《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》道中(2)

宿場町を出発してどれぐらいの時間が経過しただろうか?

僕はひたすら馬車の揺れに耐えつつ、クリスに貰った飴玉をちょくちょく口にれていた。

それでも揺れによる酔いで気分は悪いが昨日に比べれば大分マシだ。

だけど、蟲歯にならないか心配だ。

そういえば、この世界において蟲歯の治療ってどうなるのだろう?

醫療が発達していなかった時代では蟲歯は無理やり抜くしかなかったとか聞いた記憶がある。

背筋がサーっとしたので、僕は怖くなって考えるのはやめた。

だがそういった點もいずれは考えないといけないのだろうと思い、めた。

「その飴は、そんなに効くのか?」

「え? はい。僕はこれがあるとないとでは大分違うと思います」

僕がずっと口にれていたせいか、正面に座っている父上が飴玉に興味をもった様子だ。

僕はちょっと意地悪を思いつき「とても、甘くて味しいのです」とニコリと笑顔で答えた。

最初だけ酸っぱくて、あとが甘くなるから噓はいっていない。

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父上は「ふむ。ではひとつもらおうか……」と僕が差し出した飴玉を手に取った。

これは父上の面白い顔が見られるかもしれない。

僕は期待でワクワクした顔をしていたと思う。

「……」

父上は口にれようとして、僕の顔を見ると怪訝な顔をして飴玉を見つめた。

あ、あれどうしたのかな?

