《【書籍化】生贄になった俺が、なぜか邪神を滅ぼしてしまった件【コミカライズ】》海水浴
照り返す日差しと雲一つない青空が広がっている。
細かい砂を踏みしめると足の裏にが伝わる。
周りを見渡すと、侍がテーブルを並べ、執事がバーベキューの準備をしている。
先に見える建はグロリザル王國が所有する別荘の一つだと聞いた。
現在、俺はグロリザル王國から北上した場所にある北海の浜辺にいる。
なぜこのような場所にいるかというと、険悪な同士を仲良くさせるならと、レオンに勧められたからだ。
先日のローラとアリスのやり取りを見ていた俺とアリシアとセレナは、こういう場所でならあの二人も仲良くできるのではないかと考えた。
アリシアにローラをわせたのだが、本人はそれほど乗り気ではなかった。それでもしぶしぶ了承してくれたのでほっとする。
彼が來なければ、わざわざこうして國を移した甲斐がないからな。
「王様方はもうしでいらっしゃるとのことです」
「はい、ありがとうございます」
伝言にきた侍に禮を言うと、俺は二人の距離をどうめさせるか考える。
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「どのも大変しく、英雄様は幸せ者ですね」
侍がからかうような言葉を口にする。
「いや、彼たちはそういう関係ではないですから」
現在、俺に関してあらゆる噂が広まっている。
特に、関係の噂が多いらしく、一緒に行しているアリスやローラが王族ということもあり、をかけて面白おかしく腳されているようだ。
「お待たせ、エルト」
そうこうしていると、セレナが現れた。
彼は葉っぱをモチーフにした緑の水著を著ていた。
「どう? 似合うかしら?」
その場でターンをすると銀髪が太のを浴びてキラキラと輝いた。
「ああ、凄く似合っているぞ」
「ふふふ、ありがとう。エルトも格好いいよ」
嬉しそうに頬を緩めるとセレナは俺の全を見る。
「それにしても、湯浴みをするときはなのに、水浴びをする時に服を著るって人族も変だよね?」
自分の水著を引っ張りながらセレナは首を傾げた。
「まあ、海水浴ってのは昔からそういうもんだからな」
當たり前のように多様なデザインの水著が売られているのだ。
「大昔はそういう文化もなかったみたいなんだがな、過去に偉大な発明家が突如現れて作ったらしいぞ」
様々な魔道を開発して生活をかにしてくれたのだが、その発明家が特に力を注いだのが娯楽だ。
現在でも一般大衆から貴族まで好んで遊ぶボードゲームやスポーツなど。服に至るまですべてその発明家の影響をけている。
「こんな小さな布なのに防力が優れてるし何より軽いなんてね。私この恰好で冒険しようかしら?」
発明家の執念なのか、水著には高度な魔法が付與されている。水際での行には水著は必須裝備となっていた。
「それは止めた方が良い」
セレナの肢から目を背ける。刺激が強くて目に毒だ。もし冒険の最中にセレナが視界にってきたらミスをする人間はなくないだろう。
「えー、こっちの方がきやすいのになぁ」
「本當に頼むから! いつもの裝備にしてくれっ!」
俺が必死に頼み込んでいると足音が聞こえた。
「お、おまたせしました」
次に現れたのはローラ。桃と白のフリルがつけられた水著を著ており、紫の花を髪に刺している。
「うう、なんでそんなに大きいのよ。ローブの上から薄々勘づいてたけどさ」
セレナは自分のを見てローラを見た。何やら絶的な戦力差を目にしたような顔をしている。
ローラはというと、所在なさそうなじで俯いている。顔が赤く、恥ずかしがっているように見える。
「似合っているな」
侍たちから口を酸っぱくして「とにかく全員の水著を褒めてください」と言われている。
「……どうもです」
ローラは短く返事をすると口元を浮きで隠しながらそっぽを向いた。
「ローラは泳げないのか?」
