《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》草と魔力回復薬

父上とクリスの打ち合わせが終わった數日後、二人は帝都に向かって出発した。

皇后様と皇様にリンスと化粧水を獻上するためだ。

開発者が僕であることは伏せて、クリスティ商會とバルディア領の共同開発ということにするらしい。

ちなみに、今回の化粧品類に関してはクリスティ商會がほぼすべてを仕切ることになった。

なので、僕がすることは今後ほとんどない。

原料となるアロエ栽培やオリーブ栽培についてはバルディア領が行い、それをクリスティ商會が原料の仕れとして優先的に買い上げて、加工、生産、梱包を行う。

輸送、販売、納品、アフターサービスはクリスティ商會と代理店として手を結んだサフロン商會が行う。

化粧品類の販売と製作権利はリッドにあるので、クリスティ商會から該當商品の売上金額の一部が僕の資金となる。

レシピを作提供したのは僕だし、無許可使用で罰せられるブランドロゴとして貴族紋章を提供しているからね。

貴族っていいよね。

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クリスからは権利について、やんわり取り過ぎ的なことを言われたが、「でも、クリスとサフロン商會で當分は市場を獨占するから大丈夫でしょ。いまが一番高く売れるのに、安売りしちゃ駄目でしょ」って言ったら、大きなため息を吐いていた。

なので、化粧品類についてはとりあえず、僕の手を離れた。

空いた時間で僕は、次なる商品開発に取り組む予定だ。

次なる商品、それは「魔力回復薬」だ。

この薬は早急に完させなければならない。

何故なら、母上の魔力枯渇癥の薬になるからだ。

完治は出來ないけど、特効薬が出來るまでの繋ぎにはなる。

だから気合れて取り組み始めたのだが、困ったことに薬學の知識なんてない。

原料を手にれても加工できない狀態だ。

「一応、このまま食べてもしは効果があるみたいだけど、さすがにこれをこのまま母上に食べさせられないよな……」

クリスからもらった後、すぐに魔法を使って意図的に魔力を減らしてから草を食べた。

すると、わずかだか回復した気がしないでもなかった。

でも、このまま食べるのは草の味、というかえぐみが強くてさすがにつらい。

まぁ、いざとなれば母上に無理やり食べてもらうしかないけど。

まだしだけ猶予がありそうだから、早く何とかしたい。

悩んだ末に、僕はこの世界の薬學に詳しい人を紹介してほしいとガルンに聞いてみたら、予想外の答えが返って來た。

「薬學ですか? それでしたら、家庭教師のサンドラ様に伺ってみては? 彼は優れた魔法使いですが薬學にも通しております。彼はどちらかと言えば本來、研究を主としている魔法使いですからね」

「え? それならなんで、僕の家庭教師を引きけたの?」

ガルンは僕の言葉にハッとして口元を手で押さえていた。

どうやら、彼の立場からすれば失言だったようだ。

僕が當然それを見過ごすはずがない。

純真な笑みをしつつ、心は真っ黒な顔をしてガルンを問い詰めるのであった。

ガルンは「私としたことが……」と呟いてから、大きなため息を吐いた。

すると、観念したのか教えてくれた。

サンドラは元々、帝都の研究所に勤めていたそうなのだが中々果が出ない狀況が続いてしまった。

さらに、サンドラのことを好ましく思っていない貴族の圧力により予算も削られてしまい、まともに研究が出來ない狀況に陥ってしまった。

その時に、父上がサンドラに息子である僕の家庭教師を打診したらしい。

サンドラも結果を出せなかったこと、そして貴族とのやり取りにも辟易したのでバルディア領に來ることを決めたらしい。

「僕がサンドラ先生って言った時に喜んでいたのって、帝都であんまり扱いが良くなかったせいなのかな?」

だが、どんな研究にせよ薬學に詳しい魔法使いが近にいるのであればこれを使わない手はない。僕は早速、サンドラを頼ることにした。

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