《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》魔法とサンドラの助言
「魔力って圧すると、どうなるの?」
「……今度は何を考えているのですか? リッド様」
今日はサンドラから攻撃魔法についての授業をけていた。
先日、父上からレナルーテに行く日程が決まったと話があった。
そして、レナルーテの一部の派閥がどうやら僕を婚姻候補者から落とす為の策を考えていると、報が父上にあったらしい。
そこで、武、魔法、マナー等を出発前に一通り確認しておくべき、という判斷にいたった。
そして、今日は攻撃魔法というわけだ。
だが、攻撃魔法に関しては自主練している。
何度かサンドラに見せたが問題ないと太鼓判をもらっている。
それなら、攻撃魔法をもっと効率的かつ威力を出す方法を考えてみようと思い立った。
そこでサンドラにも意見を求めているわけなのだが、彼は怪訝な顔をして僕を見ながら言った。
「……魔力を圧するという発想なんてしたことないですね。聞いたこともないですから、試した人はいないのではないでしょうか? そもそも、どうやって圧するおつもりですか?」
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「そっか。じゃあサンドラ監修のもとに実験していいかな?」
「はぁ……まぁ、私も興味がありますからやってみましょう。でも、危険だと思ったら魔法をすぐ止める。それが無理なら空に向かって魔法を撃ってくださいね?」
サンドラは呆れつつも好奇心には負けたようで、僕の実験に付き合ってくれることになった。
早速、訓練場の魔法や弓用の的からし離れた位置に立つと、魔力を練り始める。
するとサンドラから待ったがかかった。
「リッド様、今回は実験で私も監修するので魔法名を言ってくださいね」
「えぇー…」
まぁ、どんな魔法を使うかわからないとサンドラも監修する意味がないか。
そう思い、改めて魔力変換をして魔力を練る。
まずはサンドラに見せる意味も含めて通常通りに撃ってみる。
「火槍」
魔法名を呟くと、先端が尖った文字通り槍となった火が的めがけて真っすぐ飛んでいき的に命中した。
まぁ、こんなもんだよね。
そう思っているとサンドラが聲をかけてきた。
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「あれが圧ですか? いつもと変わりませんね」
「いや、普通に撃っただけだよ。比較するために通常版を先に見せようと思って」
「なるほど。では、次が本番ですね」
聲をかけてきたサンドラは、期待外れと言ったじで目のが消えかけていた。
だが、僕が今の魔法は通常版と伝えると目に再度、期待のが生まれた。
本當に魔法好きだよなぁと、彼に対して思いつつ、僕は気を取り直して再度、魔力を練り始めた。
そして、的に向かって拳にした手を差し出してから唱える。
「火槍」
しかし、今度はすぐに撃たない。
唱えはしたが「火槍」として発されるはずだった魔力は今、僕の拳の中で外に出ようと渦巻いている。
その、渦巻く魔力を僕は拳に力をれ握り潰す。
つまり圧する。
そして、拳の中で渦巻いている「火槍」にさらに魔力を注する。
すると、「火槍」は外に出ようとする力がどんどん強くなる。
僕はその力を抑えつけるように拳をさらに力強く握り締めて圧する。
もちろん、魔力注はやめない。
そして、手の中で反発する力が強くなり抑えられないとなった時、僕は直した。
「これは危険だ‼」
拳の中で渦巻く魔法の威力に危機を抱いた僕は、拳を空に向かって突き出して再度、魔法名を唱えた。
「火槍‼」
その瞬間、凄まじく重い轟音があたりに鳴り響いた。
そして、同時に自分よりも巨大な火の塊が空に向かって一直線に轟音を引き連れて飛んでいった。
先端は槍のごとく尖っており、その魔法は特徴からも「火槍」であることは間違いない。
だが、規模が普段と桁違いだ。
やがて、火槍は空の彼方に飛んでいき見えなくなった。
「……」
僕とサンドラは言葉を失い、二人して呆気に取られ火槍が飛んで行った空を眺めていた。
そして、サンドラがおもむろに言った。
「……圧魔法は當分止です」
「……うん。そうする」
僕とサンドラは珍しく意見があった。
それからし茫然としたが二人で圧魔法について検証を開始した。
「恐らくですが、あの魔法は今までの攻撃魔法を本から覆してしまうかもしれませんね」
「そこまで大袈裟なものかな?」
サンドラがいきなり騒なことを言い始めた。
本から覆すとはどういう意味だろうか。
僕の怪訝な顔をみると彼は「はぁ」とため息をついてから説明を開始した。
「今まで、攻撃魔法と言われるものは、①魔力変換で魔力を練る ②イメージを固める ③発 と言う流れでした。この際、①で魔法の規模が決まります。そして、これが重要ですが、當然①の魔力が大きくなればなるほど、②の工程が難しくなります」
「つまり、大規模な攻撃魔法になればなるほど、魔力と的なイメージが必要になるということだよね?」
「はい。その通りです」
でも、さっきも同じ流れで発したじがするけど違うのだろうか?
