー展開って決められたルートが一切なくて、その時のプレイヤーデータで展開が全然違う。それに、エレシアはアプリ版の連攜機能で本編に登場するキャラで、俺のどの周回でも登場したことがないキャラなんだよ」

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「そうか……仕方ないよ、人生、なんだものな」

味山の言葉にソフィがうんうんとうなずく、冷靜に聞くと何言ってるか分からない臺詞だが、もうこの部屋に冷靜な人間は誰一人いないので問題はなかった。

ピンポーン。

「うう、……俺は、俺はこの痛みを背負って、生きていくんすか。エレシアが、自分の命と引き換えに、殘した白死病のない世界を……」

「グレン……」

「いや、まだあきらめるのは早いぜ、グレン・ウォーカー」

「え」

ピンポーン、ピンポーン。

「俺たちは一人じゃない。ライフ・フィールドの世界で生きているのは俺たちだけじゃあねえんだ」

「それは端末……? まさか、何かしらの攻略サイトを?」

「いや、クラーク。このゲームはな、この報化社會においていまだに達率100%クリア報告のない化けゲームなんだ。さっきも言った通り、キャラ一人一人のストーリすらAIが獨自に考えて行することと、そもそものマスターAIがその時のゲームの進行狀況や世界勢、主人公の行などでストーリー展開が変わっちまう。従來の、決まった攻略法によって、決まったクリアにたどり著くためのトライ&エラー方式が通用しにくくなっている」

「……なるほど。では味山、君は何を頼りに――」

「プレイ日記、もしくはリアルタイムでの相談スレだ」

味山が端末の畫面をソフィとグレンにかざす。

「攻略サイトによる決まったクリア方法の明示はない、だが、ヒントを得ることは出來る。このライフ・フィールドの世界を生きる他の旅人たちの冒険の中にもしかしたら、エレシアや、エレシアに似た境遇のキャラを知っている奴がいるかもしれない。冒険は冒険による経験でしか、攻略の糸口はつかめない。そこで、あった、これだ」

「これは……」

「ライフ・フィールドの公式オンラインサイトでは、現狀どのプレイヤーが一番完全クリアに近いかを確認できるシステムがある。上位のプレイヤーほど周回を重ね、この世界のクリアに近づいている強者、ということだな。例えば、発売當初は攻略不能と言われていた”異神”の打倒。これも獨自に攻略法を見つけ、今ではそれがプレイヤーに周知され、斃す方法が確立されている。遠回しに言えば、クラークがさっき古を使って、異神を斃せたのも、別のプレイヤーがすでに異神の打倒に古を使うという前例をすでに打ち立てていたために功した可能が高い。このように、ライフ・フィールは日夜、変態達が推しを救おうとして攻略にを出しているわけだ。俺たち探索者が、バベルの大に挑むのと同じだな」

「敬意を、評さざるをえないな。ワタシのエルンが救われた遠因は、そんな顔も知らない変態のおかげというわけかい。――神のご加護を」

ソフィが目を瞑り、の前で十字を切る。神的な容姿の彼きは見るものの視線を固まらせる、しかし祈りの容がバカすぎた。

「た、タダ、じゃあ、どこかの誰か、今も、どこかにいるそんな変態達の誰かが、俺のエレシアを……」

「ああ、どこかの変態の冒険の中に、エレシアを救うヒントがあるかもしれない! そこでこれだ! 今、俺が最も注目しているライフ・フィールドプレイヤー! ゲーム達率67%! 現狀のトッププレイヤー! 変態の中の変態! ♰TAKI@TAKI♰さんの雑談なりきりスレだ!」

ピンポーン……

「「♰TAKI@TAKI♰さんの雑談なりきりスレ??」」

「ああ、その名も、”集まれ集合知【推しが死んだショックで死んだらライフ・フィールドの世界に転生した件について】記憶がないからお前らヒントくれ”だ!」

「「”集まれ集合知【推しが死んだショックで死んだらライフ・フィールドの世界に転生した件について】記憶がないからお前らヒントくれ”?????」」

ソフィとグレンが今度こそ目を點にして呟く。味山のテンションに今度は本気で置いていかれている。

「ああ、♰TAKI@TAKI♰さんは本の変態でな、ライフ・フィールド発売當初からぶっちぎりでゲームの進行を進め、數々のライフ・フィールドの攻略を編み出してきた実力派の変態だ。さっきの異神に対する古での対抗という攻略方法をはじめ、クソスキルやクソアイテムとしか言えないものにも活用の道を編み出したり、不遇と呼ばれていた魔法ビルドの特殊長を人権ビルドとして確立したりな、魔法とは違う、魔――いや、これ以上はいいか。まあとにかく、攻略不能と呼ばれたキャラクター達を何人も死の運命から救い出したトッププレイヤーの1人なわけだが」

