《シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜》12月20日:Dress Up!

古戦場対策です(読者騎空士はこれを読むのでスタートダッシュに出遅れる高度なタクティクス)

実のところを言えば、「周囲に見せつけているサンラク」と「実際のサンラク」には結構なズレがある。

俺が使いこなしているように見える(・・・)數々の武もその実、ほとんどそのまま振り回しているに過ぎない。シャンフロにおいて真に使いこなすと言うにはやはりスキルあってこそだ。

見た目の派手さと意表しか突かないきで誤魔化してこそいるが、周囲に思わせている以上に俺の底は淺い。

「如何にユニークモンスターを撃破しまくりだろうと、仮に完全理に振り切っていようとプレイヤーとしてのスキルリソースは有限! ツチノコさん、あんたの事は対人掲示板で研究済みだぜ……!!」

ので、勝手に研究されてたのは正直キモいが遅かれ早かれ俺の手のの深くまで切り込んでくるやつが出るのは分かっていたっちゃあ分かっていた事だ。

「研究て、ボスモンスターじゃあるまいし……」

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「似たようなもんだろ」

ここじゃなくて法廷で毆り合っても構わんぜ俺は。

とはいえこのゲームにおいて対人要素は対モンスターに負けず劣らず盛り上がっているコンテンツであり、そこで研究対策を立ててここに來たと宣う「あかしゃ」なるプレイヤー。見たところ……剣士、か? これと言って特徴のない裝備だ。先程完全偽裝魔法使いと戦ったばかりなので見た目通りのものがお出しされるとは限らない。特にこちらを対策してきました、とわざわざ言うくらいだ……

警戒することに越したことはない。(相手が青聖杯で転換する)

こちらもある程度手札を切る覚悟を決めねば。(相手がさらにR.I.P.で黒裝に換裝)

よーし警戒の方向は対人勢じゃなくて「対バカ」だなこれ!!(ドルルン! とどう見てもチェーンソーを構える相手)

「はーっはぁ!見よこの黒き死に捧ぐ嘆き《レクィエスカト・イン・パーケ》!」

「……俺の知ってるやつとは隨分デザインが違うようだが」

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「ふっふっふ……ツチノコさんも知らなかったようだな……黒き死に捧ぐ嘆き《レクィエスカト・イン・パーケ》にはレアパターンがある!」

マジか、喪服一択だと思っていたが……いや違うな、喪服なのは共通してるけど喪服のデザインで違いがあるって事か。

「ちなみにこれ引き當てた時點でキャラメイクやり直して完全にこれに合わせた」

「思い切りが良すぎるだろ」

程、リヴァイアサンかベヒーモスでキャラメイクやり直せるくらいには既にやりこんでいる……と。別をわざわざ青聖杯で変えている辺り、クターニッドも通過済み。対人勢とのことだが普通にシャンフロの深いところに頭から突っ込んでるじゃねーかよ。

どうみてもゴスロリ(・・・・)な漆黒の裝をにまとってギャルンギャルンとチェーンソーを唸らせる姿はどう見ても出るゲームを間違えていますよとしか言いようがない……ファンタジーの”ファ”の字がかろうじて殘っているかどうか、ってくらいだろう。

「さて………」

とはいえ、チェーンソー……チェーンソーか………このゲームでチェーンソーがどういう挙するのか全く分からないぞ………いやチェーンソーとの戦闘経験そのものはなくもないけど、シャンフロというスキルで人外挙してナンボ、魔法で奇跡起こしまくってナンボの世界観でチェーンソー………この手の非ファンタジーな武でもリヴァイアサンとかで深堀すればスキル見つかってそうだし………

と、ここで俺は視界の端でなにやら観客とは言い難いきをしている影に気づいた。何故かそこだけ人が集まっていない……というか、ある一人をその他が避けているが故に空白が生まれているような…………

「あー……」

そこには、彫刻の如き均整の取れた多式をメイド服で著飾った男前が走った目でなにやらわちゃわちゃしている景が広がっていた…………リアルだったらもう既に警察呼ばれてるだろこれ。

とはいえエリュシオン・オートクチュールである。俺と奴との関係はビジネスライクなものではあるが、無関係というわけではない。そして俺はクライアント側であるのだが、奴の要を一つ聞かねばならない………

即ち。

『今しかない!!!!』

「あーはいはい………」

何が、を完全に省いたタイミングの指示だけが書き毆られた看板にほんのりと頭痛をじながらも、言いたいことは分かる。

例のアレ(・・・・)の能試験と、その宣伝をすること。よーいドンで斬りつけて結果を見るだけじゃわからない生の戦闘によるデータ収集。それに関しては俺もむところなのだから。

程ね、R.I.P.のレアパターン………いいものを見せてもらった。じゃあこっちもお禮をしないとな……」

「何……?」

「ただ変(・・)するだけじゃあ時代遅れだぜ」

インベントリアを作。この格納鍵インベントリアというやつはこのゲームにおける「こういうUIあったらいいな」が詰め込まれているので、例えば裝備プリセット(・・・・・・・)や一括裝備(・・・・)みたいなものも、インベントリアあるなしではその有無ではなく”質”が違う。

