《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》道中
レナルーテまでは馬車で數日かかる。
それを屋敷で聞いた時は特に気にしていなかったがいまはとんでもない。
そんな距離を馬車で移するなんて地獄だ。
「うげぇえええ」
「いいかげんに慣れなさい……」
し呆れた様子で父上から聲をかけられる。
さすがに今の父上が僕にかける聲のトーンは優しい。
父上は平然とした顔をしている。
「何故、平気なのですか?」と聞いたら返事は「慣れ」だった。
父上も小さい頃は僕のように吐きまくったらしい。
珍しく父上が自分の子供の頃を教えてくれた。
それは父子としてとても良い時間だった。
この酔いがなければだが。
しかし何故ここまで酔ってしまうのか?
何とかしたい一心で原因を考えた結果、今の僕ではどうしようもないことだけがわかった。
主な理由は二つ。
①道が悪い。 (舗裝されていない)
そりゃそうだよね。
前世みたいにアスファルトなんかない。
道には全部、野に咲く花がある。
そして、人が行き來する街道に草は生えていないけど、変わりに馬車の車の跡や、そもそも道がでこぼこしている。
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父上曰く帝都に向かう街道はまだ良くてレナルーテに向かう道は結構酷いらしい。
②馬車にサスペンション的なものがない。
いや、恐らく揺れの振対策をまったくしていないわけではないと思う。
だけど、レナルーテに向かう道が特別なのか、ともかく地面から來る振が吸収されずダイレクトに馬車の中に伝わってくる。
橫揺れ、縦揺れのオンパレードだ。
遊園地のアトラクションだって、もうちょっと優しいと思う。
以上の容から僕は激しい酔いを験しているわけだが、殘念なことに逃げ道がない。
馬車を出て歩きたいがそれだと、到著が著しく遅くなる。
騎士達が乗っている馬に乗せてもらうことも考えたが、彼らと父上が首を縦に振らないだろう。
なので、僕はこの揺れに耐えるしかない。
「うぅ……」
「……」
父上から憐みの目で見られるがこればっかりはどうにもならなかった。
◇
その日は予定していた距離を順調に進み、レナルーテまでちょうど半分ぐらいまでの位置まで進んだ。
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そして、その位置にはちょうど宿場町があり今日はそこに泊まることになった。
本來であれば、宿場町の中を見て回りたかったが酔いが酷くて、とてもそんな気分になれない。
馬車で長時間揺られていたせいか、降りて地面に立つと今度は陸酔いが襲ってきてまたグラグラする。
陸酔いはが「常に揺られているのが正常」と認識していると、「揺れのない陸が異常」とが認識する酔いらしい。
どちらにしても、治すためには休むしかないという。
しかし今日、宿場町で休むと馬車に慣れたが明日からまた0スタートで酔いが始まると言うことだろうか?
そう考えるとまた吐き気が襲ってきた。
だが、吐けるものがないので、えずくだけだ。
うん、地獄だ。
そんな、僕の様子を珍しく心配そうに父上が見ていた。
「ふむ。確かに初めての馬車であの道はつらかろう。先に休んでおくか?」
「……父上、心遣い謝いたします。今日ばかりはお言葉に甘えます……」
僕は父上の言葉をそのままけ取った。
その後、宿場町の中にある多分、一番良い宿泊施設の一室に案され、僕はすぐにベッドで橫になった。
するとドアがノックされる。
誰だろう? 返事をすると「失禮します」と部屋にって來たのはメイド姿をしたディアナだった。
「あれ? ディアナ、その恰好……」
ディアナはし顔を赤くして恥ずかしそうに言った。
「レナルーテにいる間は私が従者兼お世話をさせて頂きますので、何かありましたらお呼び下さい」
言い終えると彼はペコリと頭を下げた。
ディアナは茶い髪に青い目をしている。
騎士団所屬の騎士でルーベンスの人だ。
普段は騎士の制服に長い髪をポニーテールしている。
恐らく僕の護衛もあるのだろう。
髪はポニーテールのまま、メイド服を著たというじだ。
しかし、メイド服で護衛は出來るのだろうか?
「護衛の意味もあると思うけど、メイド服のままでも戦えるものなの?」
僕は素樸な疑問を聞いてみた。
「……ご心配なくリッド様」
そういうと彼はメイド服のスカートを持ち上げた。
すると足に短剣ホルダーというべきか、何本も騒なものがあった。
「ほかにも……」
そういうと彼どんどん暗というべきものを見せてくれた。
というか見せていいのか?
僕は顔を引きつらせて「わかった、もういいよ……」と言って彼を止めた。
「あら…よいのですか?」と彼はし不満顔だった。
何故、不満顔なのだろう、暗を見せるのが趣味なのだろうか?
でも、騎士団って、剣主なのでは?
