《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》レナルーテ・リッドの初撃
迎賓館から馬車で移して間もなく、馬車が止まった。
同時にルーベンスの聲が馬車の外から聞こえる。
「到著いたしました」
聲と同時に馬車のドアがノックされ開かれた。
父上が降りたあとに、僕が続けて降りた。
降りた馬車の傍には騎士姿のルーベンスとメイド姿のディアナ、他數名の騎士達が待機している。
でも、そこで僕は疑問が浮かんだ。
目的地と思っていた城ではない。
だが、恐らく城にある一番大きな屋敷と思われる場所だった。
僕は気になって、疑問を父上に投げかけた。
「父上、お城にはらないのですか?」
「うん? そうか、リッドは初めてだったな。レナルーテの城は戦略拠點として特化された城だ。だから、渉事はこの本丸殿と言われる場所で行われる。覚えておけ」
「は……はい」
お城に本丸殿という建があるなんて知らなかった。
僕と父上が話しているとダークエルフの兵士が聲をかけてきた。
「お待ちしておりました。ではこれより、謁見の場となる表書院にご案いたします。つきましては、王に謁見される方は帯刀をご遠慮願いたい」
「わかった。陛下に謁見させて頂くのは私とリッド。そしてルーベンスとディアナの四名だ。他の者はこちらで待機していろ」
兵士の言葉に父上は返事をすると、帯刀していたサーベルを待機する騎士に預けた。
ルーベンスとディアナも同様だ。僕は子供だし元々、帯刀していない。
「ご協力ありがとうございます。では、ご案いたします」
兵士は一禮すると、本丸殿の中にった。
父上を先頭に僕達も続く。
「恐れりますが、こちらで靴をおぎください」
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おお、ここでは「土足厳」なのか。
僕はし懐かしい覚がした。
父上はし慣れた様子で靴をいでいる。
後の二人はし戸いながらいでいるじだ。
僕はさっと靴をいで、兵士と父上の後を追った。
そして、本丸殿の中を見て思わず「うわ~」と聲を出しながらしていた。
玄関をると、懐かしい襖がある。
でも、その襖は金箔仕様になっていた。
そして、竜と竹だろうか?
絵が描いている。
とても迫力があるし綺麗だ。
目をキラキラさせて見ていると父上から「あまりキョロキョロするな」と小聲で怒られた。
「すみません……」と僕が謝る様を後ろで見ていた二人はクスクスと笑いを堪えていた。
「ではこちらです」と案してくれる兵士の後を追い、木張りの廊下を進んでいく。
し進むと兵士は立ち止まり、金箔と絵で豪華絢爛な襖をゆっくり開けた。
すると、襖の先は奧行きのある畳部屋になっていた。
畳部屋の左右の壁側には椅子を置いて座っているダークエルフ達が奧に向かって並んでいた。
服は兵士と似ているが勲章や肩に裝飾などもあるので、恐らくレナルーテの華族の人達だろう。
「では、あちらの一番奧にある椅子に座りお待ちください」
兵士の人はそういうと、し下がってから襖を閉じた。
その時、ダークエルフ達の目線が僕たちに集中する。
疑、興味、怪訝、好奇心など様々なを持って注目されているのがわかる。
その中、父上が「いくぞ」と一言いって奧に並んでいる空席に進んだ。
用意されていた椅子は前二席、後ろに二席という並びだった。
當然、僕と父上が前に座った。
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正面をみると襖が閉じている。
どうやら、僕たちがいる場所の前にもう一つ部屋があるようだ。
僕たちが座っている場所より、部屋が一段高い作りになっている。
すると、父上から小聲で「面を上げろと言われるまで、し頭を下げろ」と言われた。
僕は時代劇の世界にいるようで、ダークエルフ達に注目はされているがそれでもこの空間を楽しんでいた。
僕たちが頭を下げたのを確認すると、近くにいた兵士が聲を発した。
「マグノリア帝國、バルディア領、領主ライナー・バルディア様が登城致しました」
その聲と同時に靜寂が訪れ、次に襖が開く音が前から聞こえた。
「……面を上げよ」
靜寂の中に重い聲が響く。
僕は橫目で父上のき見て合わせながら、ゆっくり顔をあげた。
「ふふ、久しいな。ライナー殿」
襖が開くと父上の正面に位置するところに座っている、ダークエルフが笑みを浮かべて聲をかけた。
「ご無沙汰しております。エリアス陛下」
父上はエリアスの言葉に座りながら一禮して答えた。
