《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》因果応報の爪楊枝

「クソ‼ こんなことで終わってなるものか、急いで隠し通路から逃げるぞ‼ まとめていた荷を持ってこい‼」

「は、はい‼」

マレインは王國軍が屋敷になだれ込んでくると自室に急いで戻り、執事の男に指示をしていた。

彼は最悪の事態も想定しており、いつでも逃げることが出來るように最低限の荷はまとめていたのである。

ゴロツキ達の數は多い。

兵士達も縄をかけるのに時間がかかる。

の時間稼ぎにはなるはずだ。

マレインは逃げる為の算段を必死に考えていた。

屋敷の隠し通路から出て、真っすぐバルストに逃げれば良い。

レナルーテから直接、行ける國は帝國とバルストの二國のみだ。

だが、バルストに逃げれば船を使うことも出來る。

さらに、バルストと陸続きで獣人國やその先にある宗教國などにも行ける。

逃げ場所はいくらでもあるのだ。

「クク、いざとなればレナルーテのでも、何でも売れば良い。私はこんなことで終わらんぞ……‼ 必ずあの小娘共に復讐をしてみせる」

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彼の瞳には、屋敷に來た集団への憎悪が宿っていた。

「……それは、許すわけにはいかんな」

「……⁉ だ、誰だ⁉」

マレインは聲が聞こえた場所に振り返った。

すると、そこにいたのは逃げる為の荷に抱えて持っていた執事だった。

「お前……」と呟いた彼だが、執事は立ってはいるが俯いており、表を見ることが出來ない。

その時、執事が顔を上げ、マレインを見ながら吐してから呟いた。

「だ、旦那様……お逃げ……く…だ…さい……」

「な⁉ なんだ、貴様‼」

マレインは驚愕した。

執事がに抱えていた荷を落とすと、心臓のある場所から剣先が覗いていた。

そして、誰もいなかったはずの執事の後ろに人影が急に現れたのだ。

現れた人影は全を黒裝束で覆っており、顔を伺い知ることは出來ない。

だが、しだけ見える素が褐であることからダークエルフの可能が高そうだ。

人影は執事がこと切れたことを確認すると、背中から短剣を抜いた。

剣を抜かれた執事はその場に力なく崩れ落ちてだまりを作っている。

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マレインは必死の形相で黒裝束の男を睨みながら言った。

「……貴様、どこの手の者だ? そうだ、金がしいのならいくらでもあるぞ‼ その、鞄の中にっている金を全部やろう‼」

マレインは必死に執事の橫にある鞄を指さしながらんだ。

黒裝束の男はおもむろに鞄を拾い中を調べ始めた。

マレインはその様子にし安堵しながら言った。

「ハハ……その中にあるのはお前のような者には本來、縁のない程の大金だ。それで、私を見逃せ。良い取引だろ?」

黒裝束の男は鞄の中を調べ終わるとマレインをギロリと睨み、吐き捨てるように言った。

「……勘違いするな。この鞄はもらうがお前を見逃すつもりはない。我が主がお前に用があるそうだ」

「な、なんだと‼ グハッ‼」

黒裝束の男はマレインの懐にサッとり込み、みぞおちに拳をめり込ませた。

その衝撃で、マレインはそのまま気を失った。

そして、この日以降、マレイン・コンドロイは消息を絶った。

「いいかげんに起きろ」

聲と同時に椅子に縛り付けられていた男に、大量の水が気付けの為にかけられた。

「……⁉ グッ、こ、ここは⁉」

水をかけられて目を覚ましたのはマレイン・コンドロイだった。

彼に水をかけたのは、ここに連れてきた黒裝束の男である。

マレインは自分のに何が起きたのかを思い出して、目の間にいる黒裝束の男を怒鳴りつけた。

「き、貴様‼ 私が誰だかわかっているのか‼ このようなことをして、ただでは済まんぞ‼」

黒裝束の男は、怒號を出したマレインを憐れむような目で見ると言った。

「……自分の立場がわかっていないのはお前だ。我が主は私のように優しくはない。せいぜい、楽に死ねるように懇願するのだな」

