《スカイリア〜七つの迷宮と記憶を巡る旅〜》第218話 鉄槌
人の上半と四つ足の獣の下半。金屬のようにを反する不気味な沢を放つ表。獨特な雰囲気を発する怪、ゲーティアーが魔龍の頭部に陣取っていた。
魔龍の頭にこんな奴が取り付いていたなんて。
「お前か……。この大暴走の元兇は。魔龍を煽して街を襲わせたのは!」
フウカとカストールは凍った魔龍の頭の上で頭を抱え、苦しげにいている。
『人間の短記憶域をノイズで埋め盡くし、思考に割く余裕を奪っている』
『二人が苦しんでるのはそのせいか。俺は何でフウカ達みたいにならない?』
『知能力が鋭敏である程影響大。他に比べマスターへの影響はかなり抑えられているようだ』
『お前は平気なのか』
『この程度の報量を処理する事くらいわけはない。容は全く読み取れないけど』
俺がドドだから効かないってことか。今二人がじる痛みは想像を超える。だったらこいつをぶった斬って今すぐ二人を解放してやるだけだ。
「クレイル、使わせてもらうぜ」
ここまで飛んで來る前にクレイルからけ取った煉気水の栓を抜き、一息に飲み干す。煉気が全回復することはないが、しずつ力が戻ってくる覚がある。
Advertisement
「叛逆の弓、『アンチレイ』」
リベリオンを構え、ゲーティアーの頭部に照準を合わせる。
奴も同時に、こちらへ右の手のひらを突き出した。
トリガーを引く瞬間、の前面で響く高音と同時に何かが弾ける。
「か……っ」
まるでモンスターの突進をまともに食らったような衝撃に、が後方へと弾き飛ばされる。息が止まりかけるがなんとか踏ん張り勢を整え著地、すぐさま奴を回り込むようにして走り出す。
背後で高音が続けざまに鳴り響き、空間を伝って激しい振が背中を押す。
『任意の空間に衝撃波を発生させてる』
『この調子じゃ反撃どころじゃない。フウカ達の事も心配だ』
『マスター、ここは』
『わかってる。いくぞ』
「ソード・オブ・リベリオン——、『アトラクタブレード』」
リベリオンの形狀が組み代わり緑を帯びた剣の形態へ、柄から突き出した排気口から激しくが噴出する。輝く刀をゲーティアーに向け正眼に構える。
目の前で空間が立て続けに破裂するかのように弾け、高音が鼓を叩く。
Advertisement
『思った通りだ。あいつの使うの影響もこれなら打ち消せる』
アトラクタブレードの力の影響か、俺の頭に鳴り響く意味不明な雑音もなりを潛め、思考がクリアになる。
奴に向けて構えながらも急いでフウカの元へ駆け寄る。
『リベル! この力は空間にも作用してるんだろ。だったら影響範囲を拡大することだってできるはずだ』
『やってみる。アトラクタ・ブレード位相空間を定義。——反想子領域拡張』
リベリオンの刀を中心にして、球狀のごく薄い障壁が周囲に広がる。俺の周囲に広がった半明な球結界へフウカを収める。
「あ、ぐううううっ……! は、はぁ……はぁ……」
フウカの苦しげな様子が和らぐ。どうやら奴の見えない攻撃を遮斷できたらしい。
「フウカ!!」
「ナトリ……、ありがと。もう、大丈夫……」
「立てるか。このままカストールさんのとこまで行くぞ!」
「うん……!」
フウカを引き起こし、二人で苦しむカストールの元へ走る。
だが、あとしで辿り著くというところで、氷上に転がる彼のが弾け飛ぶ。ゲーティアーの空間攻撃か。
Advertisement
「ああっ!」
抵抗するどころではないカストールは、されるがまま衝撃波をけ続けた。
「ぐ、おおおおおあああああッ!!!!」
「カストールさんっ!!」
弾き飛ばされていくカストールのに手をばす。だがそれも空しく、彼はゲーティアーの衝撃波に撥ね飛ばされ魔龍の頭部から落下していった。
