《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》75 10年間 2
「君の考えはしっかりしていて、とても理路整然としている。君が私を誤解したとしても、正しい報を與えなかった私が悪いのだから、甘んじて君の言葉をけ止めるべきだ。それは理解しているが……それでも、1つだけ否定してもいいかな。『私が君に抱く想いは、替えが利かない』と。『私にとってよりよい者』などどうでもいい。私は君がいいんだ」
頬に涙を流しながらも、はっきりと言葉を紡ぐフェリクス様を見て、私は開きかけた口を閉じた。
彼に対して、何と答えていいか分からなかったからだ。
戸う私に対して、フェリクス様は言葉を続ける。
「君がそう考えたのは私の落ち度だ。この10年で痛したが、考えていることが全て正しく伝わるはずはないのだ。にもかかわらず、説明を怠った私の失態だ」
それは違う。私だって多くのことを説明していなかったのだから、フェリクス様だけが責められる話ではないはずだ。
そう思いながら首を橫に振ると、フェリクス様は手のひらでぐいっと涙を拭った。
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それから、後悔した様子で私を見つめる。
「ルピア、この數日間で理解したが、私と君の間には10年の隔たりがある。君は10年前に私の代わりとなって眠った時から、時間が止まっている。一方、私はこの10年の間に多くのことを考え、調べ、行してきた。その結果、私の中にとても大きくて重いが積み重なってしまったから、わだかまりを解きたいと考え、拙速に事を運ぼうとした」
フェリクス様の言葉はその通りだったので、私は首を橫に振るのを止めて彼を見上げた。
確かに、私が眠っていた10年の間、私の時間は止まっていたし、フェリクス様の時間はいていたのだ。
そして、この10年の間に、彼が何を考え、どう行してきたのかを私はほとんど知らない。
「君がこれほど深い思いを抱えて眠っていたのに……私は10年間の出來事と思いを言葉で説明するだけで、私のことを理解してもらおうとしていた。私の方こそが、君を理解することから始めなければいけなかったのに」
「えっ?」
私を理解することから始める……ということは、先ほどの説明では不十分で、上手く伝わっていなかったのだろうか。
「まあ、ごめんなさい、私の説明が上手くなかったのね。どの辺りが理解できなかったのかを言ってもらえれば、詳しく話をするわ」
申しわけない気持ちでそう提案すると、フェリクス様はぎゅっと私の手を握ってきた。
「私の言い方が悪かったね。そうではなく、君と一緒に生活をすることで、君のことを知る機會を私に與えてほしいということだ」
「それは……」
どう答えたものかと戸っていると、フェリクス様はまっすぐに私を見つめてきた。
「ルピア、私だけではなく、この國の多くの者が君への対応を間違えた。ギルベルトとビアージョがその最たる例だが、2人は君に會いたいと希しているから、1度會って、罵ってやるといい。その際には私も同席して、彼らを悪しざまに言う手伝いをしよう」
「えっ?」
フェリクス様を支える雙璧とでも言うべき2人をさらりと非難した彼の態度を見て、一どうしたのかしらとびっくりする。
彼はこの2人に全幅の信頼を置いていたのではなかったかしら。
けれど、目を丸くする私に対して、フェリクス様はさらに自分の発言を補強してきた。
「あるいは、私も含めたところで、3人まとめて罵ってもらっても構わない。きっと、ミレナが手伝ってくれるだろう」
確かにミレナは、兄であるギルベルト宰相に対して容赦なく悪口を言うに違いない。
けれど、ギルベルト宰相とビアージョ総長は自分たちが正しいと思う信念に基づいて行しただけで、咎められることは何もないはずだ。
そう考えていると、フェリクス様は私の手を握っていた手を離し、まるで降伏を示すかのように両手を上げた。
「ルピア、君は先日、しばらくの間は10年前の出來事についての説明を一切聞きたくないと言ったね。君の希は何よりも優先させたいが、1つだけ説明させてくれ」
そう言うと、フェリクス様は私の返事を待つことなく、真剣な表で口を開いた。
「10年前、アナイスが君に妃選定會議の話をしたが、あれは虛偽だ。この國で最後に選定會議が開かれたのは、君を選定した13年半前で、それ以降は1度も開かれていない」
「えっ?」
思ってもみないことを言われ、びっくりして目を丸くする。
私はまるで昨日のことのように、アナイスから側妃になると告げられた場面を思い出すことができるのに、それが噓だったというのだろうか?
「そのアナイスだが、彼はこの10年間、1度も王都に足を踏みれていない。『虹の乙』として各地を回り、その恩恵を皆に與えている最中だ」
「…………」
つまり、アナイスはフェリクス様の側妃として、この10年間、彼の側にいたわけではないということ?
できるだけ考えないようにはしていたものの、そうかもしれないと想像していたことを一気に否定され、何を信じていいのか分からなくなる。
そのため、私は頼りない表で自分の両手を見下した。
すると、フェリクス様は悔いるかのような表を浮かべ、苦し気に言葉を続けた。
「すまなかった、ルピア。君の希に反して、過去を説明したことを謝罪する。そんな私が今さら何をと言われるだろうが、君が私の話を聞きたくないと言ったのはもっともなことだ。私は一方的に私側の話をしようとしたのだから、君にとったら、私の気持ちを押し付けられるようなものだ。だから、これは要なのだが、これからゆっくりと時間を掛けて、私とこの國を確認してくれないか? 私はこの10年間で、私自とこの國を変えてきたつもりだから、それを君にじてほしい」
そう言うと、彼は自分の中で渦巻くを抑えるかのようにぎゅっと両手を握り締めた。
「一切、何かを押し付けるつもりはないし、君は自由にじてくれて構わないから」
それから、フェリクス様は一度強く目を瞑った後、再び目を開き、雰囲気を変えるかのように明るい聲を出した。
「ところで、君は人気者だから、多くの者たちが君に會いたいと待ち続けていたよ。侍たちに、廚房の料理人たち、騎士たちに文たちだ。それから貴族たちも。先ほど言ったように、ギルベルトとビアージョも待っているから、彼らを罵ることも忘れずに」
たくさんの溫かいコメントをありがとうございました!
嬉しかったので、続きをアップします。(そうでした、「読みたい」と言われると、私は続きを書きたくなるタイプでした)
今年一年間、お付き合いいただきありがとうございました。
來年もよろしくお願いしますo(^-^)o
(これから頑張って大掃除をします)
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