《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》リッドの多難
「ファラ王、仰っている意味がわかりかねるのですが……」
「実は先日、帝國文化の勉強でマグノリアのメイド服を侍が用意してくれたのです」
ファラはそういうと、キラキラした表で立ち上がり裝を取りにいった。
その様子にアスナは々、呆れ気味だ。
すると、すぐにファラは戻って來た。
そして、手に持って見せてくれる裝は確かに帝國のメイド服だった。
しかも、子供サイズだ。
「どうでしょうか? メイド姿であれば、『リッド様』とばれる心配は低くなりますから」
「……ファラ王、さすがにそれはどうかと……あと私の髪のは目立ちますから……」
僕は先ほどまで城下町に行きたいと言っていた、
だが今は、ファラが持ってきたメイド服にたじろいでいた。
「それでしたら、黒髪の長髪ウィッグがあります。それを、お使いになればどうでしょうか?」
いけない。
逃げ道がどんどん塞がれている気がする。
でも、さすがに貴族としてそんなことをしてばれてしまったら面上で大変なことになってしまう。
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さすがに斷らなければならない。
そう思った時、ファラの耳が下がり、しゅんとした表になる。
そして、僕の目を潤んだ眼で見つめながら寂しそうに言った。
「……私、実はあまり城下町に出たことがありません。さきほど仰った『もしも』が起きたあとでは、リッド様とレナルーテの町を歩くことは恐らく葉いません。……リッド様は、私と出かけるのはお嫌でしょうか……?」
中々に破壊力のある仕草と言葉だ。
ファラのしょんぼりした雰囲気につい「行こう」と言いたくなる、
だがさすがに、メイド姿に裝して出歩くのは危険すぎる。
ちらっとディアナを見て助け船を求めた。
すると、彼は言った。
「……メイド姿に嬉々として裝するならお止めしますが、メイド姿に変裝であれば時と場合によっては有効です。いざと言う時に、私は全力でお止めしたという事実をリッド様が仰って頂ければ私は目を瞑りましょう」
なんと、ディアナは僕に任せて逃げてしまった。
しかも、自分に責任が及ばないようにしているあたりが何とも強かだ。
ディアナはさらに僕に畳み掛けるように言った。
「それに、ファラ王から直々のご提案です。お斷り出來なくても大義名分が無いわけではありません。その時は、ファラ王がご意見を無理やり押し通したということにすればいかがでしょうか?」
ディアナ、君はどっちの味方なのだ? と思わせる言葉を僕に言ったあと、途中からファラ王に向かって丁寧に伝えた。
すると、ファラはなにか「ピン」と來たらしく、しおどおどした表で言った。
「……‼ そ、そうです。これは、王としての『依頼』です。私は今から、城下町に行きますから、リッド様は『メイドに変裝』して護衛をお願い致します……‼」
恐らくファラなりに考えたのだろう。
確かに王からの護衛の依頼でばれない様にメイドに変裝であれば、いざと言う時の大義名分には多はなるだろう。
それでも、ばれたら大変だけど。
でも、ファラは必死な顔で僕を見ていた。
そんな、彼に僕は折れて半ば呆れながら返事をした。
「はぁ……わかりました。メイドに変裝してファラ王の護衛をさせて頂きます……」
「……‼ リッド様、ありがとうございます‼」
僕とファラのやりとりを見ていたアスナとディアナは、二人とも口元を手で抑えてし俯きながら肩を震わせていた。
二人にはいつか何かお返しをしないといけないと思う。
この時、僕は前世の記憶も含めて初めての服に袖を通すことが決まった。
そして、ファラが持ってきたメイド服に著替えることになった。
だが、著方がわからない。
止む無く、ディアナに手伝いをお願いした。
さすがにファラとアスナには著替えを見ないように念押しをしている。
すると、ディアナがしがっかりして言った。
「……殘念ながら、このメイド服はしサイズが小さいですね」
「そうなの? じゃあ、変裝は厳しいよね?」
僕はメイド服のサイズが小さかったことにし安堵していた。
だが、僕たちの會話を聞いたファラが反応した。
「大丈夫です‼ こんなこともあろうかと、侍がもう一サイズ大きいメイド服を用意してくれています‼」
「へ……?」
ファラはすぐに別のメイド服を持ってきてディアナに渡した。
僕に新しく渡されたメイド服は確かにサイズが丁度よかった。
何をもって「こんなこともあろうかと」なのだろうか?
