「リッド様、もっと私のきをよく見て下さい‼」

「……‼　クッ‼」

言われた言葉に反応しながらルーベンスの手、足、目線など一挙一をじながら必死に彼の木剣による斬撃を躱す。

しかし、木剣を躱すと今度は蹴りが來たり、直接つかもうとしてきたり何でもありだ。

いま、屋敷の訓練場で僕にルーベンスは稽古をつけてくれている。

當然、手加減はしてくれるが彼は僕が集中して躱せるギリギリの所を攻めてくる。

だから、訓練中は集中を切ってしまうと大けがに繋がりかねない。

そんな、激しいきだった。

しかし、さすがにこれだけのきをしているとすぐに息が上がってくる。

そんなタイミングを見計らって彼は休憩をれてくれる。

「リッド様、休憩にしましょう」

「ハァ…ハァハァ……きつーい‼」

「休憩」できを止めるとその場で汚れるのもいとわず、仰向けで大の字に寢転んだ。

彼はそんな僕の様子を微笑んで見ている。

「でも、リッド様はやっぱりすごいですよ。その年齢であれだけのきが出來れば十分です。あとは経験を積めば、どんな相手でもある程度の対処は出來そうですね」

「そう？　ハァ…ハァ…ありがと……」

返事をするのも億劫だ。

何せ、ずっと集中して相手のきを見続けなければならないので、かなり大変だ。

さらに最近だと、痛みに慣れる訓練も追加されている。

ルーベンスに笑顔で「仰向けに寢転んで下さい」と言われた通りにしたあと、初めて腹に重しを落とされた時は「グホッ」と腹を抱えて悶絶してしまった。

子供にすることじゃない、とこの時ばかりは思った。

だけど、「これも立派な訓練ですから」とルーベンスはどこ吹く風だった。

それでも、何度かするうちその訓練にもが慣れてきた。

でも、ここまでのきが出來るのもリッドの能力が高いおかげだろう。

改めてそのハイスペック、天賦の才とも言うべきか、ともかく謝しかない。

そんなこと思っていると、ルーベンスがおもむろに興味深いこと呟いた。

「ふむ、リッド様なら魔力による強化の訓練をそろそろしても良いかもしれませんね」

「魔力による強化……⁉」

僕は仰向けの狀態からむくりと起き上がり、先ほどまでの疲れを忘れて目をキラキラらせて彼を見つめた。

魔力による「強化」なんてものがこの世界にあったとは知らなかった。

前世の記憶にもそんなものはない。

サンドラからも聞いたことも無かった。

実は自分でも試してみたことはあるが、うまくいかなかった。

魔力とがうまく馴染まず、ただ魔力を垂れ流すだけで終わってしまったので一旦諦めたのだ。

そんな、僕のキラキラした目にルーベンスはし引いた顔をしていたが咳払いをして説明をしてくれた。

魔力による強化が扱えるようになる條件は主に二つ。

①魔力変換が扱えること

②一定以上の武を扱えること

魔力変換はわかるが「武」とはどういうことだろうか？

免許皆伝的なものだろうか？

説明を聞いて怪訝な顔している僕にルーベンスは説明を続けた。

「武という言い方をしましたが、要はのかし方をどれだけ知しているかですね。魔力だけをに纏っても、のかし方を知していない限り魔力による強化は発できません」

僕はルーベンスの話を興味深げな顔で聞いている。

なるほど、だから以前、自分でやった時は強化がうまく発しなかったわけか。

あの時はまだ、ここまで激しくをかすことができなかった。

でも、気になることもあるので質問をすることにした。

「うーん。でも、魔法に必要なのは魔力とイメージだよね？　なら、強くなるをイメージすれば強化は出來そうだけど？　それじゃ駄目なの？」

「はい。強くなるイメージだと漠然すぎるので発には至りません。それに、強化には魔法の発に必要なイメージを無意識に近い形で継続しないといけないからです」

なんだって‼　無意識で常に発しないといけない？

かなりレベルが高そうだけど、そんなこと可能なのだろうか？

僕が難しい顔しているのを見て彼はさらに説明を進めた。

「無意識と言っていますが、ようは覚的なものですね。全に魔力を流しながらのきと魔力が連していくイメージと覚を摑むのです。ただこれを會得する為には、自分ののきが把握出來ることが大前提ですね。自分のがどうくのか把握も出來ていなければ、魔力がついてきませんから」

