《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第92話 その曲線は人類の未來①
あれ? 1/11現在第121話執筆中。投稿するより書き溜める方が‥‥‥‥速い?
「ね~。コーラ。アマリアでもこんな戦艦作れないかなあ?」
円形の舵のその外を指でそっとなぞりながら、ソーラが語りかける。
彼がいるのは戦艦ラポルト。ブリッジの舵席だ。
「ムリっしょ~~」
ソーラの背後から聲がした。コーラだ。いつも子が座る艦長席、そのハンドレストの部分に腰を乗せて足組みしている。
「でもあったら強くない? 々作戦行の幅が広がるし、自衛一方じゃなくなるし」
「ここの子達に聞いたけど、作るだけでものすごい金額らしいよ。事前研修でさんざん言われたって。船覆う裝甲板1枚で、小型DMT1機分だって」
言われたソーラは指を折って暗算するしぐさ。怪訝な顔をした。
「そんな高いワケないよ。いくらなんでも裝甲板1枚だよ。この艦、何百枚裝甲板あると思ってんの?」
「戻ってきたら聞けば~? アタシ興味な~し」
言いながらコーラは、片足を持ち上げてグラドルのようなポーズを決める。
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「‥‥‥‥アンタまたそのポーズして。でもみんな出払ってるからね~。‥‥いいのかな。私達こそ行かなきゃじゃない? オリシャさんのお見舞い?」
「いいんだよ偽善者。このためにアンタが呼ばれて、アタシ達で留守番してるんだから」
「‥‥ならちゃんとDMTデッキでスタンバイしなさいよ」
「やだね~~。アタシこの艦長席気にったんだも~~ん」
*****
「ぼ、僕もっていいの? じゃあ」
僕はそわそわしながらドアの向こうにをれた。
「――どうぞ。全員で、ってことなんだから」
依の聲だ。
僕が室すると、清潔な薄いオレンジの壁の部屋に4つ、ベッドが置いてある。そののひとつに、アマリア村の妊婦、オリシャさんがいた。傍らには、依。
「オリシャさん。予定日は?」
「えっとぉ、男の子? の子?」
子達は口々にそんな事を言いながら、オリシャさんとやりとりしてる。依が、り口の僕を呼んだ。
「さ、暖斗くんもこっちへ來て」
「――い、いや僕はいいよ」
「もうここにいる全員やったのよ。後は暖斗くんだけ」
まほろ市の市民病院5F西病棟。周産期科。ここにラポルト乗員16人が集結している。オリシャさんのたっての願いだそうだ。
「咲見、暖斗さん。アマリアの為、何度も戦ってくれましたね。私自も、2回も助けていただいています」
彼は、ベッドで半を起こしたまま、頭を下げた。臨月のお腹がつかえるので苦しそうだったけど、深く、長く、下げてくれた。オリシャさんの靜かなひと言が、心にじん、と沁みてくる。
――――これが、『母』というものなのかな?
「い、いえ。僕はただ‥‥‥‥」
「まだ學生さんなのに、自主的に立ち上がってくれたと」
「そ、その、妊婦さんとかに何かあったらイヤだなあって思っただけで」
「遭初先生」
「はい。――あと『先生』って呼ばないでって」
オリシャさんのその言葉で、傍らの依が彼の上掛けをめくっていく。患者用の浴みたいな服と、ふくらんだお腹があらわになる。
「えっ?」
僕は驚くけど。
「‥‥‥‥みんなもうやったのよ? あとは暖斗くんだけ。みんな直にさわらせてもらったりしたけど、暖斗君はちゃんとマタニティドレスの上からよ?」
「そだよ。赤ちゃん。早くしろよ」
麻妃にせっつかれた。僕の目の前に、大きく、まん丸い妊婦さんのお腹が出現していた。
「どうぞ。この子に挨拶してあげてください。‥‥‥‥ほら。あなたを救ってくれたお兄ちゃんが來たよ?」
オリシャさんは僕の「右手」をとってそっとお腹の上に置いた。
臨月だというそのお腹は、ふしぎな丸みを帯びて、ものすごく大きく見えた。
曲線だ。新しい命が宿る曲線。なんだろう? 見とれてしまう。
「あッ!?」
「どうしたの?」
「今いた‥‥‥‥!!」
「ふふ。『お兄ちゃんありがとう。こんにちは』って返事をしたんです。先生の言う通り、暖斗さんの手はあったかいですね」
「だからもう。『先生』は」
「‥‥‥‥私は恵まれています。アマリアの歴史は、侵略からの抵抗の歴史。我が子に逢いたくても、子を宿すことなく散っていったが數多います」
彼は折越さんに向かって。
「あ、あなたのさっきの質問。『男の子かの子か?』。‥‥‥‥知らないわ。どちらでもいいの。先生はご存じみたいだけど」
依の方を見て微笑むオリシャさん。依は下を向いて。
「‥‥‥‥だってわたしは彼の醫療チームにってるから。エコー畫像とか見ちゃったから、もう」
オリシャさんは、もう一度、夕日の中で靜かに微笑んだ。絵畫のようだった。
「どちらでもいいのです。どちらでも大切な我が子。この子が、アマリアの未來を生きてくれる。それでいいのです」
妊婦さんのお腹ってもっとふわふわしてるかと思ったけど、結構しっかりしたじだった。急にいたりすると、さらに固くなるそうだ。
そして、暖かかった。
オリシャさんは僕の「右手」を「暖かい」と言ってくれたけど。
「熱」をもらったのは、僕の「右手」のほうだったよ。
僕は、その手を握りしめる。どうしてだろう。が熱い。
そうだ。そうなんだよ。親元から離れて1ヵ月。軍艦に乗ってありえない験をしてきた。
その間全部、僕たち16人で決めてきた。々な事を!
だから「こういうの」も悪くないよ。僕ら16人は、自分達で決めて、自分達で行する。
――それでどんな結果になっても、たぶんけれる。その「覚悟」が、僕らの「自由」を擔保している。
全員――後で依は病院に殘るけど。16人で廊下をぞろぞろ歩いていた時に、先頭を行く子さんが振り向いた。
「みんな。例の話どうかな?」
例の話、ああ、あの話の事か。ちょうど良かった。が熱くて、気持ちのはけ口がしかったんだ。――――同時に答えも。
さっき、オリシャさんの「曲線」を見て肚が決まった。だから。
一番後ろにいた僕が即答する。
迷いは無いよ。と、いうか、「やらなければならない」という気持ちが中から湧き出ている。
「いいんじゃないかな。やろうよ。ここまできたら」
※「ああ? 橫道ばっかで最終決戦だったの忘れてた!」というそこのアナタ!!
「お待たせ致しましたああ!!!(第2部にもう飛ばないとは言ってない)」
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