僕はがっくりと項垂れた。
すると、嬉しそうなファラの聲が聞こえてきた。
「リッド様どうですか? サイズ合いましたか? 実は、マグノリアのメイド服を侍にお願いした時に、サイズが合わないかもしれないって一サイズ大きい服も、侍が用意してくれたのです」
「うん、サイズは丁度良いみたい……」
僕はその一サイズ大きいメイド服を用意した侍に対して、逆恨みとわかっていながらも、し怨めしい気持ちになった。
その後、ディアナの手によってあっという間にメイド服を著せられて、気持ち程度の化粧までされた。
用意された黒髪の長髪ウィッグを被らされて、「完しました」とディアナに言われた。
そして、すぐに鏡の前に連れていかれた。
「こ、これが私……?」
僕はお決まりの言葉を言ってみるが、直ぐに我に返って項垂れた。
「リッド様、とても可らしいです‼」
ファラはとても喜んでいる。
アスナとディアナは口元を手で押さえて俯き、また肩を震わせていた。
ちなみに鏡に映った僕は、黒髪長髪、紫の瞳をした可らしいメイドになっていた。
メイド服は黒を基調としており、ロングスカートタイプだ。
確かに、この姿なら誰も僕が、「リッド・バルディア」とは思わないだろう。
再度、鏡を見るとふとあることに気付き、呟いた。
「……こうしてみると、僕ってメルと似ているね」
「はい。リッド様とメルディ様はお二人とも、よく似ておられます」
僕とメルは父上とはそんなに似てない。
どちらかといえば母上に似ている。
將來的にはわからないけど、改めてメルと僕はやっぱり兄妹なのだなと思ってし嬉しくなった。
「……リッド様、失禮でなければ、そのメルディ様というのは?」
ファラが、僕とディアナの會話がし気になった様子で聞いてきた。
「ああ、メルディは僕の妹です。普段はあんまり気になりませんでしたが、こうして見るとその妹に僕が似ていて驚きました」
「リッド様には妹もいらっしゃるのですね。いずれ、お會い出來れば良いのですが……」
そう言ってファラはし表が暗くなった。
僕はこの婚姻が決定であることは知っている。
でも、ファラはまだそうじゃない。
確定に近いと思いつつも、やはりどこか皇族との婚姻の可能も0ではないと思っているのだろう。
そんな、ファラを僕は見據えて明るく言った。
「……『必ず會える』と思います。そして、ファラ王がバルディア家に來て頂けたら、すぐに妹のメルとも仲良くなれると思います」
僕はニコリと笑顔で言った。
あえて、必ずという言葉を使った。
すると、ファラは目を丸くしてから意図に気付いて顔を赤らめた。
そして、耳を上下にさせてから小さく呟いた。
「……ありがとうございます。私もお會い出來るのを楽しみにしております」
その時だった、襖の向こうから兵士の聲が聞こえてきた。
「レイシス王子がいらっしゃいました」
兵士の言葉を聞いた、その瞬間に僕達は固まってしまった。
僕は慌てて、メイド服のままディアナの後ろに隠れた。
すると、足音が近づいて來て襖の向こうからレイシスの聲が聞こえる。
「ファラ、リッド殿が來られたと聞いている。私も挨拶したいのだが、開けても良いか?」
ディアナの後ろに隠れながら僕は真っ青になっていた。
どうやって、この場を切り抜けようと不安になりながら必死に考える僕だった。
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