《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》と護衛の活躍

前試合が思わぬ結果で終わると、エリアス、リーゼル、ライナー、そして當事者の二人は奧の部屋で試合容の審議にった。

ファラとアスナは審議が終わるまで別部屋で休むように言われて観覧席から別部屋に移した。

最初はエルティアも一緒に移していたが、腰がらかいじの華族の男にエルティアだけ呼び止められた。

から先に行くように言われたので、そのまま別部屋に辿り著いて二人はいま休んでいた。

その中、おもむろにファラが心配そうに呟いた。

「兄上とリッド様は大丈夫かしら……」

「怪我などはしていませんでしたから、それは大丈夫と思います。それよりも……」

「……? それよりも?」

アスナはファラの質問に返事をするとし意地の悪そうな顔して尋ねた。

「姫様はレイシス王子とリッド様のどちらを応援していたのですか? やはり、レイシス王子ですか?」

ファラは彼の予想外の質問に驚いて、し顔を赤くして返事をした。

「それは……お二人ともです。お二人とも大切なお方ですから……」

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「レイシス様はわかりますが、そうですか。すでにリッド様も姫様にとっては大切なお方なのですね?」

「へ……あっ‼ ち、違います‼ そういう意味ではありません‼」

アスナはファラの赤くなった表をみて楽しげに笑っていた。

対してファラは赤くなって怒りながら否定している。

だが、ファラの耳が上下にいているのを見て、アスナは確信した。

ファラはリッドになからず好意を抱いている。

ダークエルフの耳はによって、くことがある。

これは個人差があるので誰もがくわけではない。

だが、ファラはダークエルフの中でもが耳に出やすいタイプだった。

もちろん、本人が意識すれば耳のきを抑制することは出來るが、逆に言えば意識していないといてしまうのだ。

そして、上下に耳がく場合は「喜び、嬉しさ、好意、」などのことを意味している。

これが一般人のダークエルフであれば「可い」と評判になるだろうが、彼は王族であり今後、伏魔殿で生きていく存在である。

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が伝わってしまいやすいことは弱點になってしまう。

だからこそ、エルティアは彼に異常とも言える厳しい教育をしているのかもしれない。

アスナはファラをからかい、笑いながらそんなことを考えていた。

一方、からかわれたファラは頬を膨らませてご機嫌斜めになっていた。

すると、襖がスーッと開けられエルティアが部屋にって來た。

部屋にいた二人はすぐにエルティアに向かい一禮をした。

その様子を見たエルティアは二人に対していつも通り冷たく言い放った。

「エリアス陛下にいつまで審議をしているのか聞いてきてください。何か言われれば私から指示をけたと言いなさい。よいですね?」

「はい。承知致しました」

エルティアの言葉を聞くと、ファラとアスナは立ち上がり部屋を後にする。

その時、ファラの背中に向かってエルティアが聲をかけた。

「ファラ。もし、あなたからエリアス陛下に申したいことがあればしっかりと伝えなさい」

「……? 承知致しました」

母上、どうしたのだろう?

私から意見を言いなさいなんて初めて言われた。

ファラはエルティアの意図が分からず首を傾げたが、「早く行きなさい」と言われたので、一禮をしてその場を去った。

そして二人で、エリアスがいる部屋に向かう途中に話し聲が聞こえてきた。

すると、アスナがファラをかばう様に前に出た。どうしたのだろう?

「……ファラ様、真意は不明ですがこちらに殺気が向けられています」

「……わかりました」

アスナはファラを庇いながら、聲の聞こえるほうの様子を伺った。

そこには先程、エルティアを呼び止めたダークエルフの男がこちらを見ていた。

さらに、彼とは別に華族と思われるダークエルフの男もいて二人は何か話しているようだった。

「どうしたのだ?」

「……いや、気のせいだったようだ」

殺気を送っていたのは、こちらを見ていた男のようだ。

アスナは様子を伺いながら聞き耳を立てることにした。

ファラにもそのことを目配せで伝える。

はその様子に首を縦に振った。

「それで、貴殿はどちらに付くおつもりか? ノリス様か、エリアス陛下か」

どうやら男の二人は今回の婚姻における派閥爭いの話をしているようだ。

一人の「男」はし年齢をじさせ、もう一人は細目の男だった。

すると、細目の男が興味なさげに言葉を発した。

「ふむ。まだ、何とも言えないな。どちらにしても我が國の姫が帝國に嫁ぐことは変わらないのだ。皇族でも辺境伯でも、正直どちらでもよいと思っている」

「ふむ。淺はかだな」

細目の男は、「淺はか」と言われ苛立ちの表をした。

「……なんだと?」

「今回の前試合を見たであろう。辺境伯の息子、リッドといったか。圧倒的な実力差がありながら、我が國の王子を痛めつけ、自分の力をこれみよがしに我らに見せつけたとは思わんか?」

