《【書籍化】白の平民魔法使い【第十部前編更新開始】》取材対象 -ヴァルフト・ランドレイト-

「あなた……腕の調子は?」

「お、グレースちゃん心配してくれてんの?」

「ええ。當たり前でしょう。」

「お、おおう……あんだよ調子狂うな……。ま、流石にもう慣れたわ。何か義手ってのが出來るらしいからそれ試してみるつもりだ。元の腕の代わりたあいかねえだろうけど、ちょっとはましになんならありがてえな」

「そ……よかったわね。それじゃああなたの調子もあるでしょうし、始めるわよ」

「おう」

――彼の第一印象は?

「ただの馬鹿。普通やろうとしねえだろ。もしかしたら才能があるかも、とかじゃなくて才能が無いってわかって魔法使いになろうなんてよ。

でも嫌いじゃなかったよああいう馬鹿は。積極的に関わろうとまでは思わなかったけどよ」

――では知り合ったのは?

「あー……友達(だち)って意味で知り合ったのはガザスの留學じゃねえかな。それより前に実技棟でばったり會った事はあったんだけど知り合ったってじじゃなかったからな。一方的に俺が絡んで終わりみてえな?

學生の頃は俺もあいつも魔法儀式(リチュア)しまくってたからな。でもあいつとは一度もやってなかった……今思えば、俺様は無意識にあいつに何かじるものがあったのかもしんねえな……」

――あなたの世代のガザスの留學といえば首都シャファクの襲撃事件が連想されますね。

「くはは……だろうな。當時の俺様はその時にあいつに敵わねえって打ちのめされたもんだよ」

――苦い思い出ですか?

「ある意味な……俺はあそこで壁を知った。俺はこいつらみてえにはなれねえって。

あの時あそこにいたのは未曾有の怪。権力や常識なんか全部吹っ飛ばすような暴の化けだった。大袈裟に誇張してるみたいに聞こえるかもしれねえが……誓って誇張なんてしてねえ。そんでその化けに真っ向から立ち向かっていったあいつと俺様の違いがよくわかった日でもあった」

――ベラルタを卒業した"生き殘り"であるあなたが言うと謙遜に聞こえますが。

「くははは! 俺様が謙遜ってまじで言ってんか? 俺様はあいつらより弱いって認めたが……それでも腐って諦めたわけじゃねえ。考えてみりゃ頂點に辿り著かなきゃ何もできないなんて事はねえんだ。

……むしろ視野が広がったよ。あいつらより弱かろうがなんだろうが、自分のやる事は何かに繋げられるんだってわかったからな。弱いやつが何もできねえなんて事は絶対にねえ。そう考えさせてくれたきっかけだよあいつは……あの日の経験が無かったら左腕が食われた事ももうちょいショックだったかもな」

――失禮しました。あなたにとってもいい経験だったのですね。

「だな。そりゃあいつのやった事は魔法使いなら誰でも憧れるような偉業かもしれねえけど、それでも自分にできる事ってのも捨てたもんじゃねえよ。グレースちゃんが今こうしてこんなインタビューしてるみたいにな?」

……こほん。

――それでは最後の質問になりますが……もし彼と再會できたら何と聲を掛けますか?

「あん? 再會できたらって……あんだその質問?」

――何と聲を掛けますか?

「あー……そうだなぁ。とりあえず一発毆りてえ」

――暴力はいけませんよ。

「いいだろ別に。あいつにとっちゃ俺なんかただの同級生だったかもしんねえけど俺にとっては友達(だち)だからな。それに気持ちはわかんだろ?」

…………お答え頂きありがとうございます。

ではこれで以上となります。今日はありがとうございました。

「なあなあグレースちゃんもちょっとはわかんだろ? 言っちゃえよグレースちゃん、俺しか聞いてねえんだからさ」

「黙りなさいヴァルフト・ランドレイト。口をい合わせるわよ」

「くははははは! 久しぶりに聞いたわそれ! あいつの話といい……何か學生の頃に戻ったみてえだな。くははは……懐かしいなぁおい……本當に、懐かしいねぇ……」

いつも読んでくださってありがとうございます。

一區切り恒例の閑話かつちょっと未來のお話。

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