《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》反省と諫言と目指す道

「ふぅ……ここまで來れば大丈夫かな」

僕、ディアナ、エレン、魔の二匹はマレイン・コンドロイの屋敷に兵士達がなだれ込んできたタイミングで、その場からバレないように去った。

勿論、ファラやアスナ、クリスも承知している。

そもそも、ここは帝國でもなければバルディア領でもない。

そんな所で騒ぎを起こしてしまえば様々な問題が起きかねない。

強固な反対派はノリスの失腳により表には出ないだろう。

それでも、僕が隙を見せれば足を引っ張ろうと狙ってくる者は必ず出てくるものだ。

僕の言葉に反応したエレンは返事と合わせてある質問をしてきた。

「そうですね。屋敷から大分離れましたからね。でも、ティア様はどうして最初に『殺しちゃダメ』なんて指示出したのですか?」

「うん? 簡単だよ。皆を守る為だよ」

「……どういうことですか?」

エレンは僕の答えに首を傾げていた。

そこで僕は説明を始めた。

第一に、ここはレナルーテ國であり僕とディアナは他國の部外者だ。

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その部外者が、國の華族に手を出せば當然、國際問題になる。

例えゴロツキであったとしても華族が雇った存在であれば、雇った華族側の言い分次第で問題になる恐れがある。

特に僕はこの國の一部の人達にはよく思われていない。

死傷者を出そうものなら、ここぞとばかりに責めてくるだろう。

それに、ゴロツキの中に家族がいる者だっているはずだ。

人に武を向けた以上、殺されても仕方ない。

それはそうだと思う。

でも、當人同士はそれでよくても、周りが納得しないことだってある。

けは人の為ならず」ということである。

勿論、僕自が「人の命」を簡単に奪いたくないという思いも強い。

その説明をすると、エレンは呆れたように言った。

「はぁ……考えは立派ですが、それを支える皆さんのことも考えたほうが良いですよ?ティア様の周りにいる人が皆、ディアナさんやアスナさんのような人ではないですからね?」

「そうだね。今回は僕も反省しているよ」

エレンの言葉に頷きながら僕はディアナを見た。

はほぼ無傷だが、メイド服がボロボロであられもない恰好になっている。

ディアナが倒した鉄仮面もしずつではあるがディアナのきに順応していたのだ。

もしもっと戦いが長引けば、彼が負傷していた可能だってあった。

僕は、改めて自分の行に軽率な部分があったと反省しながら、ディアナに謝った。

「ディアナ、無理させてごめんね」

「……ティア様、主人であるあなたが私達に謝る必要はありません。ティア様はご自が信じたことなさってください。もし、それに誤りがあれば私は諫めます」

ディアナは僕の目を優しくも力強く見據えて言葉を紡いだ。

「ですが、今回は違います。ティア様は自らの領土を良くするため、國と國の繋がりを考えて行したのです。騎士であれば、そのような主人と共に道を歩けることは譽です」

僕はディアナの言葉を黙って聞いていた。

「……それにいつか、ティア様は本當に厳しい判斷をせざるを得ない時が來るでしょう。その時に必要なものは確固たる信念です。今回はそういったことを學ぶ良い機會なったと思います。……差し出がましい事を申しました。申し訳ございません」

は言葉を言い終えると、僕に頭を下げた。

「……いや、大丈夫だよ。ディアナありがとう。……でも、そんな厳しい判斷はしたくないな」

僕は苦笑しながら返事すると、ディアナは表を引き締め凜とした聲で言った。

「……諫言失禮いたします。ティア様、『したくない』は許されません。あなたは『しなければならない』立場にいずれなるのです。今回のことも『する』と決めたのはティア様ご自です。反省はしても後悔はしてはなりません。どんなに辛いことがあってもティア様は前を見なければなりません。それがティア様の背負う將來のお立場です」

「……わかった。その通りだね。さっき言ってもらったばかりなのに、ディアナには助けてもらってばかりだね……」

ディアナの言葉がにとても深く刺さったのをじた。

僕には前世の記憶があるけど、その世界は平和だった。

人の命について考えることなんてほとんどない世界だった。

その覚が今もある気がする。

でもこの世界は違う。

前世でやったゲームに酷似している世界であっても、人の生き死にある現実には変わりない。

ひとつ間違えば死と隣合わせの世界だ。

なからず、僕の前世の記憶にある世界より、命の重さが軽いのは確かだ。

でも、僕はそれでも無意味に人の命を奪いたくはない。

そう思いながら僕は自然と呟いた。

「……どうすれば、人の命を守れるように出來るかな……」

僕の言葉にディアナはし目を丸くしたが、すぐに返事をくれた。

「リッド様、『人の命を守りたい』というお言葉、とても立派でございます。なれば、大切に出來るようにリッド様が誰よりも『強く』なれば良いのです」

ディアナは優しく、諭すように言葉を紡いでくれた。

「勿論、強さとは一つではありません。武、知略、戦略、政治力、財力、様々な『強さ』を磨けばいずれリッド様の『目指す道』も見えてくると存じます」

「……そうか、そうだね。悩んでいてもしょうがない。ディアナの言う通りもっと『強く』なれるようにまずは頑張るよ」

僕は笑顔になりディアナに返事をした、彼は僕の顔をみて微笑んでいた。

その時、エレンが頷きながら會話にって來た。

「うんうん、なるほど。ティア様はさらに常識を突き抜けるおつもりなのですね」

「……人の事を非常識みたいに言わないでよ」

僕の言葉はサラッと流してエレンは言った。

「いえいえ、それより気になったのですが……ティア様の本當の名前は『リッド』様なのですか? 隨分とその、男の子っぽいじの名前ですね」

エレンの言葉に僕は「あ⁉」と思いディアナを見た。

そう先程、ディアナは僕の事を「リッド」と呼んだのだ。

ディアナは顔を橫にして僕と目を合わせるのを拒んだ。

僕は隠し通すつもりだったのに思わぬ所でバレてしまって頭を抱えた。

その様子をエレンと魔の二匹はきょとんとした様子で見ていた。

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