《剣聖の馴染がパワハラで俺につらく當たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)【書籍化&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】》番外編 フリック爵位を賜る

番外編です。

アルフィーネがアビスフォールの村から旅立って半年、異世界から來訪した村人たちの面倒を見て忙しく暮らしていたが、今日はユグハノーツの辺境伯様の屋敷に爵位敘任の返禮に訪れている。

「フリックよ。まだわしは『婚約』を認めた『だけ』—――」

目の前で腕を組み、仁王立ちしていた辺境伯様の口が強制的に閉じられた。

辺境伯様の口を閉じた主は、彼の娘で俺の婚約者になった魔師ノエリアだ。

「父上、帝都にいる家長のおばあさまも承認した『婚約』であります」

「ノエリア、ちょっとお義父さんに厳しいんではないかな……。ほら、苦しそうだし」

魔法により強制的に口を閉じられた辺境伯様は、手足でジェスチャーをして魔法を解くようノエリアに迫っている。

「ロイドも諦めが悪いなー。ノエリアは、村でずっとフリックとイチャイチャ――」

「ガウェイン師匠も口をお慎みください。わたくしはフリック様のお手伝いをしっかりとしているだけですので」

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ロイドと同じく口を魔法によって強制的に閉じられたガウェインが、同じように手足をかし魔法を解くようジェスチャーした。

最近、ユグハノーツから、俺の治めるフェルアド村へ工房を移し、異世界の技を導した剣の制作に心を注いでいる。

俺の相棒である魔剣ディーレを超える剣を作るべく、日夜フォーリナーの若い子たちと鍛冶仕事にを出しており、辺境伯様から依頼されていた製作を屆けるため同行していた。

「ノエリア、ガウェイン師匠も、辺境伯様も顔のが変わってるから。早く解いてあげて!」

俺の指摘で、2人の様子に気付いたノエリアが慌てて魔法を解く。

「ぶはぁ! 弟子に殺されるところだったわい。ノエリアをからかうのは命懸けだな。イチャイチャパワーこえぇ!」

「フリック! わしはまだノエリアとの同衾は認めておらぬからな! 婚約中とはいえ寢室は別にせよ!」

再び魔法を発させようとしたノエリアが杖を構えると、2人は自ら先んじて口を閉じた。

「ロイド様、ご安心くださいませ。私が付いておりますので、ノエリア様とフリック様の子は近々ご懐妊されるはずです。お任せください」

俺たちの背後で控えていたスザーナさんが、火に油を注いでくる。

「スザーナ!? そのようなことはまだ早いですからっ!」

「フリック、貴様! 許さぬ! 剣を抜け! ノエリアと子を為すつもりなら、わしを倒してからにしろ!」

激昂した辺境伯様が腰の剣を抜いて、こちらに突き付けてくる。

この殺気!? 本気だ!?

突き込まれた剣をディーレを引き抜いて弾き返す。

「辺境伯様! 落ち著いてください! まだ、ノエリアとは一緒に寢てませんから!」

「ふぁぁああ! マスター、戦闘ですかぁ? はっ! 辺境伯様! おはようございます!」

「ディーレよ。よく、目覚めた。フリックを敗する手伝いをせよ!」

剣で鍔迫り合いになったため、辺境伯様はディーレを味方に引き込もうと話しかけている。

「それは辺境伯様のご命令でも無理ですぅー。ディーレは、マスターを裏切れません」

「クッ!」

「義父上、落ち著いてください」

「まだ、お義父さん呼びは許しておらぬぞ! フリーック!」

辺境伯様は年齢による衰えをじさせない力で、鍔迫り合いを押してくる。

大事な一人娘だということは知っているけど、俺もノエリアとともにフリックとして人生を生きると決めたから引くわけにはいかない。

押し負けないよう力をれ、勢を押し戻した。

「ノエリアと婚約させてもらった以上は、これからは『義父上』とお呼びさせてもらいます」

「ぐぬぬっ!」

鍔迫り合いの最中、チラリとノエリアを見ると、顔が真っ赤になってもじもじと服の裾を弄っていた。

「ロイド様もフリック殿も剣をお納めください。中庭にて敘任式の準備が整っております」

俺たちの手を取り鍔迫り合いを止めたのは、騎士隊長のマイスだった。

「敘任式?」

今日は返禮に訪れただけで、そんな話はいっさい聞いてなかったはず。

ある程度狀況が落ち著いたとはいえ、フェルアド村の件はまだ口外できることではないし。

婚約に関してはまだ々の話だってことだったはずだが――。

「義母上が正式に布告せよと何度も書簡を寄越すのだ。エネストローサ家の家長に逆らうわけにはいかぬだろう。家臣や領の主だった者へ、ノエリアの正式な『婚約者』としてフェルアド子爵を與えると発表するだけだ」

「我ら騎士団も包囲戦で英雄的行を見せたフリック殿であれば、後継者として問題なく剣を捧げられると意見が一致しておりますしな」

英雄的行か……。

俺だけに贈られるものではないんだよなぁ。あの戦いでは多くの騎士が命を失ったわけだし。

「フリック、わしの跡を継がねばならん男がそのような顔を見せるな。お前が背負ったは大きいのだぞ」

席に腰を下ろし、鞘に納めた剣を家臣に投げ渡した義父上から厳しい視線に曝される。

英雄の看板ってことか……。

あの戦いで死んでいった者たちの想いを背負い続ける重みは、いかほどのものだろうか。

半年経ったけど、日増しに重みが増している気がする。

「だが、一人で背負うな。わしの娘を婚約させたのはお前に背負わせる英雄の看板の重さを和らげるためでもあるのだ。ともに手を攜え、分かち合え。お前たちならできるであろう?」

義父上はそれまでの厳しい視線が緩み、親しみをじさせるらかな視線に変化している。

「は、はい。お心遣いありがとうございます」

「わしもまだ看板をお前にだけに任せるつもりもないからな。もっと、を鍛えてやる。今日はその一歩を始めるための儀式だ」

「父上……」

「ノエリア、庶民であるフリックがわしの後継者の座に就くことをよく思わぬ者もおる。お前は伴としてフリックがいらぬことで困らぬようしかと目配りをいたせ」

「はい、承知しております」

「よし、敘任前の説教はここで終わりだ。あとは、中庭で式典を滯りなく終らせるぞ。服裝は平服でかまわぬ。これもユグハノーツ流だからな! マイス、案せよ!」

「はっ!」

それから、俺たちは中庭に移すると、騎士団員や街の有力者の人たちに見守れながら、フェルアド子爵敘任式を執り行なわれた。

この式典により、俺は正式にエネストローサ家の令嬢ノエリア・エネストローサの婚約者となり、フェルアド子爵として爵位を授けられ、ユグハノーツ辺境伯ロイド・エネストローサの家臣となった。

お久しぶりです。

剣聖の馴染の番外編投稿させてもらいました。

本編の最終話後の話となっております。

ロイドの娘溺はまだまだ直りそうにありませんが、フリックのことも認めているため、婿として鍛えてくれるかと思います。

コミカライズもコミック4巻が12・28に発売されますので、そちらもよろしくお願いします。原作1巻の最終シーンまでようやく収録されております。WEB版、書籍版は完結ともに完結しておりますが、コミックも完結まで描けるよう応援して頂ければ幸いです。

コミカライズの方は原作小説2巻の方にっていきますので、WEB版とはまた違ったフリックたちの冒険譚がマンガとして描かれていく予定です。

あと、新作の連載を始めました。異世界転生です。『異世界サバイバル ~俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です~』興味を持ちましたら下記リンクから行けるようにしてあります。

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