「な、なに⁉」

マレインは男に言われて、自分が椅子に縛り付けられていることに気付いた。

そして、自分が今いる場所の異様さに慄いた。

部屋には窓が無く薄暗い。

部屋の薄暗さに目が慣れてくると、部屋の中に『ある目的』に使う様々なが置いてあることに気付いた。

マレインは黒裝束の男が言った言葉の意味を理解して、歯をガチガチと鳴らし始めた。

そして、許しを請う様に言った。

「悪かった‼ 私が知っていることはすべて話す‼ だから頼む、助けてくれ‼」

マレインの言葉に男は首を橫に振ると言った。

「……もう遅い。お前はやり過ぎた」

男が吐き捨てるように言うと、同時に重いドアが開くような音がマレインの背中から聞こえてきた。

だが、彼は椅子に縛り付けられているため、誰がって來たかわからない。

出來ることは恐怖に震えるだけだ。

「……カペラご苦労だったな」

「いえ、予想外の騒ぎが起きたので、いつもより簡単でした」

「フフフ、彼はんな所で本當に活躍してくれる」

(この聲は聞いたことがある、誰だ⁉)

マレインは背中から聞こえる男の聲に聞き覚えがあった。

その顔をまだ知ることはできない。

だが、一つわかったことがある。

二人のうち一人はカペラという人らしい。

「カペラ、すまないがし付き合ってくれ。今から取り調べをするからな。一人だと萬が一でも聞き逃すと大変だ」

「……意」

『取り調べ』という言葉を聞いた瞬間、マレインの張が走った。

足音がしずつ近づいてきた。

男は近くにあった椅子をマレインの前に置いて座ると足と手を組んで見據えた。

男の顔をみてマレインは絶しながら呟いた。

「……ザック・リバー…トン」

「初めまして……では、無かったかな?」

ザックはマレインの返事につまらなさそうに答えた。

なんとなくではあったが、マレインは予想していた。

だが、まだ助かるかも知れない。

最後まで命だけは助かるのではないか?

と思っていたが『ザック』が來た時點でそのみは絶たれたのだと悟った。

そして、意気消沈した様子でマレインは言った。

「……すべて話す。だから、せめて楽に死なせてしい……」

「……フフフ、良い心がけだ。だが、貴殿の話すことをすべて私が鵜呑みにすると思うのかね?」

ザックはマレインに向かって、冷酷で殘酷な言葉を浴びせた。

「貴殿は自分のことをわかっていないようだな。貴殿が自ら出す言葉に信用などない。私が貴殿の言葉で信用に値すると判斷するのは『死を懇願する為に吐く言葉』だけだよ……」

言葉を言い終えるとザックはにっこりとマレインに笑顔を見せた。

その笑顔にマレインの表は凍り付いた。

「だが、まぁしは手加減してやろう。カペラ、爪楊枝がそこにあるだろう? 取ってくれ」

カペラはザックに言われた通りに爪楊枝が沢山ったを持ってきた。

ザックはけ取ると、爪楊枝を一本手にしてから満面の笑顔を見せた。

そして、その笑顔のまま優しくマレインに言葉をかけた。

「君とノリスには散々、苦労させられたからね。まぁ、憂さ晴らしもしあると先に言っておこう。せいぜい、泣いて本心を聞かせてくれたまえ……」

「ま、まて、何でもすべて話すと言ったのだぞ‼ 頼む、許してくれ‼」

「……安心したまえ。爪と指の間は両手、両足合わせて20カ所もある。全部使い終わる頃には私も貴殿の言葉が真実だと思う様になるだろう。さぁ、まずは記念すべき最初の一本目だ……」

「や、やめてくれ‼ やめろ、やめろ‼ やめてくれぇえええええええ‼」

ザックが言い終えたあと、マレインがされたことは筆舌に盡くし難い。

彼の悲痛なびは外にれない部屋の中でずっと続いていた。

マレインのび聲が止むとカペラはザックに対して、呆れた様子で言った。

「……ザック様、毎度のことですがお遊びが過ぎます」

「ふむ、そうかね? 大分、優しくしたつもりなのだがね……」

ザックは首を傾げながら呟いていた。

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