「うーん。つまり、の連続するきの把握と予測。そして、連続するきの判斷が無意識レベルに出來ないと、魔力がに付いて來ないじなのかな？」

「恐らく、難しく言うとそんなじかもしれませんね。でも私たち騎士は、魔力を考えるよりじろ、と言われますね」

なるほど、確かにその通りかもしれない。

魔法だと型を作って、イメージを完させれば無詠唱魔法が使えるようになる。

強化は無詠唱で使うのが前提だから、この場合は型となるのきがある程度完してないと魔力があっても発が出來ないということだろう。

能力についてもある程度の完が求められるならサンドラは使えないのはしょうがないかも知れない。

彼は研究ばかりしていたと言っていたから、恐らく能力はそんなに高くない気がする。

多分。

思慮深い顔で考えていると「パン」と手を叩く音が聞こえた。

「ささ、考えるのはここまでにして、強化の特訓をしてみましょう。使えるようになれば、恐らくリッド様に敵う同年代は早々いないはずですよ」

ルーベンスが楽しそうに微笑んでいる。

同年代で僕に敵う相手がいないか。

ちょっと、心が擽られる。

よし、とりあえず頑張ってみよう。

「わかった。どうすればいいの？」

「まずは魔力を全に巡らせてひたすら、訓練場を周回します。魔力とのきが同期してくると通常のきでは、ほとんど息があがることはありません。まず、その覚を摑みましょう‼」

「訓練場をひたすら走る……ね」

ルーベンスは強化を會得する方法を最後はどや顔で教えてくれた。

だが、々聞いたことをまとめると、僕が強化を覚える方法の第一印象は「スポ」だった。

しかし、彼の一言に、ちょっと気になったことがあるので質問する。

「ルーベンスの説明にのきと同期すると息があがることがないって言っていたけど、それって普段から僕の訓練でも使っていたの？」

「あ、気付きました？」

彼は悪戯な笑みを浮かべていた。

道理でいつも長時間の訓練しても彼は息があがらないわけだ。

かたやスタミナが半無盡蔵。

対してこちらはスタミナが有限。

そんな狀態で訓練してもルーベンスには勝てるはずもない。

そう思うと、今まで必死に彼に勝とうとしていたことが、実はアンフェアで理不盡な稽古だったような気がしてきて、悔しさが押し寄せてきた。

この時、僕の中にある反骨心と負けん気に火が付いた。

「ふ、ふふふふ……」

「り、リッド様？」

僕は不敵な笑みを浮かべ、母親譲りの黒いオーラを「オォォ……」と出し始める。

「……強化を使えるようになったらルーベンスを必ず倒すからね？」

彼は僕の言葉が意外だったのか、さも楽しそうに挑発的な「どや顔」をして僕に言った。

「出來るのであれば、是非してください……」

その言葉を吐いたことを絶対に後悔させてやると心に誓った。

訓練を開始すると早速、魔力を全に纏うイメージで訓練場を走った。

最初は今まで通りと変わらなかったが、しばらく走り込むと魔力が全に行き渡っているそんな覚が巡りはじめた。

すると、それからは息が楽になりいくら走っても息も切れず、疲れにくくなった。

ルーベンスにそのことを話すと目を丸くして驚いていた。

「覚を摑むのが、早過ぎます……」

「そうなの？　でも僕はサンドラと魔法の練習はかなりしているから、それも関係あるのじゃない？」

正直、武よりも魔法を優先して訓練はしていた。

その話をすると彼は「なるほど」と納得していた様子だった。

「確かに、リッド様は魔法もちゃんとした講師の指導のもとけていますから、強化の上達は早いかもしれませんね。魔武両道とは羨ましいです」

「ちゃんとした講師」という言葉にサンドラが當てはまるのだろうか？　と疑問に思ってしまうが、指導は適切だと思うからそういうことにしておこう。

でも、魔法が使えて武が使えるのは普通ではないのかな？

気になったのでこれも質問してみた。

「いま、魔武両道って言ったけど騎士団の人たちは違うの？」

「いえ、騎士団に所屬しているものは全員、魔法と強化を使えます。ただ、魔武両道というのは、どちらも一定以上の実力も持った者に使う言葉です」

僕はそんな言葉があるのだと「へー」と返事をした。魔武両道か、魔法と武があるこの世界ならではの言葉だと心した。

「リッド様はいながらもすでに魔法と武をその一定以上を超えています。今も同年代どころか１０歳前後では相手にならないでしょう」

「そこまではないでしょ？　まぁ、相手がルーベンスしかいないからわかんないけど……」

「今まで強化無しで、私の訓練に対応出來ている時點で凄いのですよ。まぁ、いずれお判りになると思います」

僕が不思議そうな顔をしているのを見て、ルーベンスはずっと楽しそうに微笑んでいた。

「では、次の訓練に行きましょう。次はその狀態で全力疾走してください」

「うん。わかった」

こうして、この日は強化の基礎訓練ということで魔力をに張り巡らしながら走り込み、全力疾走、腕立て、腹筋など基礎訓練を続けた。

強化が発出來ていると全然疲れない。

訓練はあっという間に終わってしまった。

次からは強化をしながら、ルーベンスと打ち合うことになった。

僕はこの日から打倒ルーベンスを掲げて、強化の練習と基礎魔力量増加のために毎日、早朝に走り込みをするようになったのであった。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます！

もし、しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。

評価ポイントは作者のモチベーションに直結しております！

頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。

これからもどうぞよろしくお願いします。