この人がエリアス陛下か。
彼は黒い髪に、鋭い黃の瞳をしていた。
そして、歴戦の武人のような雰囲気を醸し出している。
父上も中々、厳格な顔をしているが、それに近いじだ。
エリアスの両隣にはそれぞれしいダークエルフのがいる。
おそらく王妃と側妻だろう。
他にも僕と変わらないぐらいの長をしている男の子がいる。
あれがレイシス王子かな。
あと彼の反対側に白を基調とした綺麗なドレスを著たの子がいる。
恐らく彼がファラ王だろう。
王の傍にもがいるが彼は恐らく護衛だ。
著ている服が兵士と一緒で黒を基調とした軍服で彼だけの隣で立っていた。
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僕が周りを見ている間もエリアスと父上の會話は続いていた。
「今日は仰々しくてすまんな。何せ、我が娘の婚姻候補者が來ると言うことで、皆が一目會いたいと聞かんのだ。それでこのような狀況なのだ。許せ」
このような狀況とは、この部屋の有様だろう。
何せ、広いとはいえ畳の部屋に椅子を並べて、レナルーテの華族が一堂に集まっている。
來賓の謁見にこんなにも人が集まることはそうそうないのだろう。
「はい。王の婚姻候補者となれば、そのお気持ちは當然でしょう」
「ふむ。そう言ってもらえると助かるな。で、そこの者か? ライナー殿の息子というのは?」
エリアスは僕に鋭い眼を向けてきた。
「はい。よろしければ自己紹介をさせてもよろしいでしょうか?」
「うむ。許す」
エリアスの言葉を聞いた父上は僕に目配せをする。
僕はその目配せを確認してからその場でゆっくり椅子から立ち上がり、エリアスに向かって聲を発した。
「マグノリア帝國、バルディア領、領主、ライナー・バルディアの息子、リッド・バルディアでございます。この度、ご挨拶をさせて頂き恐悅至極でございます。今回、父ライナーより、ファラ・レナルーテ王とのお話を伺いました。是非、一度ご挨拶すべきと思いお伺いさせて頂きました。以後、よろしくお願い致します」
僕は、はっきりと大きな聲でエリアスの目を見ながら力強く言い切った。
すると、何故かその場が、靜寂に包まれた。
靜寂を破ったのはし目を丸くしたエリアスだった。
「……ずいぶんと立派な口上だな。貴殿の年齢は我が息子、レイシスとあまり変わらないと聞いたが? いま何歳かね?」
「6歳です。父上からファラ王と同い年と伺っております」
僕との會話にエリアスの眼が鋭くなるのをじる。
「そうか。ちなみに貴殿は今回、我が娘との話を候補者としてどう考えているのだ?」
「陛下。忠言、失禮致します。お遊びが過ぎるのではないですか?」
エリアスの言葉に最初に反応したのは華族の席で一番前に居る初老のダークエルフだ。
「ノリス、良いではないか。聞くだけだ。どうだ、貴殿はどう考えているのだ?」
エリアスはノリスの忠言を軽く聞き流し、僕に再度質問をしてきた。
僕はエリアスの言葉に考える素振りをしながら橫目で初老のダークエルフをチラ見した。
そうか、彼がノリスか。
ザックが言っていた、今回の婚姻の件で一番の障害となる存在か。
ここで、エリアスを制止したということは、僕の印象を殘させたくないのだろう。
ならば、することは決まっている。
彼が、ノリスが一番嫌がることをすれば良い。
「どうした? 何でもよいぞ? 思ったことを言ってみよ」
僕は、思慮深い顔をしながらおもむろに言葉を紡いだ。
「では、僭越ではありますが申し上げます」
「うむ。申せ」
僕が言葉を紡ごうとすると、父上がし青ざめた顔をしていた気がする。
多分気のせいだろう。
「今回のレナルーテとバルディア領との婚姻は必ず、就させるべきと考えております」
「ほう……」
僕の言葉に周囲がしざわついた。
ファラ王もし目を丸くしてこちらを見ている。
僕はファラ王に笑顔だけでニコリと返事した。
すると、ファラ王の表はそのままだが、耳だけがしいた気がする。
エリアスは僕を鋭い目で見ると両手を左右に広げ「面白い。続けたまえ」と笑みを浮かべて言った。
「では、申し上げます。レナルーテとバルディア領は國境が隣接した隣國であります。その、繋がりが強化できれば、周辺國に対しての抑止力になります。例えば「バルスト」などが良い例でしょう」
僕はあえて、レナルーテと犬猿の仲であるバルストの名前を出す。
恐らく、その意図に気付いているエリアスは眼がするどいまま僕を見つめている。
そして、案の定聞いてきた。
「どういう意味かな? 我が國はすでに貴殿の國と同盟を結んでいる。それだけでは、抑止力にはならないと?」
「はい。それだけでは十分ではありません」
「ふふ、面白いことを言う。それは、マグノリアは信用できないと言う事かね?」
エリアスの目の鋭さが緩んだ。
代わりに僕の事を面白いと思い始めたみたいだ。
「そういった意味ではありません。バルスト側に立った話です。バルストから見れば同盟と言っても所詮は國同士の繋がりです。マグノリアに迅速なきはないだろうと思う可能もあります。ですが、バルディア領とレナルーテに婚姻という繋がりが出來ればどうでしょうか?」
皆、僕の話を黙って聞いている。
良く見えないが、周りの華族達も黙って聞いているようだ。
「婚姻後は、手を出せばすぐにバルディア家がくとバルストは思うでしょう。それに、バルディア家は自國の有事において獨自に軍をかせます。そして、婚姻後は妻の國と同盟國を守ると言う大義名分が得られます。それは、レナルーテで有事が起きても帝都に指示を仰がず、獨自に我らバルディア家はけることになります」
周りの華族達が小さい聲で「ふむ」「たしかに」と呟いているのがし聞こえてきた。
「レナルーテに手を出せば確実にバルディア家がく。バルストにそう思わせることにより、同盟による抑止力は効果的になると存じます。いかがでしょうか? これは、マグノリアの皇族との婚姻では得られないものだと思いますが?」
すると、僕の言った言葉にすぐ反応したのはノリスだった。
「下らん戯言を申すな‼ レナルーテとマグノリアは同盟を結んでいるのだ。貴殿とファラ王が婚姻を結ばんでも、貴殿たちはく必要があるはずだ‼」
「確かにそうです。ですが、私がお伝えしたかったのはバルストが今の同盟をどう捉えるか? という問題です。さらに言わせて頂ければ、レナルーテに問題が起きた時、同盟國というだけではバルディア家は獨自に軍をかせない可能がございます」
「なんだと‼ どういう意味だ‼」
ノリスは顔を真っ赤にしている。
エリアスを含め他の華族達は黙ってその様子を見ている。
僕は説明を続けた。
「いくら獨自に軍をかせると言っても、それは自國の國家防衛であることが大前提です。バルストがレナルーテとだけ、隣接している國境から攻めた場合、我らは國の指示があるまでけません。ですが、私とファラ王が婚姻を結べば、妻の國を救う大義名分ができます。そうですよね、父上?」
僕にいきなり振られた父上は険しい顔を崩さずに眉間に皺をよせ、こめかみをピクリとさせた。
それを見ていたエリアスは、とても楽しそうに父上に質問した。
「ふふふ、どうなのだ、ライナー殿。貴殿の息子が言うことは正しいのかな?」
父上は首を橫に振ってから、僕を睨むとおもむろに言葉を紡いだ。
「……子供の言うことですので、聞き流してもらえればと思います。ですが、我がバルディア家とレナルーテの婚姻の有無による、抑止力の見解は間違っていないでしょう」
エリアスは父上の言葉に満足な顔を浮かべながら質問を続けた。
「なるほど。では、辺境伯の立場としてはどう見る?」
「はぁ……それも子供の発言ですから、聞き流して頂きたい部分です。ですが、同盟だけではバルディア家はけないでしょう。皇帝の指示が必要になります。ですが、婚姻をしていれば獨自にいても、多は帝都に対して大義名分が立つでしょう」
ノリスは鼻息荒く、顔を真っ赤にしたままだ。
その様子をわかっていながら、エリアスは笑みを浮かべて僕に再度、質問を投げかけた。
「ふむ。つまり君のいう婚姻すべきという主張は、主にバルストに対して有効的だからということだな?」
「はい。他にも々とありますが、それは婚姻後までとさせて頂きます」
「は‼ なんとまだ、々あると申すか‼」
僕の言葉を聞いたエリアスは驚愕の表を浮かべた後、しばらく大笑いを続けた。
落ち著いてくると僕を見ながらエリアスは楽しそうに言った。
「ふふふ、ライナー殿の息子は末恐ろしい。こんな規格外の子供が隣國の跡継ぎとは。もし、敵國の跡継ぎであれば、毎日寢ることもままならんな」
「陛下‼ 子供の言うことですぞ‼ それに、陛下に向かってとは無禮でございます‼」
ノリスが真っ赤になり言葉をまくしたてた。
その様子にエリアスは眼鋭いままに言った。
「ノリス。子供の言うことでも一理ある。ライナー殿も認めていることだ。それを冷靜に見ることが出來なければ為政者として失格だ。そうであろう?」
「グッ……」
エリアスに諭されノリスは苦蟲を噛み潰したように険しい顔をして黙ってしまった。
ちなみに、僕に対して周りにいる華族達からは好意的な目……ではなく、畏怖の目で見られている気がする……何故?
ノリスが黙ると、エリアスは僕を興味深げに見ながら言った。
「貴殿……いや、リッド殿と呼ばせてもらおう。実利のある良い考えであった。聞かせてくれたことに禮を言う」
「いえ、とんでもないことでございます」
すると、ずっとエリアスの橫にいた一人のが呆れたように言った。
「エリアス陛下、今日はファラとリッド様の顔合わせでございます。まだ、ファラは自己紹介もできておりません。そろそろ、本題をお勧め下さい」
「む。確かにエルティアの言う通りだな。ファラ、遅くなって申し訳ないがリッド殿に自己紹介をしなさい」
エリアスに言われて、ファラはし慌てながら小さく深呼吸して、リッドを真っすぐ見ると言った。
「レナルーテ國、エリアス・レナルーテの娘、ファラ・レナルーテと申します。よろしくお願い致します……」
言い終えるとファラはペコリと一禮をした。
リッドはその姿を素直に可いと思った。
ファラの顔をリッドが見ると、彼はし俯いた。
そして、ダークエルフ特有の長耳がしだけ上下にく。
さっき見たのは気のせいではなかったらしい。
彼の耳のきに気付いた母親のエルティアはファラに小聲で「耳がいています。はしたないですよ」と注意をした。
ファラはハッとしてから深呼吸をすると、耳のきは止まった。
その様子を見ていたリッドは耳にどんな意味があるのだろうとし気になった。
ファラを見ていると、エルティアが僕に冷たい目を向けてから自己紹介を始めた。
「……ご挨拶が遅れました。エルティア・リバートンと申します。ファラ・レナルーテの母親でございます。以後、よろしくお願い致します」
言い終えると彼は一禮した。
エルティア?
あの絵のモデルの人っぽい。
確かによく似ていて人だ。
しかし、リバートン? ザックと関りがあるのかな?
僕はし考え込んだ。
エリアスは二人の挨拶を終わったのを見ると、王妃と王子にも目配せする。
目配せに気付いた二人は、その場で立ち上がり自己紹介をしてくれた。
「レナルーテ國、エリアス・レナルーテの息子、レイシス・レナルーテだ」
「私はエリアスの妻、リーゼル・レナルーテです。」
二人は自己紹介が終わると軽くお辭儀をして座った。
レイシスは何故か敵意を含んだ鋭い目で僕を見ているようだ。
せめて、敵意を抱いてもそれを相手にじさせないように睨んでほしい。
エリアスは自分以外の自己紹介が終わったのを見ると、立ち上がり僕に強い視線を送りながら自の自己紹介をした。
「遅くなったが改めて……レナルーテ國の王。エリアス・レナルーテだ。リッド殿とは、良き長いお付き合いをしたいものだな」
言葉を発した後のエリアスは楽しそうな笑みを浮かべていた。
僕はエリアスの自己紹介が終わるとゆっくり椅子に座った。
すると、先程まで苦蟲を潰したような険しい顔をしていたノリスがエリアスに近づき、そっと耳打ちをする。
エリアスはノリスの耳打ちが終わると、し疲れた様子を見せたがすぐ厳格な顔に戻る。
そして、僕を見ながら言った。
「さて、リッド殿の考えはわかった。だが、文武両道であってこその言葉と思わぬか?」
「文武両道……ですか?」
わからなくはないが、今までの會話からしても突拍子のない言葉で僕はし首を傾げた。
「うむ。リッド殿が素晴らしい考えをお持ちなのはわかった。次は是非、実行できる力として、貴殿の武の実力を見せてしいのだが……どうだろう?」
ふと、エリアスから視線を外すとノリスとレイシスが、邪気を含んだ笑みを浮かべているのが目にった。
ああ、そういうことかと僕は理解した。
僕に武でケチを付けるつもりなのだろう。
ならば言うべきことは一つだけだ。
「私の実力を知りたいと言って頂けるのは大変、栄です。是非、私からもお願い致します」
僕の言葉にエリアスはし目を丸くしたが、とても喜んだ様子を見せた。
「うむ。それであれば、訓練場にすぐ移するぞ‼」
エリアスはそういうとサッと立ち上がり、自ら先導して外の訓練場へと向かった。
僕達はその後を追いかける形で、本丸殿を後にした。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。
これからもどうぞよろしくお願いします。
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