《【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~》2
フレドさんの目の中にある魔方陣について、フレドさんは自分で調べたり実験をするようになった。推測されるこの魔方陣の効果について考えると、人に知られたら貴族や國に確保されて利用される可能が高いので、報管理にはかなり気を付けているが。
ずっと煩わされてきた原因がこの目のせいなら、どうにかして、普通に生きたい、と言っていた。
解毒薬を見つけるにはその毒について調べなければならないように、まずその目について細かく解析している。本人は「実家に居た時に基礎的な知識を學んだだけだけど」と言っていたが、とてもそうは見えない。街で一番の本屋に取り寄せてもらった魔方陣の専門書のおかげ、というのはフレドさんらしい謙遜だろう。
なので、あれからほとんど毎日、フレドさんと一緒に私の錬金工房に通っている。工房での作業がない日は、使う素材を集めがてら琥珀と一緒に冒険者ギルドの依頼をけたりもするけど。
私もフレドさんの研究に協力したり、自分の研究対象である人工魔石について改良方法を模索したり、度の高い生活を送っていた。
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「俺の目、ここはパドゥナ跡の魔方陣の一部に似てるけど……そもそもこっちの跡の魔方陣もどういうものかまだ研究途中だからなぁ……効果を打ち消す方法を見つけ出すまで遠そうだ」
しかしフレドさんの研究は難航していた。無理もない、そもそも見た事も無い魔方陣なのだから。一応ちょっと似てる、とじる古代神聖式の魔方陣紋様はあるが、こっちもあまり報が殘ってない存在なのである。まれに跡などから発見されるくらいだ。
魔方陣は、魔道を作る際の魔導回路の元になった存在なので、優秀な錬金師であるコーネリアお姉様の研究室でなら資料があるかもしれないけど……。
あとは、古代神聖式の魔方陣紋様から生まれた「神聖新式」と呼ばれる魔方陣なら、現存している數はぐっと多くなる。けどこちらは現役の宗教施設で匿されて使われていたり、閲覧が制限されているものがほとんどで、やはり參照できるものというと限られてしまう。
法則を得るためのサンプル數が絶対的に足りないのだ。
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自分の目の拡大寫真と、數ない資料とを見比べていたフレドさんはまたため息を吐いた。
けれど、フレドさんが自分で調べ始めて新しく分かった事も多い。
「どんなに微かにでも、見えちゃってると影響が出る個には出ちゃうみたいなんだよね。けない黒い布とかで覆っとくと効かないんだけど、付きガラスとかすりガラスだと意味なくて。まぁ俺も顔隠そうとして付き眼鏡かけてた事あるけど、効果なかったしな……」
あの魔方陣の力は余程強いらしい。
でも、自分のだからと結構攻めた実験もしてるので、そこは心配だ。は大事にしてしいので、あまりに過激な事をしようとしていたら私が止めないと。
現在はこれが、目にしてしまうだけで効果が出る魔方陣だと仮定して……とにかく検証を繰り返していた。つまり、一番古典的で地道な……魔方陣を描いて、どこかに線を一本足したり、はたまた消したりして、そうしてどのように効果が変わるかを調べている。現在は解析の段階だ。ただ、古い魔方陣では線一本で効果が反転するような事もあるので、慎重に、だが。
魔方陣の効果を完全に打ち消す反証魔が作れたら一番安全なのだけど、これがどういった原理でこんな力を持つのか分からないので、それは無理な話だ。……そこまで完全に解明されるのは大分先の事になるだろうな。
しかし……そもそもこれは「魔方陣」と呼んでいいのだろうか。それすらも私には分からない。
だって、右目だけ、左目だけで見ると紋様はそれぞれ虹彩の四割ほどしか無いのに。普通の魔方陣なら、全から見て面積の一割も欠けていたら魔方陣が立しないのだが。フレドさんの目にある「これ」は、この狀態で一どうして発しているのか……。
分からない事だらけだ。
「う~ん……」
「この環境でこれ以上調べるのは、難しいと思うんです。あの……前にちょっと話したと思うんですけど姉が……國で一番とも呼ばれる錬金師なので。魔方陣についても私より詳しいですし、聞いてみましょうか」
現在家族とは全員険悪だと自覚はあるけど、錬金師として質問狀を送れば「聞いても何も教えてくれない」にはならないと思う。向こうもプロなので。