「男」から言われた言葉にどこか説得力をじた細目の男は、思案すると呟いた。

「……見方を変えれば、そうかもしれんな」

「それだけではない。辺境伯の息子は恣意的で殘酷。極悪非道の気質があるということだ」

細目の男はさらに思慮深い表になった。

確かに辺境伯の息子が行った行為はある意味、圧倒的な実力差をみせつける殘酷ものでもあった。

「……言い過ぎではないか?」

細目の男の言葉を聞くと「男」は力強く自信の溢れる聲で説明をした。

「そんなことはない。論より証拠が先ほどの試合ではないか。もし、彼が、ファラ王と結婚、我らの國境と隣接する辺境伯の後を継いだらどうなる? 姫が人質となり我らは彼のいいなりになる可能も否定できん。得のしれない気質をもった辺境伯の息子よりも皇族のほうがましではないか?」

細目の男は彼の言っていることにも賛同できる部分があると考えて言った。

「ふむ。……一理あるかもしれんな」

「そうであろう? ノリス様が皇族との婚姻を進めようとしているのは、將來のことを危懼しているからだ。決して権力などではない。是非、力を貸していただきたい」

「わかった。一度、ノリス様の話を伺おう」

「それは、ノリス様も喜びます。では、こちらに……」

そうして、二人はその場を去っていった。

「……もう、行ったようですね。姫様、申し訳ありませんでした」

「いえ、私は大丈夫です……それよりも、リッド様があのように言われていたのは、とても殘念でした……」

ファラはを震わせながら耳を下げ、悲しげに返事をした。

は自分の立場を理解している。

だが、偶然とは言え、いきなり自分の婚姻について第三者に「どちらでもよい」と言われたのはし悲しくてが痛くなった。

は痛みを抑えるようにに手を當て、ゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち著かせた。

そして、気持ちが落ち著いてくると、彼らの會話が鮮明に思い出された。

「……ノリス様は、兄上とリッド様を利用して私を皇族と婚姻させようとしているの?」

ファラは意図せず無意識に思ったことを口に出してしまった。

心配そうな表でファラを見ていたアスナも、ハッとすると先程の男達の會話を思い返して返事をした。

「そのようですね。ノリス様は以前より姫様は皇族と婚姻すべきと申しておりました。會話の容から察するに、「リッド様がレイシス王子を痛めつけた」ということを吹聴しているようですね……」

アスナは剣士としてノリスのしていることに嫌悪を抱いた。

確かにレイシス王子はすぐに負けを認めなかった。

だが、自分より格上の相手に挑み続ける行為にどれだけの勇気がいると思っているのか。

彼らのしていることはリッドだけではない、レイシスも間接的に貶めている。

ノリスが行っている行為は利己的な悪意の塊でしかない。

アスナが険しい顔をしていると、ファラが小さく呟いた。

「兄上とリッド様の名譽の為にも何か出來ないかしら……」

「そうですね……」

二人は男達の會話を思い出しながら狀況を整理していった。

「まず、リッド様がレイシス王子を痛めつけた。というのがノリス達の主張です。これを崩す必要がありますね」

アスナは整理しながらファラに説明した。

はアスナの言葉に頷くと質問をした。

「それは、兄上がきちんと説明をすればどうかしら? そうすれば、問題解決のような気もするの? どうかしら?」

ファラの言葉にアスナは思案すると、首を橫に振ってから答えた。

「恐らく、それだけでは弱いと思います。吹聴される前ならそれでも良いと思いますが、すでに話が広まってしまった以上、リッド様の武には悪印象が殘ります。それに、レイシス王子が言わされているだけで、他國に気を使っているだけとノリスに言われる可能もあります」

「つまり、兄上の証言に加えて、リッド様の悪印象を取り除く必要があるのね……」

ファラの呟いた言葉に、アスナは頷いた。

その時、ファラにひとつの閃きが生まれる。

「……アスナ、あなたリッド様と本気で前試合が出來るかしら?」

「へ……?」

ファラの言葉に呆気に取られたアスナだったが、その理由をファラから聞くと思わず笑ってしまった。

の考えた作戦は驚きのものだった。

兄上であるレイシスから前試合の勝敗について説明を華族全員にまず説明してもらう。

そのうえで、リッドの真の実力を確認する為にアスナと本気で前試合をしてもらうということだった。

アスナとリッドが本気でぶつかりあえば、恐らくレイシスを痛めつけたわけではない。

圧倒的な実力差によって起きた試合容だったことが証明される。

そして、リッドもアスナと全力で試合をすれば真の実力が認知されて評判も上がるというものだ。

心ではアスナもリッドと本気で試合をしたいと思っていたので、これには願ったり葉ったりだった。

「フフフ、いいですね。それで行きましょう」

「決まりね。後は父上と兄上。そしてリッド様を説得するだけだわ‼」

たちはノリスの計畫を破る作戦をまとめるとエリアスのいる部屋に向かった。

その時、ふとアスナは先ほどの男の一人の殺気について思い出した。

(あの殺気の出し方はまるで、そこで黙って聞いていろというじだった…… まさかね?)

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