《ロング・ロング・ラブ・ストーリーズ 4度目のさようなら that had occurred during the 172 years》第4章 1963年 プラスマイナス0 - すべての始まり 〜 4 二人の苦しみ

4 二人の苦しみ

「おい! そこで何をしている!?」

そんな警の聲が聞こえた時、剛志はすぐに智子のことを思ったのだ。だからマシンだけは二十年前に戻そうと決めて、一か八かの勝負に出た。

これを元の時代に返してしまえば、智子に戻ってくるチャンスが殘る。

あの時、彼もあの出來事を見ていたはずだ。だから無防備のまま出て行かないだろうし、男たちもまだ智子に気づいていなかった。後はあの連中が、消え去った剛志やマシンにどの程度興味を持つかだが、見ず知らずの庭園に長々居座るほど馬鹿ではないだろう。

となればマシンが戻った意味を理解して、さらに作方法を間違えたりしなければ、彼はもうとっくにこの時代に來ているはずだ。

だから今頃急に智子が現れて、あの辺りは大騒ぎになっている。そうなって心配なのは、あのマシンの存在が知られてしまうことだけだ。

――頼むぞ、誰も気づかないでいてくれよ……。

気づかれないうちにさっさと乗り込み、昭和五十八年に戻ったらすぐに百年後にでも送ってしまう。そう心に念じながら、剛志はあの林り口に立ったのだ。すると思った以上あちこちに、立ちり規制テープが張られている。これでり込もうとするならば、

――捕まえてくれって、言っているようなものだよな。

なんてことを素直に思った。

それから來た道をし引き返し、昔フラフラになって駆け込んだ一軒家を目指す。家はすぐ見つかって、あの時とは段違いの慎重さで敷地り込んだ。

ただ今回は、やたら広い庭には向かわずに、裏庭から林側の塀の方へ回り込む。それから以前も使ったテーブルに乗って、まんまと林の中に下り立った。

幸いそこに規制テープなどはなく、見回す限り人影も見えない。時計がないので正確にはわからないが、空のじから一、二時間で日沒というところだろう。

だから行けるところまでとにかく行って、あとは日沒をじっと待つ。暗くなってしまえば、きっとなんとかなると思うのだ。

腰を屈め抜き足差し足、剛志はあの空間目指し進んでいった。そして難なく、警に取り押さえられたところまで到著する。この先に広場のようなところがあって、警がうようよいるのがはっきりとわかる。剛志は腰をさらに下げ、両手をついて顔をグッと低くした。その勢のまま顔をゆっくり橫に向け、視線の先にある木のっこに手をばす。

人の腕くらいある大木のっこが、ちょっとした窪みを作っていたのだ。そこに腕まで突っ込んで、ゆっくり何かを引っ張り出した。

現れたのは、マシンで見つけた革袋。剛志は慌てて中を覗き見る。すると札束はちゃんとあって、フッと安堵の吐息をらすのだ。

あのマシンが戻ってなければ、彼はどうしたってこの時代で生きねばならない。こんな大金が置かれていた理由も気にはなるが、なんにせよ、とことんありがたい話には違いない。

あの時、彼はとっさにこれを隠して、萬一の時のために備えていたのだ。

それからブルゾンジャケットへ革袋を無理やり押し込み、そのままの勢でジッと待った。

しかしすぐに腕が疲れて、音を立てないように地べたにゴロンと橫になる。すると上を向いた彼の顔を、誰かが突然覗き込んだ。

當然剛志は驚いて、慌てて起き上がろうとするのだが、

くな! 今いたら見つかるぞ!」

力のこもった小さな聲で、男が肩を押さえてそう言った。

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