「いや……俺の方で、こういう古代……か神代か、大昔の魔関係の話に詳しい人に聞いてみるよ。錬金師の魔導回路と魔方陣だと、やっぱり専門違うし。実家の関係者なんだけど、エディ経由で意見を聞いてみようと思う」
「そんな……政爭が落ち著いたらしいとは言え、リスクを冒すべきではないですよ。フレドさんも前はそう言ってたじゃないですか」
ずっと困っていた事に、解決手段かもしれないものが見えて焦ってるのかもしれない。そう思った私は、フレドさんらしくないな、と思ってつい、そう尋ねてしまった。
言葉に詰まったような素振りを見せたフレドさんは目をウロウロさせて、観念したようにぽつりとつぶやいた。
「……俺がこの変な目の力を封じるか、無効化するか……その方法を早いとこ見つけ出したいのは、母親のせいなんだ」
「フレドさんの……お母様のため?」
「いや、ちがう。あの母親の『せい』なんだよ」
珍しく、強くそこを否定したフレドさんは言葉を続ける。
「多分あの人も、俺と同じ目を持ってるから」
「……え?」
たった一言だけなのに、衝撃的な話過ぎてなんて答えたらいいか分からない。フレドさんのお母様……一応、ミドガラントの……王妃という方になるのよね? それに、どうして母親の「せい」になるのかも、その目が持つ不思議な力を、多の無理を押してでも無効化する方法を探す理由になるのか。
分からないまま、フレドさんの次の言葉を待った。
「おかしいと思ってたんだ。振る舞いや言だけ見てたらとっくに幽閉されてるくらいの事を……俺が知ってる限り十八回はしてるんだけど。何故か、あの人に甘い奴らが父親含めて何人もいて……まともに罰せられた事も無いし……同じと言うか、多分俺より強いと思う」
見てる限り、フレドさんもからとても好かれる。その現場を何度も見てて「語に出て來る人みたいな話だな」と思うようなじなんだけど、それよりもすごいなんて。私は思わず息を呑んだ。
「エディには話したんだけどね。あの人も目のが同じ、この珍しいピンクだってのがきっかけ。証拠は何も無いけど……俺は確信してる」
弟さんの事を話す時にはじられた親への親のが一切じられない。フレドさんが自分のお母様の事を「あの人」と呼ぶ聲にがギュッとしてしまう。
でも、フレドさんがそんな態度を取るなんて絶対理由があるはず……。でも、そこを深く尋ねる勇気は出なかった。
「……あの人は、俺と逆におかしくなる人を喜んでけれてたと言うか……その異常な執著を利用してた。質の悪い我儘を無理矢理通して……今でも周りにそうやって迷をかけて生きてるのも聞いたんだ。この変な力のある目をどうにか使えなくしないと……」
「で、でも、そんなのフレドさんの責任では」
「いや、逃げて、全部押し付けてきた俺の責任だよ。こうして原因っぽいものが見つけられたのはリアナちゃん達と出會えたおかげだけど……だから、この目をどうにかする方法はなるべく早くに突き止めたい」
フレドさんがリスクを冒してでも、その目が持つ不思議な力を出來るだけ早くどうにかしたいと思う理由は分かった。
を詰めすぎてるようにも見えたのは、やはり私の気にしすぎではなかったようだ、エディさんには後で相談しておこう。
「俺も実験行き詰ってたし、もう今日はこの辺にして帰ろうかな~」
「そ、うですね……私も、明日は遠出する予定ですし、今日は帰って休息に宛てたいと思います」
自分の母親の事を話しながら、冷たい目をしていたフレドさんがぱっと表を戻す。私はそれに安心してしまって、「お母様の話はまた違うタイミングで聞こう」と飲み込んでしまった。
そう、今日は予想外の話を聞いたし、さらに深い話は分けた方が良いだろう。だって、話してる時フレドさんもつらそうな顔、してたし……。
明日は琥珀と二回目の泊りがけの依頼があるのだ、怪我の元になりかねない、頭を切り替えて今日は休もう。今回も野営はしないが、二泊するので用意しなければならない荷も多い。それも、宿屋ではなく宿泊施設として利用できる教會の巡禮室を借りる予定なので、自分達でやらなければならない事も増える。部屋を退室する時に掃除するとか、他にも部屋を使う時の規則が々。
寢床は提供してもらえるが、食事は自分で用意する必要があるので、三日分の食料も持って行かなければだし。
自分でも無理矢理別の事を考えてるとは分かっている。
どうにかする方法が見つかったら、フレドさんはどうするつもりなんですかって。私はそれを聞くのが怖くて、とうとうその日は聞けなかった。
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