《【書籍化】誤解された『代わりの魔』は、國王から最初のと最後のを捧げられる》79 10年間 6
「えっ、ギルベルト宰相?」
まさかそんなはずはないわよね、と思いながらフェリクス様を見上げると、何とも微妙な表で見返された。
そのため、あの鉄仮面の文は実際にギルベルト宰相かもしれないと思う。
私は目を見開くと、今度はミレナを振り返ったけれど、彼は半眼になっていた。
「……ルピア様、愚兄がお目汚しをして申し訳ありません」
まあ、ミレナが兄と認めたわよ。
ということは、本の宰相なのかしら。
一どういうことなの、と思って見ていると、ギルベルト宰相(と思われる鉄仮面の文)は書類を握り締めて、部屋の隅に移した。
それから、これでもかとをこまらせて、頭を下げる。
これまでの宰相ならば、私の側に寄ってきて、何なりと聲を掛けてくれたのだけれど、と首を傾げていると、フェリクス様は疲れた聲を出した。
「ギルベルトは10年前からあの格好だ。おかげで、『鉄仮面宰相』と言えば、我が國の宰相だと、誰もが思うくらいには有名になった。それがいいことなのかは分からないが。しばらくすれば気が変わるだろうと、初めに放っておいた私も悪かったが、彼が真正の阿呆だということを失念していたのだ」
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「ええと、ギルベルト宰相はもしかして、顔を怪我したのかしら? そのために、顔を隠しているのかしら」
本人を目の前に質問することはマナー違反だと分かっていたけれど、どうしても尋ねずにはいられない。
けれど、フェリクス様は「さて」と首を傾げた。
「そんな話は聞いていないが、この10年の間、彼の顔を見ていないから、鼻が欠けていても、歯が全部抜けていても不思議はないな。まあ……々と言いたいことはあるが、仕事だけは問題なくこなしていたし、彼に求めるところはそこだから、後は興味がないこともあって放置していたというのが、これまでの経緯だな」
「……そうなのね」
私は鉄仮面を裝備したことがないから分からないけれど、重いし暑いだろうから、長時間被っているものではないはずだ。
にもかかわらず、10年もの間に付けているとしたら、そこには宰相にとって譲れない理由があるのだろう。
だとしたら、好きにさせてやるべきだわ、と思いながら宰相に向かって小さく頭を下げると、彼は目に見えてびくりとを跳ねさせた。
それから、全を震わせている。
「フェリクス様……」
もしかして宰相は調不良ではないかしら、と思って彼を見上げると、「気にするな」と言われ、あっさりと話題を変えられた。
そのため、私は初めて目にしたために驚いたけれど、皆にとっては日常の景で、だからこそ、特段珍しくもないことなのだと気付く。
そして、宰相が部屋の隅に行ったことから、彼は皆に注目してほしくないのかもしれないと思い至る。
そうであればと、私は意識的にギルベルト宰相から視線を外すと、フェリクス様とともに執務室の中をゆっくりと歩いて回った。
すると、文たちが頭を下げながらも、驚いた様子で私の顔を見つめてくる。
その視線は、庭を散歩した時に騎士たちから向けられたものと同じものだったため、困ったわねと眉を下げた。
なぜなら私が魔であることは、限られた者たちの間におけるのため、多くの者が私のことを29歳だと思って接してくるのだけど、実際には17歳でしかないからだ。
そのため、10年振りに姿を現した王妃は、王が側を離れずに獻的に面倒を見ていることからも、さぞ妖艶で魅的なだろうと期待していたところ……痩せっぽちの10代のが現れるのだから、誰もが驚いて、がっかりしているのだろう。
とは言っても、フェリクス様が王宮の中樞に配置するほどの人員なので、驚いた後にがっかりした表を浮かべる者は1人もおらず、全員が稱賛するかのような表を浮かべてくるのだけれど、そこまで気を遣わせることを申し訳なく思う。
そのため、フェリクス様の仕事の進捗がどうなっているのかを確認したら、すぐにお暇しようと考えながら、さり気なく部屋の中を見回した。
すると、ひときわ立派な彼の執務機が目にったのだけれど……私の予想に反して、その機の上にはわずかな書類が積まれているだけだった。
そのため、これほど私と一緒に多くの時間を過ごしているにもかかわらず、フェリクス様の仕事は本當に上手く回っているのねとびっくりして、私は目を丸くしたのだった。
その後、フェリクス様を執務室に殘して私室に戻った私は、ソファに座るとほぅと息を吐いた。
すかさず、聖獣姿のバドが面白そうな顔をして寄ってきたため、私はじろりと橫目で睨み付ける。
「バド、あなたはフェリクス様に魔のを話したわね。『目覚めた後に人らしい行を取らないと、人から外れたものになってしまう』と。おかげで、毎日、ものすごく食べさせられるようになって大変なのよ。それなのに、苦を言おうとした時は、どこかに消えていて、面白そうなことが起こったと思った途端に寄ってくるなんて」
私は全力で苦を言ったというのに、バドはちっとも反省した様子を見せることなく、ふさふさの尾をふわりと振った。
「それは當然の話だよね。怒られると分かっていたら逃げ出すに決まっているし、面白そうなことが起こったのなら、話を聞きたくなるものだろう?」
どうやら私の立派な聖獣様は、世俗的なを優先するタイプのようだ。
いいわ、好きなだけ面白がってちょうだい、とむくれていると、バドは満足した様子で私の隣に橫になった。
「いい傾向だね、ルピア。目覚めた時の君は、を半分くらいどこかに落としてきたのではないかと心配するほどだったが、今はだいぶ戻っているよ。フェリクスと彼の愉快な仲間たちは、意外なことにの起伏が激しかったからね。連中に付き合っていることで、君の緒も再び育ってきたんじゃないかな」
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