龍の首はガルガンティアので固められているが、頭を丸ごと凍らせた氷山はそれなりの高さがある。波導も使えない狀態でこんな高さから落ちたら。
「カストールっ!!」
彼を追って飛び出そうとするフウカの腕を摑み、制止する。アトラクタブレードの範囲から離すればフウカもまた行不能になってしまう。
「クソッ!!」
カストールを追うことを許す間もなく、俺たちへの攻撃が通用しないと見たゲーティアーが、右手の杖を天に向けて掲げる。
その先端から一筋の紫のが放たれ、魔龍の水流撃によって割れた空の天井の隙間から夜空へ向かう。
は上空に到達すると、きを変え空中に文様を描き始める。円を描き、その部に図形や文字のような印が次々と刻まれていく。
「なんだ……、あれは」
『なんらかの式を構築している。阻止すべき』
見た事も無いゲーティアーの魔法だ。かなりやばそうなじがする。
『あいつを斬れば止まるのか』
『おそらくは』
「許さない……」
「?!」
隣に立つフウカの瞳が緋の輝きを放っていた。そして、その輝きに呼応するように彼の背に緋に輝く翼が浮かび上がる。
フウカが浮かび上がり、アトラクタブレードの影響範囲から離する。
「くっ、うぅ……っ! ————はあぁっ!」
緋の翼により生された緋き球がゲーティアーを狙い次々と発される。は怪に直撃し、激しくと氷を散らし白煙を上げた。
だが著弾地點の煙幕が晴れるとそこには無傷の奴の姿がある。空間攻撃によりフウカの攻撃は防がれてしまったか。
「うぅっ……」
浮かんでいたフウカがよろよろと降下し、俺の隣へ降り立つ。やはりリベリオンの結界から出るとフウカには負擔が大きい。
「あんまり無茶するなよフウカ」
「ごめん……ナトリ。やっぱりうまく力が出せない。リベリオンの結界の外へ出ると、ゲーティアーの聲で頭が締め付けられるみたいになって、全然考え事とかできない」
「それで威力が出せないのか」
フウカの翼は頼もしくあるが、その反面どうしても王宮でのことを思い出してしまう。また暴走するのではないか。……いいや、絶対にそんな風にはさせない。
「一人で戦おうと思わなくていいんだフウカ。一緒にあいつを倒すぞ。……カストールさんのためにも」
「うん、そうだね……」
このアトラクタブレードがある限り、奴の攻撃はこちらに通らない。フウカの攻撃はこの距離では奴の空間攻撃によって威力が減衰する。
そして、今も上空に描き出される巨大な円陣の構築も阻止しなければいけない。
だったら、このまま領域を保持して程まで近づき今度は至近距離からフウカの全力の波導を見舞ってやるまでだ。
『フウカの有効程距離と、ゲーティアーの魔法発速度から有効打を放てる距離を算出した。約5メイルまで近づけば當てられる』
リベルが攻撃の通る間合いを教えてくれる。さすが俺の相棒だ。
「いくぞ!」
「うん!」
背後にフウカを庇うようにしてゲーティアーに向って直進する。前面で衝撃波が弾け、空間を激しく響かせるが、魔法による衝撃波は全てアトラクタブレードで”斬れ”る。
背後の緋の輝きが増し、フウカも移しながら力を貯めているのをじる。危機をじ取ったか、奴は右手に持つ長杖の先端をこちらへ向けた。その先端に見慣れぬ文様で描かれた空の図形に似た文字列が浮かび上がると、その中心から紫の線が放たれた。
「そんなの屆かないよ——、『隔壁(ウィオラス)』」
フウカが前面に展開した隔壁(ウィオラス)とゲーティアーの紫が衝突し激しく火花を散らす。放たれる魔法を避けながらも俺たちは距離を詰め、彼我の距離5メイルほどのところまで一気に到達した。
「ここまでくればっ! はぁぁっ!!」