目に飛び込んできた浮きを見て、俺は疑問をぶつける。
「べ、別に泳げないわけでは……」
聞き方がまずかったのか、ローラは俯いてしまう。
「俺で良かったら泳ぎ方を教えようか?」
このまま気まずい思いをするのも嫌なので提案をしてみた。
「えっ? エルト様が教えてくださるのですか?」
意外そうな顔で俺を見た。
「川で泳ぐ程度だったからそんなにしっかり教えられないかもしれないが、それでよければ構わないぞ」
俺の言葉を聞き、彼はし考えると、
「そ、そこまでおっしゃるのでしたら……しだけ」
やはり泳げなかったらしい。恥ずかしいのか、顔を背けながら答えた。
「ああ、任せておけ」
返事をし、俺とローラは同時に笑った。
「それにしても、二人とも遅いわね」
ローラと打ち解けていると、セレナがアリスとアリシアの様子を気にしていた。
「ローラ。あの二人は?」
「……えっと、わからないです」
先日のことを引きずっているのか、気まずそうな表になった。
「まったく、こんな著替えに時間かかるなんて」
セレナが腰に手を當てると文句を言う。早く泳ぎに行きたいのかそわそわしているようだ。
三人で待っているとしばらくしてようやく二人が現れた。
「お待たせ。この子がなかなか進もうとしないから時間がかかって」
アリスはこれでもかという抜群のプロポーションを見せつけながら俺たちの前までくる。
彼は赤い花柄のビキニに、頭に赤い花を挿し、髪をまとめ上げていた。
俺は思わずアリスの水著姿に釘付けになってしまう。
「ア、アリス様! 押さないでくださいよ」
一方アリシアは、ローブでを覆い隠すと恥ずかしそうにしていた。
「まったく意気地がない。皆水著になってるんだからとっととぎなさいよ」
「だ、だって、こんな凄い水著だなんて聞いてなかったですよぉ」
顔を真っ赤にして抗議をするアリシア。一どのような水著を著ているのか気になる。
「のライバルだっているのにしり込みしている余裕があるの? いいからとっととぎなさいっ!」
「あっ、引っ張らないでくださいっ!」
二人がもみ合い、ローブがたなびくたびに隙間から水著がチラチラ見える。
鍛えているアリスに敵うはずもなく、抵抗していたアリシアは気が付けばローブをはぎとられていた。
「うううう、恥ずかしいよ」
せめてもの抵抗なのか手でを覆い隠そうとするアリシアだったが、小さな手ではすべてを隠すことは不可能。アリシアは青いビキニをに著け、黃い花を髪に刺していた。
「さて、本命の想を聞きましょうかね?」
アリスは誇らしげな顔をするとアリシアを俺の前に押し出した。
「へ、変だよね? こんなの?」
上目遣いに見上げてくるアリシア。恥ずかしさからか瞳が潤んでが赤くなっている。
「い、いや……」
一方、俺も顔が熱くなった。邪神の生贄になるまで一緒にいたアリシアだが、こんな格好を見たことがなかったからだ。
「ほら、エルト君。アリシアが想を待っているでしょ。それとも似合ってないと思ってるの?」
「そっ、そうなの⁉ エルト?」
アリスの言葉に反応してアリシアが不安そうな表で俺を見る。
「……に、似合ってるに決まってるだろ!」
勢いに任せてそう言うと、アリシアは俺から目を逸らし口元を緩めた。
「ふふーん、ほらやっぱりね。エルト君も心を奪われているみたいよ」
その言葉に俺はアリスを睨みつける。だが、現狀では言い返す言葉がないので俺は黙り込んでいた。
ふと俺は思い返す。そして改めてアリスの方を向く。
「な、何よ」
急に俺に見つめられたせいかたじろぐアリスに、
「アリスも水著似合ってるぞ」
「なっ⁉」
一人だけ褒めていなかったことを思い出し、俺は想を言った。
「それじゃあ、せっかく招待してもらったわけだしゆっくりしようか」
俺は手を叩くと皆にそう言った。
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