には著替鍵(ちゃくたいけん)ドレッセリアが備えていた機能をインベントリアにインストールしてアップグレードしたものだが………

「こういうのはやっぱ言うのがお約束だよな」

「何を……」

そりゃあもう。

「───変

違う自分になるための素敵ワード(おやくそく)だよ。

───時に話は変わるが、そもそも格納鍵インベントリアとはどういったものなのか。

ゲーム的に言ってしまえば、無限インベントリである。容量の上限が無く、何をトチ狂ったか格納できるの”大きさ”の上限もやたらに大きいので船すら手持ちで攜行できてしまうバカアイテムだ。まぁ流石に巨大すぎるものは展開に時間がかかるので(というかかかるようになった(・・・)ので)実戦で使うにはちょっと頭を使わないといけないが……

それはそれとして、だ。この格納鍵インベントリア、設定上はどういう理屈でモノを無限にしまっているかというと……どうもそのものをそのまんま格納空間に送っている、というわけではないらしい。々と気になって自稱インテリジェンスな征服人形(サイナ)だの、親そうで実はそうでもない船幽霊共(いさなとぞうげ)だのに聞いてみたが……要するに、質を「報」として格納空間に転送している、だそうで。

SFに現代知識でケチつけたところで「フィクションってご存じですか?」で論破されて終わりだが、質をギガバイトテラバイトならぬマギバイトに変えてストレージにアップロードします、とはまたトンデモ設定というほかない。というか格納空間に行ってる間、生學的には俺死んでないかそれ。

とはいえ、だ。格納鍵インベントリアが「報の質化」なるトンデモ奇跡を科學的に引き起こしているのはこの世界においてはどれだけぶっとんでいようがそういうものとして通っている。さらに「虛數質量」だの「偽裝量」だの【ライブラリ】だったら三日三晩熱く語りそうな設定の數々があるようだが………それを活用するとこんなこともできるらしい。

『DRESS-UP PROTOCOL:SET』

『REALITY-E(現実)XPANSION(拡張):START(開始)』

ひゅるん、とインベントリアから湧き出るように現れた"布"が、自ら意思を持つかのように広がり、さながらカーテンの如く俺を囲んで包み隠す。

「仮想現実(VR)の中で拡張現実(AR)ってのもよくわからん話だけど……」

そこに在ってそこに無いもの、実はなくとも俺の姿を隠す幻影(ホログラム)のカーテン。外からは、俺のシルエットだけが浮かび上がっているように見えるだろう……そういう風に設定したからな。

によって浮かび上がったシルエット、ほぼ無裝備狀態故に人間の郭ほぼそのまんまの影の中でこの一連の現象において設定された裝備が自で裝備されていく。個人的にはアクセサリーも自設定できるのが便利だ。

「デフォルト変バンクはもう古い(・・・・)」

俺のシルエットが味気のない人型から異なる形へと変わる。の中でシルエットが別の形に変わる、というもの自はR.I.P.の変バンクと似たようなものだが………こっちは”慎み深さ”が違う、著替えをカーテンで隠しているからな。

「時代の最先端はカスタム変バンクだぜ」

シルエットの変貌が完了した瞬間、ホログラムのカーテンが布から炎に変換される。炎の幕は渦となり、揺らぎ……そして開く。あたかも炎と化してなお、カーテンとしての役割を忘れてはいないかのように。そしてそれはもう一つの役割……めていたものをお披目(・・・・)することもまた、果たす。

「さぁやろうかゴスロリチェーンソー」

「メイド服……!?」

炎の幕が開き、霧散する。中にいた俺が一歩踏み出せば……それまでとは違う、ブーツが荒野をく踏みしめる音が響く。

エリュシオン・オートクチュール作、決闘級メイド服「千古不易」 。武裝はヴァイスアッシュ作、百足式8-0.5(タウゼント)。

不格好な棒にも見えるそれを肩に擔ぎ、人差し指であかしゃを指さし端的に告げる。

「巻きで行こう」

Q.言うてやってることは見掛け倒しですよね?

A.見掛け倒しがパワーになる世界だからネタに見えて世界観的には結構合理的、ウェザエモンが出陣する際にでかでかとリヴァイアサンのエンブレムを出すことでウェザエモンが無雙することで「同じ勢力」である人類にもバフをかける、みたいなのも考案されていたが、「これ逆に人類が不利になる程ウェザエモンも巻き添えで弱化しかねないな?」ということで卻下された。

滅茶苦茶簡単に原理を説明すると

「炎に包まれ、中から現れる演出」を相手に認識させることで「相手は炎に強いのだろう」という認識を植え付け、相手側の認識によって「相手には炎が効かない」という弱化を施す。みたいな

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