すると、父上は馬車の窓からルーベンスを呼んだ。

「ライナー様、どうされました?」

「なに、リッドからの差しれだ。とても甘い飴玉らしいぞ」

父上はニヤリと悪い笑みが浮かんでいた。

「とても甘くて、うまいのだろう?」

ばれた‼

僕は「はいとても甘いです……後味が」後味の部分は小さく、かすれるような聲で言った。

恐らくルーベンスには聞こえていない。

「そうですか、では遠慮なく頂きますね」

ルーベンスはにこやかな笑顔で飴玉をポイっと口の中にれた。

みるみる表が変化……しなかった。

だが、その顔にはしずつどす黒い影が出ている気がする。

「なるほど、確かに甘いですね……後味が、ですけど」

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父上はその様子に「ククク」と笑いを堪えている。

対してルーベンスは僕と父上を激しく睨むと僕に言った。

「そういえば最近、リッド様も実力が上がってきていますから今度、本気でお相手しようと思いますがよろしいですよね? ライナー様」

「ククク、いいぞ。を叩きなおすつもりでするが良い」

「……すみませんでした」

二人はとても楽しそうに息の合ったやりとりをしていた。

ルーベンスが本気を出したら、僕はコテンパンにされるだろう。

屋敷に帰ってからの訓練がし憂鬱になった。

そんなやりとりをしていると、馬車の揺れが大分減ってきた。

「父上、馬車の揺れが大分減ってきましたね」

「ああ、レナルーテとマグノリアの國境近くだからな。もうすぐ、レナルーテの関所だ」

ようやく、レナルーテに著く。

ということは馬車ともおさらばできるわけだ。

そう思うと、大分気分が楽になった。

すると、外からディアナの聲が聞こえてきた。

「レナルーテの関所が見えてきました」

僕はその聲に反応して、窓から関所を見るとし驚いた。

関所というより砦というじだ。

思ったよりも大きい。

口の門は木で作られていて、城門というじだ。

その城門前には、ダークエルフの兵士が二人ほど、槍を持って立っている。

僕たちはすでに気付いている様子でし警戒しているのが離れていてもしわかった。

その時、ルーベンスが僕たちに言った。

「先に行って、我らの事を伝えて參ります」

父上がコクンと頷くと、ルーベンスは乗っていた馬の腹を足で叩いて駈歩で関所に先に向かっていった。

そして、僕たちの馬車が近づくと同時に門が開かれて砦の中にった。

そこで一旦馬車は止められた。

すると、ダークエルフの兵士が馬車に近づくと「元確認の為、書類と合わせてご本人にお目通り願いたい」と言った。

その聲に父上はサッと立ち上がり、馬車のドアを開けた。

「マグノリア帝國、バルディア領當主。ライナー・バルディアだ。これで良いか?」

「ハッ、大変失禮致しました。お目通りさせて頂き、栄です」

ダークエルフの兵士は父上の姿を見ると一禮してからサッと引いた。

父上は言い終えると、すぐに馬車の椅子に腰かけた。

しかし、僕は馬車の窓から見た兵士の姿にテンションが上がっていた。

まさに「ときレラ!」で本編とは関係ないところでプレイヤー達が盛り上がっていた要素そのままだったからだ。

その要素とはダークエルフの兵士の姿が明治維新後の日本を彷彿させる軍服を著ているのだ。

し四角い形の印象がある制帽。

黒を基調とした長袖、長ズボンの軍服。

膝元まである軍靴。

そして、やっぱり目につく腰にある軍刀。

うん、どう見ても、前世の記憶にある昔の日本で見たことあるじですね。

そんなに本編をやっていない僕でもこれは覚えていた。

というのも、今思い出すと懐かしい職場の後輩がお勧めしてくる中で、この要素があったのだ。

僕は後輩の言葉をしみじみと思い出す。

「ダークエルフと和ですよ、和‼ しかも和洋折衷時代です‼ そのルートの雰囲気は最高ですから一回見てください‼」

ごめん。

かなり、お勧めされたから覚えていたけどゲームは未読スキップしてしまったよ。

でも、直接見たのだから後輩も許してくれるはずだ。

僕はそう思うことにした。

だが、そもそも何故レナルーテが和洋折衷になっているのか?

実はこれには理由もある。

それは、數年前に起きた「バルスト事変」に起因している。

當時、マグノリアが表向き同盟國となり問題を解決した時、レナルーテの國民が友好的かつ積極的にマグノリアの文化を生活に取りれたのだ。

元々、和に近い文化を持っていたレナルーテが西洋に近いマグノリアの文化を取りれた結果、明治維新後の和洋折衷が溢れるじになったわけだ。

でも、何故そこまでレナルーテの國民がマグノリアに友好的になったのか?

それは彼らの出生率が関係している。

ダークエルフは壽命が非常に長い。

そのせいか、他の種族よりも子供が出來にくい質らしい。

その為、種族として國として大きな問題になっている。

なので、ダークエルフは種族的にとても子供を大切にする。

國民全員が自分自の子のように子供を見守る、そんな風があった。

そして、當時バルストの奴隷狩りが狙ったのがダークエルフでも価値の高い子供達だった。

だからこそ、バルストとレナルーテはより拗れて関係は悪化した。

そこに付け込んで、塩の供給までちらつかせてレナルーテを屬國にしたマグノリアも中々だとは思うけど。

今回、婚姻するにあたって、現狀のレナルーテについて學んだ時に後輩の言っていたことも思い出した。

だけど正直、和洋折衷よりも目的は別にある。

僕がし考え込んでいる間に馬車が気付けば、関所を抜けてレナルーテ國っている。

そして、新たに目に景。

それは田園風景だ。

そう「米」がある。

僕はたまらずに聲に出した。

「父上、田んぼですよ‼ 田んぼ‼」

「うん? 確かにマグノリアでは見ないが、レナルーテでは珍しくないぞ」

父上には僕のが伝わらなかった。

でも、僕はとてもしていた。

マグノリアの食事はパン、、スープ、サラダなどが基本だ。

米なんてまず出てこない。

いつか何とか出來ればと思ってたけど、こんなに早く改善出來る機會が來るとは思っていなかった。

でも、だからこそ今回はクリスに來てもらったのだ。

絶対に商流を作る、そして米をバルディア領に輸できるようにしてみせる。

と田園風景を見ながら決意を新たにするのだった。

その時、父上から聲をかけられた。

「恐らく今日中には、レナルーテの王城にるだろう。だが、レナルーテの王とは恐らく明日、會うことになるだろう。今日はゆっくり休むようにしておけ」

「わかりました。萬全で臨めるように致します」

僕は力強く父上に言葉を返した。

父上は僕の言葉に安堵したようだが、一転怪訝な顔をすると僕に言った。

「……吐くなよ?」

「レナルーテの王の前で吐くわけ、ないじゃないですか……」

僕は父上の言葉で力が抜けてしまった。

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