《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》74 10年間 1
フェリクス様を忘れようと思ったことが、私の希かどうかですって?
もちろんそうだわ……と答えるべきところなのに、私は躊躇ってしまった。
『他の人のことを考えずに、私の心の裡からのみ出た考えなのか』と問われたら、はっきりとそうだと答えられる自信がなかったからだ。
私はフェリクス様の代わりになった時のことを思い返す。
あの時―――客間の一室で、ギルベルト宰相とビアージョ騎士団総長、『虹の乙』であるアナイスの3人に囲まれたフェリクス様を目にした時のことを。
長椅子の上に意識なく橫たわっていたフェリクス様は、彼のことを想う3人に囲まれていた。
だからこそ、その景を見た時に、『この場には、彼に必要な人が全て揃っている』と思ったのだ。
もしかしたら私は、フェリクス様を支えている人々の気持ちを、勝手に読み取ったのかもしれない。
彼の一の文と一の武。
2人が純粋な敬の心で、私利なくフェリクス様のために行していることは分かっていた。
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そのため、2人が最上だと思う「虹の乙」のために妃の席を譲るべきだと、2人の気持ちを読み取った気分になったのかもしれない。
あるいは、私は最後の瞬間に諦めたのかもしれない。
私が何をしたとしても、フェリクス様は私が想う気持ちと同じものを返してくれないことを理解して―――このを諦めたのかもしれない。
でも、それでも、フェリクス様には傷一つ、苦しみ一つ與えたくないと思った気持ちは、心からのものだった。
だからこそ、彼の代わりになって……彼が思い悩むことからも解放してあげたいと考えて、私から解放することを決めたのだ。
なぜなら魔の心さえなければ、全ては上手くいくと気付いたからだ。
私が側にいたならば、フェリクス様は私を尊重して、立場を整えてくれるけれど、私がいなくなったとしても、彼の世界は正しく回っていくのだと―――それこそ、ギルベルト宰相とビアージョ騎士団総長に支えられ、『虹の乙』の手を取りながら、まっすぐ前に進んでいくのだと気付いたからだ。
彼が私に抱く想いは替えが利くものだから、『彼にとってよりよい者』を選ぶことが、彼のためになると理解したのだ。
だからこそ、私が正しい道を邪魔しないようにと、彼への心を捨て去ったのだけれど……そして、そのことは私の心からのみだったのだけれど、他の人の影響を全くけていないとは自信を持って言い切れなかった。
そのため、口を開けないでいると、フェリクス様は落ち著いた様子で私の背中をでた。
「ルピア、君は今、どのようなことを考えた? まとまっていなくても、私が理解することが難しいと思ったとしても、言葉にして教えてもらえないだろうか。10年前の私は、君の気持ちを尋ねることをしなかった。君が控えめで、自ら希や思いを口にするタイプではないと分かっていたのに。……私はもう間違いたくない。そして、君のことを正しく理解したい。どうか君の気持ちを言葉にして、私に教えてほしい」
フェリクス様の言葉を聞いて、確かに私は多くのことを彼に伝えていなかったことに思い至る。
伝えなかったことの多くは、彼にとって取るに足らないことだと思われるものだったからだけれど、……それでも私は、彼に話をするべきだったかもしれない。
私のことを理解してもらうために。
そう考えて、私は代わりになった時にどう考えたのかを、きちんと聲に出して説明する。
3人に囲まれたフェリクス様を見て、私がどう思ったのかを。
私がどのように考え、だからこそ、私は長い眠りについて、彼への心を忘れようとしたのかを。
私の話は自分でも上手だとは思えなくて、私がどう考えたかの説明に至っては、容があっちに行ったりこっちに行ったりして、理解するのが難しいように思われたけれど、彼は気強く最後まで話を聞いてくれた。
やっと全てを語り終えた時、背中をでていてくれたフェリクス様の手が止まっていることに気が付いた。
私のお腹に置かれたもう一方の手も、心なしか強張っているように思われる。
そのため、顔を上げて彼の顔を見上げたところ……私は驚いて目を見張った。
なぜならフェリクス様のしい藍青の目から、ぼたぼたと大粒の涙が零れていたからだ。
「フェ、フェリクス様?」
何が起こったのか分からずに慌てて彼の名前を呼ぶと、私は両手で彼の頬を包んだ。
悲しまないでほしい、と強く思ったからだ。
「ごめんなさい、私が何か余計なことを言ってしまったのね。ああ、どうか泣かないで……」
おろおろと言葉を紡ぐ私を、フェリクス様は泣きながら見つめると、震える聲を出した。
「ルピア、君は大國の王としてきちんと育てられ、君自の努力も相まって、しっかりした考えを持っている。そして、君自の質は優しさのみでできているんだ。すまない、……本當にすまない。これほどきれいな君を、どうして私は欠片ほども理解していなかったのだろう」
長らく中斷しました。お待たせして申し訳ありません。
ストーリーに迷うところがあって、これまでの話を何度か読み返していました。
年末年始の間に、あと何度か更新できればと思いますので、よろしくお願いします。(自分を追い込むスタイル)
【コミカライズ&書籍化(2巻7月発売)】【WEB版】婚約破棄され家を追われた少女の手を取り、天才魔術師は優雅に跪く(コミカライズ版:義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔術師に溺愛される)
***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
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