《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》レナルーテに向けて
「母上、調はどうでしょうか?」
「ええ、以前と比べるとかなり良いわ。魔力が抜けていく覚はありますが、それも薬のおかげで何とかなっているわ。ねえ、サンドラ」
母上は僕の答えに返事をすると、微笑みながら傍に立っていたサンドラに聲をかけた。
「はい。私の魔力測定による數値確認を行い、薬の投與量を日々調整しておりますのでご安心ください」
普段の僕とのやりとりでは想像できないほど、禮儀正しいサンドラ。
これぞ、貓を被っているというじだな。
「……リッド様? 何かまた失禮なことを考えていませんか?」
「いやいや。何にもないよ?」
相変わらず鋭い勘を発揮する彼に僕の顔はし引きつった。
母上はそんな僕と彼のやりとりを見て楽しそうに微笑んでいる。
母上が発作を起こして、九死に一生を得たあの日から、サンドラは母上の主治醫のような立場になっていた。
というのも、魔力枯渇癥は魔力が抜け出ていずれ生命力を奪う癥狀だから、普通の醫療では対応できない。
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むしろ魔力研究に攜わってきた彼が適任者となったわけだ。
それに彼は僕が開発した「魔力測定」も伝授しているので使える。
これによって、母上の魔力數値を日々記録して薬の分量、さらに癥狀の進行合などを調べている。
魔力回復薬については母上が完治するまでは外部に報は出さない。
これは父上、僕、サンドラで決めたことだ。
母上の発作が起きてからは一刻も早く魔力枯渇癥を改善できる薬を完させたいと、僕はより考えるようになった。
そして、完すれば同じように魔力枯渇癥で苦しんでいる人達を救うことも出來る。
僕は気づくと考えに耽っていた。
「リッド? どうかしたの? とても険しい顔をしているわ……」
母上は僕の顔の頬に片手をあてながら、心配そうな目で僕を見ていた。
「いえ、すいません。ちょっと考え事していました」
「そう? ならよいのだけど……」
返事と合わせて、にこりと笑顔を母上に見せた。
母上は僕の言葉にぎこちなさをじている様子だったが、そこにサンドラが助け船を出してくれた。
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「リッド様、ライナー様の所に行かなくて大丈夫なのですか?」
「あ、もうそんな時間だね。母上、僕は父上のところにいってきますね」
「そう、ライナーにもよろしく伝えてね」
「はい」
僕は母上に一禮すると、部屋から出た。
そして、そのまま父上の部屋に向かった。
今日、母上の様子をサンドラと見に行く前に執事のガルンから、父上の伝言で執務室に來るようにと言われていた。
なんの話だろうか?
武訓練が足りてないとかじゃないだろうし。
父上が武訓練に膽力を鍛えると稱して參加してきたときは本當に驚いた。
父上がサーベルを振り回して襲ってくる訓練は絶対、父上が楽しんでいる気がしてならない。
々考えながら足を進めていると、父上の居る執務室の前まで來てしまった。
僕は「ふぅ~」と深呼吸をするとドアをノックする。
すぐ父上より「れ」と返事があり「失禮します」と執務室に室した。
父上は執務室の作業機で書類仕事をしていた。
室した僕に目をやると、椅子の背もたれによりかかり書類仕事の手を止めた。
「來たか。そこに座りなさい」
「では、失禮します」
父上が座りなさいと言った、いつものソファーに僕は腰を下ろした。
父上も機から立ち上がると、機を挾んで正面のソファーに腰を下ろす。
そして、父上はおもむろに言った。
「ガルンから聞いた。ナナリーのところに行っていたそうだな。容態はどうだった? 會いに行きたいが中々にお前の姫様のことで忙しいのだ」
「母上はお元気でしたよ。サンドラのおかげで容態も安定しているようですしね」
僕の言葉を聞いて、父上はし安心したようでしほっとした顔をしている。
「それで、今日はどうされたのですか? ガルンから父上がお呼びと伺ったのですが……」
「うむ、その件だがレナルーテに行く日程が決まった」
「……畏まりました」
やっぱりその件か。
僕がレナルーテに行きたいと言ってから結構、時間がかかっていたみたいだけどようやく行くことが出來る。
あの國は薬草栽培や農業技が高い。
魔力回復薬の原料となる「月草」には一つ大きな課題があった。
それは、栽培が出來ておらず領地で量産できていない。
普通の栽培方法とは何か違うのか、まだ功していない。
現狀ではクリスの商會頼みとなっている。
これが、魔力回復薬を発表出來ない理由の一つだ。
その為、僕はレナルーテとの商流と流のパイプを太くしなければならないとじていた。
そして、恐らく魔力枯渇癥の治療薬の原料となる薬草の報もあるはずだ。
日程が決まったと聞いて様々な考えが浮かんでいた。
だが、父上はし険しい顔をしてから言った。
「だが、予想通り油斷はできん。レナルーテ側も何か企んでいるようだしな……」
「……と申しますと?」
僕は父上の言葉に怪訝な表して聞き返した。
何か企む?
仮にも隣國で姫の結婚相手の候補者に何をしようというのだろう?
父上はため息を吐いてからやれやれといった様子で言った。
「はぁ……レナルーテも一枚巖ではないということだ。エリアス國王は友好的に進めようとしているようだな。だが、家臣の一部から皇族の皇子とまず縁談をしてから、辺境伯の息子というのが筋だろうとごねているようだ」
父上は苦笑しながら言った。どの國でも國政治での駆け引きはあるということだろう。
「では、その一部の家臣団が何かしてくると?」
「その可能はあるな。さすがに暗殺など過激なことはしてこないだろうが、さしずめお前を候補者から落でもさせようと畫策するのではないか?」
なるほど。
僕が候補者として相応しくないとなれば、皇族の皇子を縁談の場に引っ張りだせると考えているのかもしれない。
恐らく、ごねている家臣団は約に不満がある一派なのだろう。
屬國という立場であってもしでも、國として立場を対等にしたいという思いはわからなくはない。
だが行き過ぎると危険な香りがする。
とそこまで考えてある疑問が浮かんだ。
「……父上は、何故そのような報を?」
「言ったであろう? 一枚巖の國などないということだ。それに、表の報だけしか集められないようでは、國はおろか領地など守れんということだ」
父上は恐ろしいことをさも當たり前のように言っている。
つまり、レナルーテ側にはなからず政治報をこちらに流す協力者がいる。
そして、帝國もしくは父上が管理でもしている諜報機関か何かでもあるのだろう。
僕の考えていることを察したのか父上は意地の悪い顔をして言った。
「まぁ、その辺はおいおい教えてやろう」
「……お手らかにお願いします」
僕は父上の意地の悪そうな顔に、し青ざめていた。
対する父上はそんな僕の様子が楽しそうな雰囲気が出ていた。
どうやら父上は僕が困った顔をするのが好きなようだ。
そんな、やりとりに心の中でため息をつくと、僕は気持ちを切り替え打ち合わせに臨んだ。
その後、レナルーテに行くための打ち合わせは遅くまで続いた。
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