《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第4章 1963年 プラスマイナス0 - すべての始まり 〜 3 長の男(2)

3 長の男(2)

「それが、あんたの新しい戸籍謄本だ。もちろんそいつは生きちゃいない。ただ、その死に方がちょいと問題でね。そいつの地元には近づかないってのは當たり前だが、派手なことにも、あまり首を突っ込まない方がいいだろうな。この名井ってのに、息子を殺されちまった野郎が、憎っくきその名前を忘れるはずがないからね。まあこんなのは何十年も前のことだから、靜かに暮らしている分には問題ないと、思うけどな……」

広島のヤクザ抗爭が関東に飛び火。その煽りを食らって殺されたのが、関東で急長を遂げていた新興組織、荒井組組長の一人息子だったらしい。

「ちょうどけっこうな臺風が関東を直撃してな、広島から派遣されたそいつは、その日、多川をずいぶんと流されたって話だ。まあ結局、どこからも死はあがらなかったらしいから、この際、名井って奴になりきって生きてやれば、死んじまったそいつだって、きっとしは喜ぶんじゃないかね……?」

「ちょっと待ってくれ……そんな人の戸籍が、どうしてここにあるんだ?」

「どうして? その辺はさ、あんたが知ったからって意味はないだろう? どっちにしろ今のあんたは、その戸籍が必要に決まってるんだから。なあ、そうだろ?」

そこで剛志は我慢できずに、

「知ってるのか? 知っていて、あんたはこんなことを?」

ずっと頭にあった言葉をここぞとばかりに口にしてしまった。

ところが男は答えるどころか、

「さあ、これで話は終わった。さっさと降りてもらおうか……」

前を向いたままそう言って、いきなり車のエンジンをスタートさせる。

「ちょっと待ってくれって……せめて、あんたの名前を教えてくれないか?」

そう訴えても、男は前を見つめたまま微だにしない。

結果剛志は、それから一分もしないうちに車から一人降り立った。そして走り去る外車を見送りながら、謄本を戻そうと茶封筒を持ち変える。するとそこで初めて、まだ封筒に何かっていることに気がついた。逆さまにして二、三度振ると、薄汚れた名刺がストンと落ちる。

名井良明。たったそれだけ大きくあって、あとはなんにも書かれていない。

――いったい何が、どうなってるんだ?

そんな思いに支配され、剛志は暫しその場に立ち盡くした。

そうしてちょうど同じ頃、男の乗っていた外車がバスのロータリーに停車する。

男は車から降りると、最近設置された電話ボックスへ一直線に向かった。クリームのボディに赤い屋のボックスにって、十円玉をれると何も見ないままダイヤルを回す。

するとすぐに相手が出たらしく、男はを握ったまま頭を何度も下げるのだ。

そんな態度は剛志へのものとは大違い。よほど大事な相手であるのか、その言葉遣いもまるで別人のようだった。

「……はい、病院の方も問題なしです。いえ、元気いっぱいというじじゃないですが、それでも、それほど混している印象はなかったですね。はい……はい……わかりました。それでは、この後も予定通りで……」

そう言って、男はふた呼吸ほど待ってから、手にしていたをフックに置いた。

ポケットから煙草を取り出し、ダンヒルのライターで火をつける。そのまま煙をひと息吸い込んでから、男は味そうに白い煙を吐き出した。

そうしてようやく扉を押し開け、彼はその電話ボックスから出ていった。

    人が読んでいる<ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください