《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》クリスと二人で応接室(2)

「リッド様、取りしてすいませんでした……」

クリスの聲はもう震えていない。

にもここまで來るのに様々な苦労があったのだろう。

それが、実家のサフロン商會でもし遂げることが出來なかった皇族への販売ルート開拓など、話しているうちに々思い出して極まったのだろう。

「いやいや、大丈夫だよ。クリスのいつもと違う可い姿を見ることが出來たしね」

「なっ……⁉」

クリスはし落ち込んだ様子を見られたのが恥ずかしかったのか、顔が赤い。

泣くことは誰でもあるから気にしなくていいのに。

そう思っていると、応接室のドアがノックされる。

返事をすると「失禮します」と室する。

頼んでいた紅茶のお代わりを持ってきてくれた。

カップごと換すると彼は応接室を退室した。

その間にクリスの顔の赤さは引いていた。

僕は咳払いをすると、話の続きを開始した。

「ローラン伯爵の件は今後も帝都を含めて様子見でいいかな?」

「はい。今回の件でローラン伯爵は帝都で立場を失っています。ローラン派と言いましょうか。彼らは利権や甘いを吸いたい連中ですが當分強く出ることはできないでしょう」

「ローラン派……はは、父上が険しい顔をしそうな派閥だ」

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僕はクリスの命名派閥に笑ってしまった。

「次は、皇后陛下の納品優先契約……か」

まさか、皇后陛下が化粧水とリンスをここまで囲い込みに來るとは思わなかった。

「これ、1カ月分を毎月納品するってことだよね? 數量的に大丈夫? リンスの原料となる油は父上にお願いすれば良いと思うけど、アロエ栽培が始まったばかりだよね?」

リンスを作る際に必要な油はオリーブから取れる。

だから、父上に話を通せば數量は確保できるだろう。

だが問題はアロエだ。

あれは栽培が始まったばかりで原料がまだない。

本來であれば小出しの予定だったのだ。

「ふふ、それについては事前に対策しております」

クリスの顔に不敵な笑みが浮かんでいた。

は詳しい説明をしてくれた。

アロエに関してはまだ栽培ではまかなえない。

そこで、彼は自分の商會とサフロン商會の商流をフル活用して、アロエ栽培をしてくれる農家を探して、一定以上の価格で毎月買い取る定期契約。

ほかにも、野生に生えているアロエを各國の冒険者ギルドに収穫を依頼。

他にも様々方法でアロエを買い漁っているという。

「恐ろしく手が早いね……本當にクリスは頼りになるよ」

「アロエは今後、市場価値が跳ね上がるでしょうから、今のうちに買い占めますよ。あと、出來るところは可能な限り最長期間で定期契約をしています。金額の見直しは必要になるでしょうが、さえあれば商品は作れますから」

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このことがわかっていて先回りしていたということか、商魂逞しすぎる。

「ただ、それでもしばらくは皇后陛下に納品する分で手一杯になりそうで、市場に出回るのはなくなりそうです」

「そっか。でも、クリスは広告塔でもあるから、皇后陛下の次に優先して數量確保してね。クリスほどの人は滅多にいないから絶対、皆しがるよ」

「…‼ リッド様はご自分の発言をもうし考えたほうが良いかと……」

クリスは急に顔を真っ赤にして俯いてしまった。

どうしたのだろう?

「うん? 考えているよ? クリスは滅多にいない人だから、リンスや化粧水を使えばより綺麗になるでしょ? そんなクリスに誰でもなりたいって絶対思うよ」

「うう…そうですね。私やバルディア家の皆さんでしい方は優先するように致します…」

まだクリスの顔は赤いままだ。

「クリス大丈夫? まだ疲れが取れてない?」

「い、いえ‼ だ、大丈夫です。えーと、それより、そう‼ しの間、皇后陛下と私達の分のみで市場分が滯りそうとお伝えした件です」

僕の言葉を聞いてクリスが強引に次の話題に移した。

本人も大丈夫って言っているからいいかな?

「うん。市場分は殘念だけどしょうがないね。原料確保が出來次第だね」

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「そうですね。でも、皇后陛下だけがしばらく使った商品が、市場に通常通り出回るとなればかなりの人気になります。価格設定を多上げてもいけるかもしれません。怪我の功名になりそうですね」

確かに、人と言うのは不思議なもので、手にらないを手にれたくなる。

皇后陛下だけが用出來ていた商品が市場に出回ればさぞかし人気が出そうだ。

だが、クリスの考えはまだ先を進んでいた。

「アロエ化粧水と言っていますが、これも品名を変えましょう。マグノリアでは原料が一部の貴族に知られましたが他國にはまだ伝わっていません。品名を変えれば、帝都以外では原料はわからないと思いますから」

すごい、まだ原料が足りない狀況なのにもう他國への展開を考えている。

本當の商売人っていうのは常に次を見ているのだなと心してしまった。

だけど、商品名か。

その時、思いついた。

「……化粧水名はクリスティでいこう」

「へ?」

僕が出した商品名を聞いてクリスが珍しくとぼけた聲を出す。

「リ、リッド様⁉ なんでよりよって、私の名前を⁉ 皇后陛下のお名前を頂戴すればいいじゃないですか‼」

は自分の名前が使われるとは思わなかったのだろう。

顔を真っ赤にしてすごい剣幕で拒否してきた。

でも譲るつもりはない。

「それはクリスティ商會が売り出す商品だし、広告塔になるクリスの貌もあるから絶対インパクトあるよ。それに、クリスティ商會の名前も広がるしね」

「で、ですが……」

クリスはまさか自分の名前が商品名になるなんて思ってもみなかった。

商品名変更については自分が言い出したことなので引くに引けない。

それに、リッドが言っていることもあながち間違っていない。

恐らくこの商品は、世界中に広がるだろう。

その商品名が商會の名前であれば、自的に世界中にクリスティ商會の名前が広がるはずだ。

おそらく実家のサフロン商會より。

當然、名前が売れればクリスティ商會と取引したい顧客が現れる。

こちらから取引を持ち掛けるのも優位に進められる。

考えれば考えるほど、メリットが大きい。

デメリットがあるとすれば自分の名前があちこちから聞こえてくるようになるぐらいか。

クリスが悩んでいるとリッドが鶴の一聲をあげる。

「皇后陛下の名前は恐れ多くて使えないからね。化粧水名はクリスティで決定ね」

「うう…… 承知…しました」

クリスはがっくりと項垂れる。だが、衝撃はまだ終わらない。

「次はリンス名ね」

「へ…?」

「化粧水名だけ「クリスティ」でリンスも名前を考えないとね」

「ちょっと待ってください。化粧水はわかりますが、リンスはリンスでいいのでは?」

リッドはクリスの質問にし首を傾げたあと「ああ‼」と聲をだした。

「そうか。言ってなかったかもしれないね。リンスっていうのはあくまで、品目っていうのかな? 商品全の事になるから、今後の為にも「化粧水 クリスティ」みたいに名前を付けないとね」

「……それは、初耳です。リンスという言葉は商品そのではなく、品目なのですか?」

クリスはリッドの言っている意味がよくわからなかった。

品目とは品の種類を表す言葉だ。

現狀、この世界にはオリーブで作ったリンスしかないのに、リンスが品目とはどういうことだろうか?

リッドはクリスが怪訝な顔をしていたことに気付き「あ~」とし間の抜けた聲を出してからクリスに説明した。

「リンスってさ、別にオリーブの油じゃなくても作れるから、今後は研究してんな種類が作れるよ。」

「へ? ……ええ‼」

クリスは驚愕した。

オリーブの油でなくても作れる。

つまり、リンスの基本的な作り方はオリーブリンスと一緒で油さえ変えればまた違う香りや効果があるものが作れる。

だから、リッドの言っていた「リンスは品目で名前じゃない」ということになる。

つまり、販売と並行して商品開発を続ける。

そして、高品質なリンスを作り販売を続ければ、このリンスと言う品目については常に世界のトップを走ることも可能だ。

つまり自分たちは商會ではなく工房。

作って売る立場にもなったということだ。

しかもまったく新しい市場が作られる世界で。

クリスが驚愕しているとリッドはさらに付け加える。

「言っておくけど、化粧水もリンスと同じで品目だからね?」

「……リッド様は本當に常識では測れませんね……」

「へ?」

リンスだけでなく化粧水も同様に商品開発と販売を平行すれば、常に売り続けることが出來る。

末恐ろしい商品もあったものだと、クリスは改めて化粧水とリンスの可能に慄いた。

「……リンスと化粧水が品目ということは理解できました。クリスティ商會で新たなリンスと化粧水を開発する工房も検討しないといけませんね」

「うん、よろしくお願いするね。それで、リンスの名前だけどクリスを手伝ってくれたエマの名前をれて、「リンス・クリスティ・エマ」でどう? 新商品が出來た時は「エマ」の部分を変更すれば良いと思う」

リッドはにこにこ顔でクリスに思いついた商品名を伝えた。

クリスはもはや諦め顔である。

(エマ、ごめんね)と心の中で呟き、首を縦に振った。

こうしてこの世界に新たな商品が誕生した。

「化粧水・クリスティ」と「リンス・クリスティ・エマ」この二つの商品は數年で世界中の達を虜にするのだが、それはまた別のお話。

応接室でリッドとクリスが話し合いをして大分時間がたった。

それだけ、帝都でのやりとりした報は多いのだ。

「あとは、納品が來月からになりますので、今月中には契約に基づいて帝都よりマチルダ様の名義でクリスティ商會に金がありますが、リッド様の分の金額はいかがしましょう?」

「うーん、その分はクリスティ商會の中で僕名義にして保管は可能かな? 多分、今後も々お願いすると思うから」

半分本當で半分噓だ。

恐らく今後も何かしら頼むことは多い、だからクリスティ商會で預かっておいてもらったほうが良い。

あとの半分は將來の為の保険だ。

まだまだ、僕の將來はどうなるかわからない。

「わかりました。通常であればおけしませんけど、リッド様は特別ですからね」

クリスは苦笑しながら、僕の無理を了承してくれた。

ただ、金額が多くなりすぎた時は相談させてほしいとだけ言われた。

すべての話し合いが終わり、ようやく認識のり合わせと確認が終わった。

その時、あともう一個伝えないといけないことを思い出した。

「そういえば、クリスはレナルーテと取引したことある?」

「レナルーテですか? あそこは他國からの商會にはかなり厳しいので、取引はほぼないですね。それがどうかしたのですか?」

僕はクリスに婚姻などのことは伏せて、近々レナルーテに行くのでその時に商流を作りたいことを伝えた。

「わかりました。準備はしておきますので、日程が決まり次第教えて下さい」

「ありがとう。また連絡するね」

さえいれば必ずレナルーテと商流が作れる。

そうすればまた出來ることが広がるはずだ。

僕は期待に心を躍らせた。

「ふぅ、大こんなじかな」

「そうですね。私も必要なことはご報告出來たと思います。あと、皇后陛下と直接取引が出來るようになりましたので、リッド様も必要なことがありましたら私を通して皇后陛下にご連絡できますよ」

クリスは苦笑しながらいつでも手紙を送れると言うが、僕は恐々としながら返事をする。

「皇后陛下ね、クリスが寢言でうなされるほどの相手だから、よほどのことがない限りはお近づきになりたくないなぁ」

僕は昨日のクリスの様子を思い出していた。

あれだけ、うなされるなんて、よっぽどの相手に違いない。

僕は腕をくみ、目を閉じながら「うんうん」と首を縦に振った。

その様子を見ていたクリスは、リッドの言葉にある違和を抱き、怪訝で険悪な表をして、鋭く指摘する。

「……リッド様、どうして私が寢言で皇后陛下のことを言ったとご存じなのですか……?」

「え? それは、クリスが寢ているときに……あ」

その瞬間、クリスの顔がにっこり笑顔になる。

だが、メルや母上と同じように「オォォ…」とどす黒いオーラが膨れ上がっていく。

笑顔だが目は怒りに満ち満ちている。

「バチッ」と音がしたかと思うと、彼の髪を止めていた髪留めが外れた。

クリスの髪が怒りに呼応するよう、逆立って広がり宙に漂っている。

怒りの姿は、今まで見たの中で一番怖いと思う。

「ク、クリス? わ、わざとじゃない……つい悪戯心で…」

ちゃんと説明すればクリスはわかってくれたかも知れない。

だが、気圧された僕は、もはや自分が何を言っているのか理解をしていなかった。

「ふふふ…認めるのですね?」

「うぅ…み、認めます」

僕が「認めます」と言った時から、クリスの目からが消えて彼は俯いて震えていた。

「ク、クリス?」

僕が聲をかけたその時、クリスは顔を真っ赤にして僕を睨んだ。

そして、怒りと恥ずかしさが混じった様子で言った。

の寢顔を、こっそり覗き見るなんて最低です‼」

僕に吐き捨てるように言うとクリスは勢いよくその場で立ち上がった。

その勢いが機に伝わり、機の上に置いてあったティーカップがこぼれて僕の服を濡らした。

クリスはその勢いのまま顔を真っ赤にして応接室を後にした。

「……クリスに悪いことしたな」

僕は暫し呆然としてクリスが出て行ったドアを眺めていた。

そして、我に返ると紅茶で濡れてしまった服に気付いた。

「これ、どうしよう。ダナエに著替えをお願いしようかな……」

僕はすぐに応接室の中からダナエを指定してタオルと著替えを頼んだ。

応接室に來たダナエは僕の姿を見ると「……何があったのですか?」と怪訝な表を浮かべた。

「クリスにね……この間の悪戯がバレてちょっと……ね」と伝えたらダナエはサーっと冷めたい顔になった。

ダナエはタオルを僕に渡しながら冷たい笑顔で呟いた。

「リッド様、因果応報ですね」

ちょっと泣きそうだった……

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!

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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。

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