味山がそのスレのURLをそれぞれソフィとグレンの端末に送る。2人がそれぞれの畫面を確認し始めた。

ピンポーン。

「アジヤマ、これは……」

「ああ、俺がこの人の報を信頼している理由は一つ。この人が本気でイかれているからだ。オタクはイカレていればイカレているほど強い」

「た、タダ、この人って、この人のスレ、なんか、おかしくないっすか。普通の雑談というか、なんというか」

グレンが畫面を見て、目を細める。

味山がにやりと笑って。

「そう、ロールプレイスレだ」

「「ロールプレイ??」」

「ああ、この人は本気で”自(・)分(・)が(・)ラ(・)イ(・)フ(・)・(・)フ(・)ィ(・)ー(・)ル(・)ド(・)の(・)世(・)界(・)に(・)転(・)生(・)し(・)た(・)”という設定で、この雑談攻略スレを運営しているんだ」

「て、転生?」

「ああ、TAKITAKIさんの設定ではライフ・フィールドの世界に転生して今、赤ん坊からやり直したという設定でな。今のプレイ日記兼、雑談スレでは今、5歳らしい。ほら、この掲示板のログ見てくれ。すごい量だろ?」

「世界は広いな……」

「上には上がいるんすね」

「ああ、だが、この人はただイカレているわけじゃない。この変態的なロールプレイ風の雑談スレmの蕓風に負けないほどの実のある報。本當にこの世界に生きているようなリアルな攻略のヒント、この前の――」

ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽん。

「ん?」

「インターホンかい? ふむ、すまないグレン。出てもらっていいかな?」

「りょうかーいっす。あれ、そういえば俺たち、何か忘れているような? ま、いっか」

グレンが、シアタールームを出て、玄関に向かう。

「それで、アジヤマ、この変態の雑談スレについての説明の続きを」

「おう、それがな、すげえんだよ。これ、設定がめちゃくちゃこっててよー、主人公、”リトゥ・イル・ソリトゥス”の數ある生まれ設定、”村の狩人”ルートの主人公家族に拾われたとかいう設定で、今の年齢とかも一か月ベースで変わっていくんだよ。ほら、これ、今の自分のビルドとかも、まるで本當のことみたいに書いたり、食べたものの味、ライフ・フィールドの食事の描寫とかもまるでほんとのように書いててよー」

「ふむ、これは確かに、読みものとしても興味深いねえ」

割とリラックスしている様子の2人、いつのまにか味山がソファに腰かけ、そのすぐ隣にソフィがクッションを抱えて座り込む。

「おっと、アジヤマ、これは面白いぞ。支配者の指と特殊な魔法系のビルドを使用しての魔使役だ! これは、ワタシが見た攻略サイトではなかった報だな」

「だろ? 面白いだろ!? これ、実際のプレイでもできるらしいんだよ。ただ、この魔法系さあ、めちゃくちゃ扱いづらいし、特殊な古が必要らしいんだよ。詳しい名前は伏せられてるんだけどな」

「ほう、これは……興味深いね」

いつのまにか、2人の距離は限りなく近い。互いに端末をいじりつつ、互いの畫面を見せ合う。必然的に、味山とソフィ、どんどんその2人のの距離は近づいていく。

そう、それは完全に心をゆるした者同士の距離。もちろん、この2人は互いになんも意識していない。小學生が休みの日に攜帯ゲーム機をもちよって、わいわいしてる中、どんどん仲良くなっていくのと同じようなものだ。

だが、しかし――。

「へえ」

「あ?」

「む?」

シアタールームに誰かいた。

グレンではない。

ゲームプレイの為に明度を落としている部屋の中でも、その金髪はきらめく。蒼い瞳、いつもハイライトはなめだが、部屋が暗いせいだろうか? いつにもましてハイライトがなくて

「ア、レタ? あ――」

バカが染(うつ)っていたソフィが気づく。自分が今、確実にやらかしていることを。

だが、本のバカ(原種)は何もそういうのを気にしなかった。

「おー、アシュフィールド! お疲れさん! あ、アシュフィールド、今さあ、みんなでゲームしててよー、グレンとか、クラークもハマっててよ、お前も興味ねえか?」

ニコニコ顔で味山がいつのまにか現れた英雄へ聲をかける。

「……ゲーム。タダヒトの趣味、ソフィもハマった? え? ソフィとハメた? あは? ルーンの言う通り? え、そんなわけないわ、だってソフィよ? え? でも何あの距離、え?」

ぶつぶつと俯いてしかし、微だにしないアレタ。

味山が首を傾げ、ソフィは青い顔をしながらゆっくりと味山から離れていく。部屋の出り口ではグレンも青ざめた顔、無言のまま大きくばってんのジェスチャーをしていた。

「アシュフィールド? どした? お前も興味ないか? ライフ・フィールド!」

「――ええ、そうね、とても、とーっても興味あるわ。タダヒト」

にこり、微笑むアレタ。

「マジ!? やったぜ!」

一瞬、味山のの本能が寒気を伝える、しかしすぐにそれは消えた。シンプルにこれでチーム全員を沼に墜とせる。

バカゲーマーの本能が全てを忘れて、味山をにっこにこの笑顔へと変えていた。

「ええ、気になるわ。とても。アハ、もうびっくりしたわ。タダヒトとソフィ、そんなに仲が良かっただなんて知らなかったもの」

蒼い瞳が、にまりと歪んでいた。

読んで頂きありがとうございます!

お正月が終わった。だが、まだ短編が終わらねえ。

次回が多分短編最終回! おたのしみに!

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