俺と位置をれ替え、前面に出たフウカが翼の間に膨れ上がった緋の球を放つ。それはゲーティアーの線を食い破るように直進し、奴に著弾すると同時に発を引き起こした。
「グ、オオオォォォ……」
「やった……!」
朦々と立ち上る煙が晴れた後には、焦げ付いたゲーティアーの上半だけが殘され、苦悶のき聲を上げていた。おそらく空間攻撃とゲーティアー特有の紫の障壁によって、できる限りフウカの攻撃の威力を相殺しようとしたのだろう。
それにしたってフウカの攻撃はかなりの威力だ。魔龍の頭部に生えた何十本もの角、ゲーティアーの周囲のものはあらかた吹き飛んでいた。
息のを止めてやる。そう思いさらに奴に向って踏み込む。が、突然勢を崩した。思わず足踏みし、歩みが止まる。
地面が激しく揺れていた。魔龍が氷の拘束を解こうとしているのか。
「フウカ!」
「うんっ!」
ぐらつく足場ではろくに進めない。俺はフウカに手をばし、彼が俺の手を取る。フウカのが浮かび上がり、俺を連れて飛び始める。
「避けろっ!」
「っ!!」
急速な方向転換により、こちらに向ってきた攻撃を避ける。見上げれば無數の水弾が俺たちを目指して襲いかかろうとしていた。魔龍に水の制が戻り、水弾による攻撃が再開されていた。
「くうっ!」
フウカは宙を縦橫無盡に、障壁で水弾を防ぎながら飛び回る。厄介な事に魔龍の水弾はホーミングして俺たちを狙い続ける。撃ち落とさなければ止まらないらしい。
「フウカ! アトラクタブレードを一瞬解除する! しの間だけ耐えてくれっ!」
「わかった、頑張るからっ!」
『リベル!』
『私を侮るなよマスター。もう済んでるさ————、水弾及びゲーティアー、マルチロックオン、コンプリート』
剣の形態を解除、そして両手で杖の取っ手を握り、煉気を流し込む。
「叛逆の弓、『アンチレイ・フルバースト』」
リベリオンから放狀にの束が放たれる。青は俺たちに迫る全ての水弾を撃ち抜き、霧散させた。
「このまま、龍を、倒す!!」
直下、ゲーティアーの焼けこげた上半が転がる魔龍の額目指して急降下する。小癪にも奴はアンチレイをけてもまだ生きているようだ。だが、何かする前にカタをつける。
「叛逆の鉄槌、『リベリオン・オーバーリミット』」
掲げた右腕に分離したリベリオンが張り付き、白銀の小手となる。全をフィルが駆け巡り力が漲る。フウカの手を離し、空を蹴り付けゲーティアーへ向かって急降下する。奴の髭に覆われたような人面が、俺を憎々しげに見上げていた。
周囲の空間に存在するフィルを右手へと収束させ、拳に青い稲妻を纏わせる。空中で目一杯腕を引き、直下に迫ったゲーティアーの顔面に向けて拳を突き下ろす。
「吹き飛べ! 『イモータル・テンペスト』ッ!!」
高圧されたエネルギーの塊が拳により放たれ、龍の額、そしてゲーティアーの顔面で弾ける。衝撃が辺りを駆け抜け、ゲーティアーのはバラバラに砕け散り、音と共に魔龍の額が大きく陥沒する。
「クオオオオオオオオオオオォォォォォォッッッ!!!!!!」
「行け、フウカ!」
モンスターの絶が氷の空に響き渡る中、ゲーティアーの神汚染から解き放たれたフウカが翼に溜めたを解き放つ。
イモータル・テンペストで穿った魔龍の頭部にの柱が殺到し、氷の空は緋の輝きに染まった。
【書籍化】その亀、地上最強【コミカライズ】
