《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第4章 1963年 プラスマイナス0 - すべての始まり 〜 3 長の男

3 長の男

「あんたの名前は、〝名井良明〟なんだよ……」

そんな最後の臺詞は、まったく意味不明なものだった。その後、何が何だかわからないうちに釈放となり、見ず知らずの男が剛志のことを待っている。

「そう、これからあんたは、名井良明になるんだよ。もしこの名前が気にらないなら、それはそれで構わないがね。ただそうなるとあんたは、この日本で生きていくのが難しくなるんじゃないか? まあもっとも、この名前も決して、安全ってわけじゃあないんだがな……」

警察署を出るとすぐ、男はいきなりそんなことを言ってきた。署での口調とガラッと変わって、なんとも唐突にじが悪い。病院関係者だと紹介されたが、すぐに自分から大噓なんだと言って笑った。

「あんたには、重度の神病患者になってもらったよ。今はまだ薬が効いてるけど、これが切れたら、まあ大変なことになるってね、擔當の刑事さんたちをさんざん脅かしたんだ。それから、刑事さんが病院に電話をれたりして、それでなんとか、ちゃんと信用してもらえたよ」

男は早足に歩きながらそう言って、スーツのポケットから白っぽい何かを取り出した。

「まあ実際にはこの寫真と、額に古傷ってのが一番、効いたんだろうけどねえ~」

妙にもったいつけた言い回しとともに、手にあるものをチラッとだけ剛志に向ける。

それは、ほんの一秒くらいのことだった。

それでもたったそれだけで、それがなんだかすぐにわかった。

「ちょっと待ってくれ! いったいどうして、それをあんたが持ってるんだ!?」

思わずそう聲にして、どうしてこいつが手にしているか? 頭で必死に考える。

そもそもこれは、この時代にあってはならないものなのだ。

「どうして、俺の寫真を持っている!」

葬式の時の寫真だった。上半だけを引きばしたせいで、見るも無殘なくらい畫質が荒れてしまっている。それでも確かに、つい數年前の自分の顔には違いない。

ところがこの時代では、數年前でもなんでもないのだ。

――俺はこの時代で、まだ高校生にもなってない。

それどころか、母親の恵子だってピンピンしている。本當ならこの寫真には、周りに人がたくさん寫っていて、腹辺りには恵子の影があったはずだ。

「あんたはいったいなんなんだ? 分証を見せてくれ。あるんだろ? じゃなきゃこんなにあっさり、警察が釈放なんかするはずがない」

分証? そんなものあんたが見てどうするんだ? それともあれか? 分証が偽だから、もう一度捕まえてくれって言いにいくか? まあ俺としては、ほんとのところどっちでもいいんだけどな……」

そう言って鼻で笑う男は、明らかに剛志よりも年下だった。三十歳になっているかどうか、長格も良く、この時代にしては珍しいくらいにスーツ姿が決まっていた。

きっと黙って立っていれば、弁護士やエリート証券マンくらいにきっと見える。

そんな男がどうして、危険を冒してまで剛志を助けてくれたのか?

その辺の問いには一切答えず、男はしばらく黙ったまま剛志の前を歩き続けた。一方剛志もこの段階で、男について行く以外に選ぶべき道はない。そうして五分くらいが経った頃、男が唐突に立ち止まる。それからゆっくり振り返り、不機嫌そうに聲にした。

「まずはこれに乗ってくれ。くわしい話は、それからだ……」

そこは住宅街の一角で、そう言う男のすぐ橫には、この時代には珍しい高級外車が停まっていた。元の時代のものより大きく見えて、これこそ外車だっていう重厚じられる。

剛志が助手席に腰掛けるなり、男は膝の上目がけて茶封筒を放ってよこした。そこから中を取り出すと、男は打って変わって靜かな口調で話し出した。

    人が読んでいる<ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください