《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》レナルーテ・リッドの次撃
僕はいま、本丸殿の外にある訓練場と思われるかなり開けた場所に來ていた。
エリアスを含めて観覧する人たちは本丸殿の縁側に椅子を置いて座ったり、立ち見したりしている。
もはやちょっとしたお祭り騒ぎではないだろうか?
確かこういうのを時代劇とかで前試合と言った気がする。
ファラ王と僕の顔合わせが主題だったのに、何故か僕の武を披することになってしまった。
まぁ、様々な思が重なった結果だろうけど。
でも、先に毒を出してきたのは向こうだ。
「毒を食らわば皿まで」という言葉通りに僕も遠慮はしない。
縁側を見ると父上がエリアスの隣に座っている。
だが、厳格な顔に磨きがかかっている気がする。
僕と目が合った父上はし俯いて大きなため息を吐いた。
自分の息子が前試合をするのにもうし応援してくれても良いのでは?
と、思ってしまう。
でも、父上の近くに控えているルーベンスはウインクして親指をグッと突き出している。
まぁ、普段ルーベンスとしている訓練の結果を出す良い機會と捉えよう。
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すると、後ろから「リッド様」とディアナの聲がして振り返った。
彼はどこか怖い微笑みを浮かべながら「こちらをお使いください」と木刀を僕に差し出した。
何故、ディアナが木刀を持ってきたのか疑問に思うが素直にけ取り「ありがとう」とお禮を言った。
すると、彼は顔を僕の耳元に近づけて呟いた。
「彼らはよほどリッド様に恥をかいてしいようです。このような試合で末な木刀をリッド様にご準備しておりましたので、私が選別してお持ち致しました。木剣ではなく木刀なのが殘念ですがご安心ください……」
そんなことまでするとは。
彼らもよほど必死なのだろう。
と思ったが、それ以上に僕はディアナの雰囲気が凄いことになっていることに気付いた。
彼の周辺に黒い何かがゆらゆらと漂っている。
僕の顔を真っすぐ見つめると冷たく、そして力強く彼は言った。
「無禮な輩には容赦無き鉄槌をお與え下さい……絶対に」
「う、うん。わかった」
僕の返事に満足した様子の彼は満面の笑みになった。
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その笑みの裏には相変わらずどす黒い怒りの火が見えるけど。
僕はついでに著ていた上著を彼に預けて、出來る限りきやすい服裝になった。
相手の準備が出來るまで、まだ時間がしかかるようだから準備運をしながら待つことにした。
しかし、相手は誰が來るのだろうか?
この場所に案されたあと、ノリスから「……適切な相手の準備があるので々お待ちください」とそれはもう嫌悪が混ざった険しい顔で言われた。
為政者ならせめて、悪意を顔に出さないでしい。
子供だからと侮っているのだろうか?
と、思わざるを得なかった。
準備運しながら縁側を見ると王妃のリーゼルがエリアスとノリスに何か怒っているようだ。
どうしたのだろう?
対して、エルティアは前試合には興味なさげに目を瞑り座っている。
ファラと護衛のはこっち見ていた。
ファラと目が合ったので再度、ニコリと笑顔だけ返す。
すると、俯いてまた耳が上下にしいた。
それに気づいたエルティアがファラを注意している。
うん、これさっきも見た景だ。
護衛のは何故か興味深そうに僕を見ている。
何か気になることでもあったかな? そう思った時、エリアスから聲がかかった。
「リッド殿、待たせてすまんな。準備はよいか?」
「はい。いつでも大丈夫です」
僕はエリアスに向かって一禮してから返事をした。
彼の隣にはリーゼル王妃がいるが、なんだか機嫌が良くないようだ。
「うむ。では貴殿の対戦相手だが、急にどうしても貴殿の実力を直接知りたいと言い出した者が出てきてな。その準備で時間がかかったのだ。許せ」
「承知致しました。私の実力を直接知りたいと言って頂けるとは栄でございます」
エリアスに返事をしながら、ディアナから聞いた木刀のこともある。
相手は恐らくノリスの手先だろうと想像がつく。
ならば遠慮はいらない。
ディアナの言う通り鉄槌を與える気持ちで良いだろう。
一切の容赦はない。
「では、貴殿の相手を紹介しよう。我が息子、レイシス・レナルーテだ」
「は……?」
僕は予想外の相手に呆気に取られてしまった。
まさか、ノリスの手先として王子が登場するとは思わなかった。
すると、エリアスの言葉で満を持して登場するように、縁側の奧からレイシス王子が対戦仕様のきやすい稽古著ともいうべき服裝で現れた。
なるほど、著替えてたから準備に時間がかかったのね。
僕は妙に納得してしまった。
彼は縁側で足袋を履くと、ゆっくり僕に向かって歩き始めた。
彼の片手にはすでに木刀も握られており、やる気満々といった様子だ。
ふと縁側を見ると父上が肩を落として俯いている。
ルーベンスは相変わらず笑顔で僕にウインクすると親指をグッと上向きにだして、目線を王子に向けるとその親指を180度回転させた。
他國の王子に堂々とブーイングをするなと言いたい。
するとディアナがルーベンスの手を下げさせて首を橫に振っている。
そうそう、他國の皇子にブーイングしたらダメだよね。
そう思っていると、ディアナも笑顔で右手の親指をグッと上向きに突き出した。
そして、自分の首の左前に持っていくと、顎をし「クイッ」と揚げる。
上から目線になり、皇子の背中を見つめながら首の前に突き出している親指をスーッと左から右に移させた。
その際、顔の向きをすこし左にするのも忘れない。
顔は笑顔だが、彼のやっていることが一番酷い。
その作は一瞬だったので誰にも見られていないと信じたい。
僕は彼らの笑顔を見てため息が出た。
その様子にレイシスのこめかみがピクっとき、嫌悪溢れた険しい顔になると吐き捨てるように言った。
「……隨分と余裕だな。だが、俺は先ほどのような屁理屈は通用しないぞ」
屁理屈? 先ほど、エリアスと話していたことだろうか? なからず、婚姻においてのメリットを理屈で説明したつもりだ。
もちろんハッタリもしはあるが許容範囲だろう。
そうでなければ、エリアスも興味を持たない。
父上も止めるだろう。
それを屁理屈と一蹴するか。
その時ザックの言葉を思い出した。
『聡明だがノリスに心酔した結果、言に王子として矛盾が見られるようになった』
言葉は正確ではないが、確かこういう容だったはずだ。
さらに、僕はその時にづいた。
(ザックさん、知っていたな?) だから、王子の心を壊せ。
華族の依頼。
などと、重い言葉を言ったのだ。
つまり、僕はザックを引きれたつもりが逆に踴らされて有効活用されたというわけだ。
僕は思わず笑ってしまった。
ザックは一何者なのだろうか。
今度、是非問い詰めたい。
返り討ちに會いそうだけど。
「おい、何を一人でニヤついている?」
「いえ、し思い出し笑いを……」
「ふん。気にらないやつだ」
おお、悪態が凄いぞ。
僕だって仮にも貴族の息子なのに。
何がそこまで彼の目を曇らせているのだろうか?
まぁ、やれるだけやってみるか。
すると、僕と王子の準備が整ったと判斷したのか、エリアスが聲を発した。
「では、これより、リッド殿とレイシスの前試合を行う。ルールはどちらかが敗北を認めるか、どちらかが試合続行不可能と判斷した場合だ」
僕は、ルールを聞くとあることを閃いて、手を挙げて聲を出した。
「エリアス陛下、その案に一つ追加をお願い致します」
「……なにかな?」
質問したことで周りから怪訝な目で注目を浴びる。でも僕は気にせずに続ける。
「僭越ながら、試合続行不可能と判斷できるのはエリアス陛下のみとして頂きたいのです」
「ふむ。それぐらいなら構わんが、私がけ深いと思っているのかね?」
「いえ、せっかくの試合です。エリアス陛下とレイシス王子以外には邪魔をされたくありませんので……」
僕はそう言ってから、チラッとノリスを見た。
ノリスは僕の視線に気づいたようで「忌々しいガキが‼」と言わんばかりの表を僕に向けていた。
エリアスはその意図に気付いたようで、笑みを浮かべて答えた。
「よかろう。どちらかが敗北を認めるか。私が判斷するまで試合は止めん。それでよいな?」
「はい。ありがとうございます」
僕とエリアスのやりとりを見ていたレイシスは相変わらず嫌悪に満ちた表で僕に言った。
「ふん。父上は貴族の息子だろうがけをかける人ではない。この場に立った時點でお前の負けは決まっているのだ。せいぜい、尾を巻いてマグノリアの田舎に帰るのだな」
「……」
「それに、お前の母親は長い期間、病に伏せっているそうではないか? そもそも、病気の一つも治せない病弱な母親を持つお前に剣など握れるのか? 剣を持つより、母親のおっぱいでもしゃぶっているのがお前にはお似合いだぞ?」
レイシスの言葉を聞いて僕の中で何かが切れ始めているのをじる。
恐らくはノリスの差し金だろう。
挑発して失態を引き出せとでも言われたか。
僕の事は良い。
だけど、いまも必死に戦っている母上を侮辱したことは絶対に許すわけにはいかない。
僕はレイシスを無視してエリアスに向かって聲を発した。
「エリアス陛下、開始の合図をお願い致します」
「よかろう。では、前試合始め‼」
◇
ノリスは試合開始の合図を聞いてほくそ笑んだ。
當初の顔合わせでリッドが存在を出したのは誤算だった。
だが、前試合を行いレイシスとリッドを戦わせることには功した。
レイシスは同年代において、レナルーテに敵はいない。
それどころか、すでに大人顔負けの剣を持っている。
レイシスにリッドを憎ませるように刷り込んだ。
きっと、リッドが二度とレナルーテと関りを持ちたくないと思うほどのトラウマを與えてくれるだろう。
そうすれば、リッドはファラ王に相応しくないと國外に吹聴できる。
屬國とはいえレナルーテから上がってくる意見を完全無視はできないはずだ。
そうなれば、王と皇族の婚姻がしだけでも見えてくる。
0を1にすることがまず重要だ。
ノリスは自分の考えが順調に進んでいると思い、笑みを浮かべてレイシスを見て呟いた。
「うまくやってくれよ? 愚かな王子よ」
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後は野となれご令嬢!〜悪役令嬢である妹が婚約破棄されたとばっちりを受けて我が家が沒落したので、わたしは森でサバイバルすることにしました。〜
「すまん、我が家は沒落することになった」 父の衝撃的ひと言から、突然始まるサバイバル。 伯爵家の長女ヴェロニカの人生は順風満帆そのもの。大好きな婚約者もいて將來の幸せも約束された完璧なご令嬢だ。ただ一つの欠點、おかしな妹がいることを除けば……。 妹は小さい頃から自分を前世でプレイしていた乙女ゲームの悪役令嬢であるとの妄想に囚われていた。まるで本気にしていなかった家族であるが、ある日妹の婚約破棄をきっかけに沒落の道を進み始める。 そのとばっちりでヴェロニカも兵士たちに追われることになり、屋敷を出て安全な場所まで逃げようとしたところで、山中で追っ手の兵士に襲われてしまった。あわや慘殺、となるところを偶然通りかかった脫走兵を名乗る男、ロスに助けられる。 追っ手から逃げる中、互いに惹かれあっていく二人だが、ロスにはヴェロニカを愛してはいけない秘密があった。 道中は敵だらけ、生き延びる道はたった一つ。 森の中でサバイバル! 食料は現地調達……! 襲いくる大自然と敵の兵士たちから逃れながらも生き延び続ける! 信じられるのは、銃と己の強い心だけ! ロスから生き抜く術を全て學びとったヴェロニカは最強のサバイバル令嬢となっていく。やがて陰謀に気がついたヴェロニカは、ゲームのシナリオをぶっ壊し運命に逆らい、計略を暴き、失われたもの全てを取り戻すことを決意した。 片手には獲物を、片手には銃を持ち、撃って撃って擊ちまくる白煙漂う物語。 ※この物語を書く前に短編を書きました。相互に若干のネタバレを含みます。またいただいた感想にもネタバレがあるので読まれる際はご注意ください。 ※続編を別作品として投稿しておりましたが、本作品に合流させました。內容としては同じものになります。
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