《【書籍化】隻眼・隻腕・隻腳の魔師~森の小屋に籠っていたら早2000年。気づけば魔神と呼ばれていた。僕はただ魔の探求をしたいだけなのに~》18

「エインズ殿、止めてください。別に私は責めていません、むしろ謝しています。私含めここにいる皆を、そしてエリアスの住民をあの『次代の明星』から守ってくれたことに心からお禮申し上げる」

深々と頭を下げるアラベッタ。

「あれ? 怒っていないのですか? そうですか、それならよかった。アラベッタ様、後になってやっぱり弁償させるとか言ってきてもだめですからね」

「安心してください、エインズ様。このソフィアが言質を取りました」

アラベッタたちの迫とした空気と正反対にあっけらかんとしたエインズの様子に思わず吹き出してしまうアラベッタ。

「ふふふ。その様子だと、本當に無事に終わったようですね」

「ええ、まあ。逃げていってしまいましたけど」

「十分です、エインズ殿。『次代の明星』のそのトップの顔をこの目に焼き付けられたのですから。これ以上の収穫はありません」

アラベッタの後ろで、不安にを寄せ合っていた使用人たちも狀況の整理ができたようで顔のこわばりも解けた。

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「タリッジ殿も、謝する」

頭の後ろで腕を組んでいたタリッジは眠気も隨分と覚めたようで、目をはっきりと開けていた。

「別になにもしてねえから謝はいらねえよ。それよか眠気が覚めちまったせいで小腹が空いた、なんか食いもん貰えねえか?」

「タリッジ……、貴様というやつは」

大きく腹を鳴らすタリッジに呆れかえるソフィア。

それを、エインズとアラベッタは顔を見合わせながら笑ったのだった。

「ダリアス様……、あつい、です……」

「なんだルベルメル、もうへばっているのか?」

「だって、もう……、全があつくて……。頭もぼーっとしています。……はぁ」

けないやつだ。それよりも僕はこの窮屈さが堪らない。し、キツすぎやしないか?」

「そうですか? はぁ……、ダリアス様だって、この方が嬉しいくせに」

「いいや、広い方が良いに決まっているだろう。全然がほぐれないじゃないか」

「それだと料金が高すぎるのですよ。はぁ……」

一仕事を終えたダリアスとルベルメルは、エリアスを離れ今はキルクへ戻る道中の浴場で汗を流している最中だった。

湯けむりに視界がはっきりしない中、二人は狹い一つの浴槽に浸かっていた。

ルベルメルらの生活における費用は『次代の明星』から支給されている。途中、稼いだ金銭もあるが、それでも渡された金銭でやり繰りをしなければならず節約すべきところでは節約を徹底していた。

「ここはケチるところではないだろう。臨時収もあったんだ、ゆったり湯に浸かって疲れを取ったほうがいいだろうが」

「いいえ、汚れを洗い落とすためでございますダリアス様。疲れはベッドで寢て取るものですよ。……もっとも、私とベッドが一緒だとダリアス様は休まらないかもしれませんが」

ルベルメルは熱い湯に頬を赤らめながら「ふふ……」と小さく笑う。

それを鬱陶しそうに舌打ちするダリアス。

「決めた、今日は絶対に二部屋取るからな。寢る間際までお前の顔を見るのが憎たらしい」

「そんな寂しいこと言わないでください、ダリアス様。……それともダリアス様、寢込みを襲う方が好きなのですか?」

ルベルメルは湯の熱さにとうとう我慢ができなくなったようで、浴槽から出て椅子に座って火照った頬を手で扇ぐ。

「あー……、そうだな。たしかにそうだ。だから二部屋取って、僕がお前の部屋に行くのを待っていてくれ」

対して湯加減が平気なダリアスは思ってもないことを並べて、一人部屋でのんびり寢たいがためにルベルメルに二部屋取らせる魂膽だ。

しかし、熱さで頭が回っていないルベルメルはそんなことに気づいておらず嬉しそうに頬を緩めた。

「そうですか、そうですか。ダリアス様も、私で慣れてしまうと後が退屈にじて大変になってしまいますよ? ……うふふ、そうとなればしっかりとを洗わなければいけませんね」

に走る蛇のような模様、服を著ていた時には一切見えなかったルベルメル専用の魔法式痕を堂々ダリアスに見せながら再度浴槽にった。

「おい、やっと多は広く湯に浸かれると思ったのに戻ってくるな。それに、慣れるもなにも僕はお前に何もやっていないだろう」

元は貴族の分だったダリアスだ。食に関しても酒に関しても舌はえている。當然、においても多くの令嬢を目にしているのだ、目もえてしまっている。彼にだって好みがあり、當然相手も選ぶ。

浴場においてはこうしてルベルメルとの付き合いをしてしまっているが、だからといってダリアスはルベルメルと男の関係を持ったことはない。

「ダリアス様はないでしょうけれども……」

ルベルメルは狹い浴槽の中でダリアスの腕にくっつき、そのらかい著させる。

「お、おい! ただでさえ狹いんだ、くっつくな」

必死に抵抗するダリアスのを押さえ、ルベルメルはダリアスの耳に口を近づけてっぽく囁く。

「ダリアス様の快楽に歪む寢顔……、かわいかったですよ……」

「お、おおお前! 何をして……、本當にナニをしているんだ! くそっ、いいから離れろ!」

「うふふ、ダリアス様ったら……。るならもっと優しくってください、もしくは痛めつけるつもりならもうし強く」

バシャバシャと激しく湯が波打ちながら浴槽からこぼれていく。

そんな中、ルベルメルが右耳にしていたイヤリングが激しくる。

「っ! なんだこの

「おやこれは……。いつぶりですか」

眩しさに目を閉じてしまうダリアスを橫に、冷靜に狀況を理解しているルベルメル。

そんな二人がった狹い浴槽に、大きく音を立ててもう一人飛び込んできた。

「急になんだ! おい、ルベルメルどうなっている!」

「落ち著いて下さいダリアス様。敵の襲撃ではありませんよ」

激しいが落ち著いたルベルメルのイヤリング。湯の中から息苦しそうにが勢いよく顔を出してきた。

「ぷはあぁ! ゲホッ、ゲホッ。くっそ、水飲んじまったじゃないか。どうしてこんなところに出てしまったんだ?」

浴槽の湯を飲んでしまいむせる

「お久しぶりです、リディア様」

むせて咳をするリディアを冷靜に見やるルベルメル。彼の耳についた、激しいを放ったイヤリングはリディアの耳にもまったく同じものがついていた。

ハイファンタジーの新作を投稿いたしました。

年のでございます。

タイトル

『竜騎士 キール=リウヴェール』

https://ncode.syosetu.com/n6657ia/

ぜひ気分転換がてらにお読みいただけたらと思います。

今後ともよろしくお願いいたします。

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