《みんなは天才になりたいですか?僕は普通でいいです》97.そんな重要なことを黙っていたのはなぜか

「もしもし?」

聞きなれた文人の聲だ。電話で聞くと、普段よりしだけしゃがれて聞こえる気がするけど、この聲も嫌いじゃない。むしろ好き。

「あれ? たより? もしもーし」

「あー……ごめんごめん。急に電話かかってきたからびっくりした」

「悪い。もう寢てたか?」

「ううん。まだ起きてた」

いつもと変わらない、本當になんでもないやり取り。それだけで無意識に強張っていた中の筋が弛緩していくのがじ取れる。力が抜けているのか、気が抜けているのかどちらか分からないけど、張り詰めていた何かが、緩んでいく。

「ふふ……」

「ん? いま笑った?」

「あー……気にしないで。なんでもない」

なぜかわからないけど、この気持ちを文人にづかれるのはしだけ恥ずかしい気がして咄嗟にごまかしてしまった。私が文人を好きなことはもう伝えてるんだから、いまさら恥ずかしがることなんて、なにもないはずなんだけどね。

「それよりどうしたんだよ」

「ん? 何が?」

「いや何がって……起きてるかってメッセージくれたじゃないか」

「あ、そういえばそうだったね」

「なんだそりゃ」

文人の笑い聲が越しから聞こえて、自然と私の口角も持ち上がる。

「えっと……なんだっけ? 私の迷路の出口ってなんなのかなーって」

「なんだそりゃ」

「いやさ……たまに人間って出口のない迷宮に迷い込んだりするじゃん? そんで々迷ってるうちに、そもそも出口って何? ってならない?」

「ごめん、何の話してるか全くわからないんだけど……それってバスケの話なのか?」

「まぁ……私の場合はそうだね」

「たよりの場合?」

「そう……私の場合。文人の場合は……どうなんだろうね」

ちょっといじわるな質問になってしまったかな。二葉と私……どっちを選ぶの? なんて言う権利は私にはないし、勇気もない。きっといま答えをだされたら、私の敗北は濃厚だ。バスケでは速攻で先頭を走るタイプだけど、に関してはそうはいかない。練習と実踐不足なのが明らかだ。

「僕の場合って……本當になんの話だよ。たより大丈夫か? なんか様子がおかしいぞ」

「そうだね。今日はちょっとおかしいかも。だけど、大丈夫。試合後でちょっとテンションが上がってるだけだと思うから」

「なるほど……スポーツをやっていない人間からしたら分からない領域だけど、やっぱりあれだけ激しい試合をしたら、興がなかなか収まらないもんなんだな」

「そりゃそうだよ。一試合、一試合気合ってるからね。そのために毎日きつい練習してるわけだしさ」

「そうか。ありがとう。勉強になるよ」

「いやいや、そこで改まられても困っちゃうよ」

勉強になる。そうか……文人はバスのマネージャーになるって言ってたもんね。やると決めたら真摯に取り組む姿は、昔から変わらない。

「ねぇ文人……本気でバスのマネージャーになる気なの?」

「ああ。本気だぞ」

「そっか……」

ここで、私はまた迷宮に迷い込む。言うべきか、言わざるべきか……

文人はあのことを知っているのだろうか。もしかしたらもう二葉から聞いているのかもしれない。

これを聞いて文人の決意が揺らぐとも思えないけど、萬が一……がないとも言い切れない。

文人がマネージャーになってくれたら、一緒に過ごせる時間が増えるから……と私だけの事を考えたらきっと言うべきではない。

では……二葉の立場からしたらどうだろうか。

もし、私が二葉の立場だったら……伝えるだろうな……

「あのね、文人。一つ聞きたいこと……というか、確認したいことがあるんだけど……」

「うん?」

「二葉とは、まだ付き合ってないんだよね?」

「なっ……あ、あぁ。付き合ってない。この間も言っただろ?」

「まぁそうなんだけどさ。あれからし時間も経ってるし、どうなんだろうと思ってさ」

「そ、そっか……」

なんで付き合わないの? という質問を口にする勇気は流石になかった。それを聞いてしまうと、すべてが終わってしまう気がしたからだ。本當に臆病者だ。私は……

「じゃあさ……文人は……私たちが部活を引退するまで二葉と付き合う気はないの?」

「え? ……それってどういう意味だ?」

文人の聲に揺が走ったのが伝わってくる。それだけでほんのし私の心は沈んでしまう。別に尋問したいわけじゃないし、責めたいわけでもない。

ただ、これで確定した。文人はやっぱり知らないみたいだ。

うちの部が、【部活止】であることを……

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