と思い、僕はまた質問した。
「ディアナは何でそんなに暗を持っているの? というか、騎士って暗使うの?」
「リッド様。男ではの作りが違います。格の問題もありますからが男と戦ったらどうにもならない場合がどうしても出てきます。その時にはこういった暗に頼ることも一つですからね。私は、騎士団にる為に何でもしましたから」
ディアナって清楚なイメージだったのに、実は暗でも何でも使いこなせる暗殺者タイプだったらしい。
僕はにっこり笑うディアナに底知れぬ怖さをじた。
でも、僕としてはやっぱり彼との関係もし気になる。
「それだけ頑張ったのは、やっぱりルーベンスのため?」
「う……ま、まぁ、そうですね。いや、やっぱり、あいつの為にというより私自の為に頑張ったというか……」
おお、顔が赤くなってもじもじしている。
僕はそんな彼の姿をみて「クスクス」と微笑んでいた。
すると彼は咳払いをして、僕を見て言った。
「と、ともかく、レナルーテに行っている間は私がリッド様のメイドになりますので、よろしくお願いします」
そういうと彼はペコリと一禮した。
「うん、よろしく」
僕はディアナに笑顔で答えた。
ディアナからはその後、ルーベンスの背中を押したことについてお禮を言われた。
ずっと、お禮を言いたかったらしい。
「初めてルーベンスのことを腑抜けと言った時はつい怒ってしまいましたが、リッド様がルーベンスに私の言葉の真意を汲むようにと伝えて下さったと聞きました。本當にありがとうございました」
「いやいや、僕は何もしてないよ。二人の今までがあったから、ルーベンスも踏み出せたと思うよ」
さすがにルーベンスからディアナのことで、二人が付き合う前から相談をけていたとは言えず、當たり障りのない言葉でとりあえず切り抜けた。
どうやら、メイドとして護衛するという話より、このお禮が彼の中でメインだったようだ。
その後、ルーベンスの事でし雑談するとディアナは「では、そろそろ戻ります。何かあればすぐお呼び下さい」と言って、僕に一禮すると部屋から退室した。
ディアナと話して気分がまぎれたのか酔いは大分よくなっていた。
でも、まだ治りきっていないじだったので、今度こそ寢ることにした。
と思ったらまたドアがノックされた。
今度は誰だろう?
そう思い返事をすると「失禮します」とクリスが部屋にって來た。
その顔はとても心配そうな表で僕を見ていた。
「えーと、どうしたの?」
「いえ、リッド様が初めての馬車で酔いがとても酷いと伺いましたので、良ければこちらをと思いまして……」
彼がそう言って取り出したのは「飴玉」だった。
何でも、ハーブ類を調合して作ったものらしい。
「私もよく長旅で酔いには苦しめられましたから、これを常備しているのです。なので、よければお試しになりませんか……?」
「ありがとう。早速頂くね」
僕はそう言ってクリスの飴玉をもらった。
口にれてまず襲ってきたのは酸っぱさに近い刺激だった。
「んんー‼」思わずと目がギューっとなる。
「リッド様、大丈夫ですか? もし口に合わなければ吐き出してください」
「うんうんうー‼」
大丈夫と言いたいが口が開けない。
クリスは手のひらを僕に差し出すが、それをぼくは両手で制して大丈夫と首を橫に振った。
それからしすると、酸っぱさが落ち著いてきて甘味が強くなる。
こうなると味しいとじるようになった。
なんか前世でこういったお菓子あったな。
刺激が強いグミみたいなお菓子。
そんなことを思い出していた。
ふと、クリスの顔をみると心配そうな表をしていたので、口が開くようになった僕は言った。
「不思議な味の飴玉だね。最初は酸っぱくてあとから甘味が來るじはくせになりそうだよ」
「お口に合いましたか? それでしたら良かったです」
クリスはホッとした表でをでおろしていた。
しかし、この飴玉いいな。
酸っぱさもそうだけど、あとから來る甘みも好みだ。
それに、酸っぱさでギューとなったおかげか大分気分がよくなった気がする。
僕はクリスを見るとお願いをした。
「この飴玉、良ければもらっていいかな?」
「はい。その為に持って來ましたから」
彼は僕が気にった様子を見せると満面の笑みで喜んでくれた。
彼が使う分、以外を僕は買った。
無料で良いと言われたが、そういうわけにはいかないと、クリスに預けているお金から引いといてしいと伝えた。
彼はし寂しそうな顔で「わかりました」と言ってくれた。
その後、レナルーテでもきについて軽く確認と雑談をするとクリスは「今日はゆっくり休んで下さい」と言って部屋を後にした。
その後、部屋に一人になった僕は飴玉を見ながら呟いた。
「この飴玉さえあれば、馬車旅は何とかなるはずだ‼」
そう自分に言い聞かせながら、明日への不安を払拭しながら僕は寢た。
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