《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》賢王十字陵

ひとつのロンバルドへ統合した當初から、鉄道や高速道路を計畫的に敷き詰め、通の要としたロンバルド王國であるが、それに加え、忘れてはならぬのが船舶輸送である。

特に、河川を用いたそれは繁盛しており、とりわけ往來が盛んなのは、かつて『死の大地』と呼ばれた大地に生み出されし、長大な人工大河であった。

先日、長き工事の末にようやく完を見たそれは、當初から流の要となることを期待されたことから、十分な喫水と幅を有しており、大型船同士が楽にすれ違うことも可能なのだ。

速度としては、電車や自車……そして當然ながら、飛行機などに劣る。

しかし、一度の運搬量に優れたこの通手段は、『死の大地』と呼ばれた広大な土地の開発に、必要不可欠なものであった。

そして、今、いくつもの船が盛んに行き來し、第二の王都とも呼べる街――ビルクへ強力に輸送し続けているものがある。

他でもない……。

――石材。

……であった。

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各地の採石場で切り出されたそれは、ビルクへ向かう船舶の腹に満載され、同地の港で降ろされるのだ。

そのようにして、大量の石材を集めるのは、ある建築を建造するためである。

そして、その建設現場で見られるのは……およそ當代のものとは思えぬ、原始的で過酷な景であったのだ。

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「働け! 働けえっ!

さぼってる野郎には、飯を食わせねえぞっ!」

ほぼ半ともいえる皮裝に見を包み、鞭を手にした男が、それで地面を叩きながらそうぶ。

そのようにして怒鳴られながら隷労(れいろう)を強いられているのは、年端もいかぬ子供たちであった。

それも、尋常な數ではない……。

おそらく、千人は下らないだろう。

しかも、や髪のは様々であり、ロンバルド王國國のみならず、諸外國からかき集められたのだろうことがうかがえた。

その証拠に、子供の中にはダーク種のエルフやドワーフ、獣人なども見けられるのだ。

子供たちは、長大な列をしており……。

それぞれの背には、切り分けられた石材をかついでいる。

超古代の技を結集して生み出された大河は、このように原始的な労働で用いる資を運搬するため、使われているのだ。

奴隷のに墮とされた子供たちが、石材を運び込む先……。

そこに完しつつあるのは、巨大な建造であった。

甲蟲型飛翔機(ブルーム)などを使い、上空からこれを見たならば……全的に、星を象形(しょうけい)化したような形であることに気づくだろう。

だが、ただそれだけだ。

石を積み上げることで造り上げられたそれには、いかなる昨日も存在しない。

城塞のように、部へ居住可能なわけでもなく、かといって、燈臺のように遠くから人を導く役割が存在するわけでもない。

強いていうならば、これを造り上げることそのものが、目的……。

これの建設を決斷した人間が、それを眺めて満足し、心を安らかにすることこそが役割なのである。

……はた迷なこと、この上ない。

そして、今や大陸に並ぶ者のない強大な権力と財力の限りを盡くし、これなるモニュメントの建設を主導する気がれた男は、バイクに玉座をくくり付けたような造りの特注車からこれを眺め、満足げにワインをくゆらせていたのだ。

「フハハハハッ!」

特に意味も理由もなく高笑いを上げた男は、おそらく四十代の半ばから後半の年齢であると思える。

子供たちを酷使している看守らと同様、ほぼ半といえる皮裝にまとったそのに、加齢による緩みは一切存在しない。

鍛え抜かれたは、まるで鉄線を巻き付けかのようであった。

顔立ちは――悍。

素材はいいというか、素材だけはそこそこ良いため、黙っていれば、おじん趣味のをころっと落とせる渋さがそこに備わっている。

しかし、全てを臺無しとしているのは、先述の皮裝を始めとする服裝のセンスだ。

特に、深い意味はないけどなんとなくまとっているのだろう真紅のマントは、古代の技を得て大いに発展したはずのロンバルド王國が、二十年以上前の時代へ逆戻りでもしたのかと思わされる。

だが、玉座の上でワイン片手に高笑いを上げているこの男こそ、超古代の産を蘇らせ、ロンバルド王國を大陸最大の強國へと押し上げた人なのだ。

――アスル・ロンバルド。

本人は自らを賢王と呼んではばからないが、周囲や國民からは、もっぱら狂王アスルと呼ばれている人である。

「ふうん……」

狂王は、手にしたワインをひと口味わい、建築現場に視線を向けた。

そこで、繰り広げられる景……。

未來を擔うはずの子供たちが、代わりに重く固い石材を背負わされ、鞭打たれながら奴隷のごとく扱われるという地獄のごとき景を目にしながら、満足そうにうなずいたのである。

「キートンにでも命ずれば……。

あるいは、どこぞのゼネコンにでも投げれば、もっと早く、立派な建築とすることもできただろう……」

手にしたグラスをくゆらせながら、狂王がそうのたまう。

誰も聞いている人間がいないため、完全なる獨り言であったが、そのようなことを気にしてはいけない。

狂人のすることなど、まともに考えるだけ損なのである。

「しかし! く無垢な子供たちが、その手で造り上げる過程こそが重要……!

それでこそ、この賢王十字陵は真の意味で完するのだ!」

空いた方の腕を握り締めながら、狂気の王が力説した。

――賢王十字陵。

星型をしているのに、なぜ十字陵なのかは不明であるが、ともかく、これなる建築の役割が判明する。

――陵墓。

これは、彼が心から敬する者のために用意した、巨大な墓なのだ。

……葬られる側からすれば、こんな地獄絵図を繰り広げて造られた墓なんぞいい迷である。

「お師!

あなたの賢王十字陵は、もうすぐ完する……!」

ともかく、アスル王は天に向けてグラスを掲げながら、亡き師にそう宣言したのであった。

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「いや、なんでだあああああっ!?」

目の前で繰り広げられる、あまりにトンチキな景……。

それを目にした俺――アスル・ロンバルド二世は、思わずそうんだのである。

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