うーん。
と僕が不思議な顔しているのを見ると彼は説明を続けた。
「先ほどリッド様が行った手順ですが、①魔力変換で魔力を練る ②イメージを固める ③発(留める) ④魔力注 ⑤魔力圧(発を留める) ⑥ ④~⑤を繰り返したのち発 重要なのは今まで①で行おうとしていた部分を④と⑤繰り返すことにより、簡略化してしまったことです」
なるほど、今まで大規模な攻撃魔法に必要だったのは、魔力と的なイメージ。
この二つを都度するのは習得も含めて大変だ。
でも僕がした方法であれば、サンドラに教えてもらった「ファイヤーボール」でもさっきの「火槍」
と似たようなことが出來るということだろう。
僕は確認の意味も含めて、理解した容をサンドラに伝えた。
「つまり今まで、大規模な攻撃魔法を発する際には魔力を練りに練ったあとに、詳細で的なイメージが必要だった。でも僕がしたのは発した魔法にあとから魔力注することで、通常魔法でも大規模魔法と同等の威力まで引き上げたってことでいいのかな?」
僕の言った言葉にサンドラは頷く、そして説明を続けた。
「その通りです。リッド様が考案した方法を理解して使えるようになれば、誰でも恐ろしい威力の魔法が使えるようになるかも知れません。これはもはや一種の扱いみたいなものです。リッド様は本當に楽しま……ではなく、規格外です」
いま、楽しませてくれるって本音を言おうとしたよね?
でも、は言い過ぎのような気もするけど、どうなのだろう?
誰でもって言ったからサンドラも使えるのでは? と思い僕は彼に言った。
「誰でもって言ったけど、サンドラも使えそう?」
サンドラはその言葉を待っていましたと言わんばかりに目をキラキラさせ始めた。
そして、咳払いをすると嬉々として言った。
「ごほん。リッド様の考案した方法の推察が正しいのか、先生として確認しないといけませんからね。さぁ、リッド様、私にやり方を教えて下さい」
彼はそう言うと顔をグイっと僕に近づけた。
ヤブヘビだった気がする。
そう思いながら僕は先ほど行った魔法の手順を説明した。
するとサンドラはすぐに試し始めた。
魔法は「ファイヤーボール」で行うらしい。
僕と同じように通常狀態で試し撃ちをしてから、魔力圧の方法を実験し始める。
さすがに、先程の僕のより魔力注は加減したようで、すぐに彼は魔法を発した。
それでも、最初に発した魔法より、明らかに炎の大きさが違った。
魔法の結果に満足した彼は満面の笑みとなっていたが、僕に振り返り急に真顔になると言った。
「この魔法の仕組みは門外不出にしましょう。ただ、ライナー様には折をみてお伝えするべきです。この仕組みは様々な意味で危険です」
普段の彼と違い、かなり真剣な様子が印象的だった。
それだけ。
今回の圧魔法は現狀の攻撃魔法の概念を揺るがすものだったのかもしれない。
「わかった。この魔法はよほどのことがない限り僕も今後は使わないようにするよ」
「それがよろしいかと存じます」
そういうと、彼はにこりと微笑んでからいつもの軽い様子で僕に言った。
「リッド様はやっぱり、規格外ですね」
「……規格外はやめて」
彼は楽しそうな笑みを浮かべながら、別の話題を言ってきた。
「そういえば、リッド様は近々レナルーテに行かれるのですよね?」
「うん。そうだけど、報が早いね」
父上とつい先日話したばかりの容を知っていることに僕はし驚いた。
僕の様子を見ていた彼は笑みを浮かべていた。
「リッド様、レナルーテでの助言があります」
「ん? なんだい?」
サンドラの助言と聞いてあまり良い予はしない。
「出る杭は打たれます。ですが、出過ぎた杭は打たれません。リッド様はレナルーテでも規格外に天元突破すれば良いのです‼」
サンドラは腰に右手をあてながら、左手の人差し指を天に向けて指していた。
「……それは前にも聞いたよ。それは助言というより、ただサンドラが言いたいだけでしょ……」
僕は彼の助言にどっと疲れた。
対してサンドラは言いたいことが言えて満足している様子だった。
◇
後日、屋敷では晴れた日に珍しく雷が近くに落ちた。
いわゆる「青天の霹靂」と言うべき珍しいことが起きたと話題になっていた。
誰もが雷の音を聞いたと言うが、メルだけは僕にあの音は雷ではないと教えてくれた。
「にーちゃま、あれは、かみなりのおとじゃないよ。かりゅうがそらたかくとんでいったの‼ わたし見たもん‼ みんながこわがるからひみつだよ」
「わかった。僕とメルのひみつだね」
そう言いながら、僕は心の中で謝った。
(ごめん、それは竜でも雷でもなくて僕の魔法だね……)
僕は當分、圧魔法は使わないようにしようと改めて心に決めた。
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