ブルーノは八歳の頃、祭りの出店で一匹の亀を手に入れた。 その亀、アイビーはすくすくと成長し続け……一軒家よりも大きくなった。 ブルーノはアイビーが討伐されぬよう、自らを従魔師(テイマー)として登録し、アイビーと一緒に冒険者生活を始めることに。 昔のようにブルーノの肩に乗りたくて、サイズ調整までできるようになったアイビーは……実は最強だった。 「あ、あれどうみてもプラズマブレス……」 「なっ、回復魔法まで!?」 「おいおい、どうしてグリフォンが亀に従ってるんだ……」 アイビーによる亀無雙が今、始まる――。 5/28日間ハイファンタジー1位! 5/29日間総合3位! 5/31週間総合5位! 6/1週間総合3位! 6/2週間ハイファンタジー1位!週間総合2位! 6/14月間5位! 【皆様の応援のおかげで書籍化&コミカライズ決定致しました!本當にありがとうございます!】
8 198神様を拾った俺はイケメンになれるそうです
「あなたの特徴は何ですか?」 こう問われたことはないだろうか。 一般的には「背が高い」や「運動が好き」などと答えるのが妥當だろう だがそこには恥ずかし気もなくにこう答える奴がいた。 「イケメンです」 この話は、ひょんなことから神様を拾った主人公の工藤春樹がリアル顔面チートでのんびり?高校生活を送る物語です
8 154俺の得能は「平凡」だった。
この世界には1000人に一人「得能」を持つものが生まれる。 「得能」すなわち得する能力のことだ。サッカーが圧倒的に上手くなる得能や足がめちゃくちゃ速くなる得能、種類は様々だ。 その得能を所持して生まれてきたものは高校から得能を育成する學校、「得能育成學校」に行くことになる。 俺、白鳥伊織はその一人だった。だがしかし! 俺の得能は「平凡」であった。 この話は平凡な俺がある出來事で成長する話。
8 149俺の高校生活がラブコメ的な狀況になっている件
カクヨムコンテスト4參加作品! カクヨムの方でも感想やレビューお願いします! カクヨムで80000PV突破した作品の改稿版です 高校入學を前に両親は長期海外出張。 一人暮らしになるかと思いきや、出発當日の朝、父からとんでもないことを言われた。 それは…… 同い年の子と同居?!しかも女の子! ただえさえ、俺は中學の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。 とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。 これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
8 99仏舎利塔と青い手毬花
田舎ではないが、発展から取り殘された地方の街。 誰しもが口にしないキャンプ場での出來事。 同級生たちは忘れていなかった。 忘れてしまった者たちに、忘れられた者が現実に向って牙をむく。 不可解な同窓會。會場で語られる事実。そして、大量の不可解な死。 同級生だけではない。因果を紡いだ者たちが全員が思い出すまで、野に放たれた牙は止まらない。 ただ、自分を見つけてくれることを願っている。自分は”ここ”に居るのだと叫んでいる。誰に屆くでもない叫び聲。 そして、ただ1人の友人の娘に手紙を託すのだった。 手紙が全ての真実をさらけ出す時、本當の復讐が始まる。
8 124見た目は青年、心はアラサー、異世界に降り立つ! ~チートスキル「ストレージ」で異世界を満喫中~
交通事故で命を落とした中年「近衛海斗」は、女神様から大した説明もされないまま異世界に放り出された。 頼れるのは女神様から貰った三つの特典スキルだが、戦闘スキルが一つもない⁉ どうすればいいのかと途方に暮れるが、ある事に気付く。 「あれ? このストレージって、ただの収納魔法じゃなくね?」 異世界に放り出された海斗の運命やいかに! 初投稿となります。面白いと思っていただけたら、感想、フォロー、いいね等して頂けると大変勵みになります。 よろしくお願いいたします。 21.11.21 一章の誤字・脫字等の修正をしました。
8 108