《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》ノリスとエリアス王
レナルーテ王城にある本丸殿。その執務室のドアがノックされる。
中にいたレナルーテの王、エリアスが返事をした。
すると、兵士がってきて一禮してから言葉を発した。
「ノリス様が陛下にお會いしたいとのことです。よろしいでしょうか?」
兵士の一言で執務室の機で事務作業をしていたエリアスの手が止まり、表が険しくなった。
ノリスはレナルーテの中でも影響力の強い華族で、マグノリアとレナルーテの約も知っている。
そして、屬國となったことを屈辱に思っているため、何とかマグノリアと対等な立場になろうと畫策している人だ。
殘念ながらレナルーテも決して一枚巖の國ではない。
様々な派閥というものがどうしても出てくる。
ノリスがまとめている派閥はレナルーテにおいて一番厄介な派閥であるが、ノリスがいるからこそ安定している。
なので、エリアスも多の毒であれば止むを得ないとしてきたところもある。
だが、最近のノリスはし調子に乗っているじがあった。
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恐らくエリアスの息子であるレイシスの存在が大きいのだろう。
レイシスの母親はノリスとの繋がりがある、リーゼル王妃だ。
ちなみに、ファラ王とレイシス王子は異母兄弟である。
ダークエルフはその出生率の低さから王族に関しては一夫多妻制になっている。
そして王妃となるのは最初に子供を宿したと定められている。
というのは、出生率の低さから王妃を先に決めても側室が子を宿してしまうケースがどうしても出てくる。
かといって、王族のを絶やさない為に一夫多妻をやめるわけにはいかない。
結果、王妃は子を最初に宿したがなることになった。
エリアスもそれまでの流れに沿って、一夫多妻制によりレイシスとファラという子寶に恵まれた。
だが、バルスト事変の約によりファラはマグノリアに嫁ぐことが生まれてすぐに決まってしまった。
結果として、ノリスとの繋がりがあるレイシスしか王族の子が國に殘らないのである。
約の容は當然、一部の者達しか知りえない報だ。
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その為、ノリスはファラが多大きくなったある時期から派閥に所屬する者を使い、噂を流し始めた。
「王はマグノリアに嫁ぐのではないか? その為の教育では?」
実際、ファラの母親であるエルティアは我が子がマグノリアに嫁ぐことを知っていたこともあり、早い段階から教育を始めていた。
それが、約を知らぬ者達からすれば噂の信憑を高める要因となったのは想像に難くない。
國に殘るレイシスがいずれ王になる。
その構図が見えた者達はノリスの派閥にるようになったのである。
そして、今回のファラの婚姻問題だ。
マグノリアとしては屬國の王を皇子の正室にするメリットはない。
ファラは、かの國からすれば関係強化の為の人質なのだから。
だからこそ、今回の婚姻候補者として辺境伯とその息子が來た。
候補者と言っているが実際は決まっているようなものだ。
マグノリアから候補者が訪問すると手紙が來た時、その容にノリス達はすぐに噛みついた。
「皇族もしくは準ずる貴族とあるが、筋としては皇族と縁談をして問題があれば準ずる貴族とするのが正しい。マグノリアはわが國と王を軽んじているのではないか?」
これに呼応するノリスの派閥。
エリアスは頭を抱えた。
そもそも、レナルーテはマグノリアの屬國になったのである。
その時點でレナルーテは軽んじられたからといって、何も言えないのである。
確かにエリアス自、王をマグノリアに好き好んで渡したいわけではない。
だが、エリアスは王である。
自國の民を守るために、人ではなく王として決斷をしなければならない。
その為の苦渋の決斷だった。
それを知っているはずの、ノリス達は國の為と言いながら自分達の誇りのために、王子と王。
そしてマグノリアの辺境伯の息子も巻き込もうとしている。
「やはり、時かもしれないな」エリアスは一人靜かに呟いた。
すると先程、室してきた兵士がエリアスに再度、視線を送り確認するように言葉を発した。
「……陛下、ノリス様はいかが致しましょう?」
「はぁ……通せ。ノリスだけだ。他は誰もれるなよ」
「承知致しました」
エリアスはため息を吐いて、兵士にノリスを執務室に室させるように指示をした。
兵士は返事をすると一禮してすぐに執務室を出た。
そして、ゆっくりとノリスが執務室にってきた。
ノリスはし待たされたのが不満だったのか、し機嫌が悪そうだ。
「陛下。本日、バルディア家の者達が迎賓館にったようですが、先方から挨拶はすでにありましたかな?」
「はぁ……先方は馬車による長旅をしているのだぞ? それに私自忙しい。挨拶程度、何も當日でなくても良い。こちらの準備もあるのでな、その點は予め先方に伝えているぞ?」
エリアスの言葉に「ふむ」と頷くと、ノリスは不満そうな聲で言った。
「確かに、陛下の言うこともわかります。ですが、それでも挨拶に來るのが禮儀というものでしょう。やはり、辺境伯の息子は王の相手に相応しくないと言わねばなりませんな」
エリアスは気が長いと自分で思っている。
だが、ノリスにはいい加減に切れても良いのかもしれない。
そんな思いが腹から湧き出てくるが、抑え込む。
エリアスは「冷靜に、冷靜に」と心の中で呟いていた。
そして、ノリスの顔を見ると言った。
「ノリス、お前の主張は會議でよく聞いている。本當にそんなことを言う為にここに來たのか? 王の事務処理を止めるために?」
エリアスは冷靜に怒りがれ出ていた。
ノリスもさすがにこれ以上怒らせてはまずいと、慌てたように本題を言い始めた。
「も、申し訳ありません。先日、會議で話をしていた件ですが私主で進めてよろしいですね?」
「……そのことか。ノリス、お前に任せると言ったはずだ」
先日の會議でエリアスはある失言をしてしまった。
ノリスは一貫して王とマグノリアの皇族との縁談をんだ。
エリアスは屬國となった以上、そんなことはとても言えない。
出來るわけがないと言い続けていたなかで「辺境伯の息子に問題でもあれば別だが」と言ってしまった。
この言葉を聞き洩らさなかったノリスは、辺境伯の息子を遠回しに王の伴として問題ないか、確認をすると言い始めた。
ノリスの派閥の屬する者達もそれに同調してきた。
止む無く、辺境伯の息子に失禮がないようにと念押しをして最終的に許可を出した。
ノリスはエリアスの言葉を聞いて満足気な顔をして言った。
「ありがとうございます。必ずや陛下のご期待に応えて見せます。では、失禮いたします」
確認したいこと、言いたいことが終わると彼は執務室を出て行った。
「誰もお前に期待などしておらん。たわけが……」
ノリスが部屋から出た後、彼が出て行ったドアを見ながらエリアスは吐き捨てるように言った。
そして大きなため息を吐いてから、また事務処理に戻るのであった。
◇
エリアスとの話が終わり、ノリスは執務室から満足気な顔で出てきた。
これで、憎きマグノリアに一泡吹かせてやれる。
必ずや王を皇族の妻にしてみせる。
それにより、レナルーテは確実に國として飛躍できるはずだ。
ノリスはそれを信じて疑わなかった。
王であるエリアスは辺境伯の息子でも良いという考えを持っている。
だが、屬國となったレナルーテが唯一、マグノリアと対等な立場になれる長期的な方法。
王と皇子の婚姻。
辺境伯と皇族ではまさしく格が違う。
國同士としても繋がりが強くなるうえ王が皇族のを引く子供産めば、レナルーテの族がマグノリアの皇帝となる可能だってある。
屬國となった國の下剋上が直接の爭いもなく可能となる。
こんな素晴らしい機會を逃してはならない。
絶対に。
ノリスは自分が行っていることが國の為であると信じて疑わなかった。
その時あることをふと思い出した。
「そうだった。レイシス王子にも念を押しておかねば……」
そう呟くとノリスはレイシス王子を探してその場を去っていった。
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