《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》迎賓館に帰る道
「リッド様、そんなにビクビクしなくても良いのでは?」
「……いや、ディアナも見つかったらただじゃ済まないよ?」
ディアナが僕に呆れた様子で言ってきたので、僕は困った顔をして返事をしていた。
ニキークの屋敷から迎賓館に帰る途中、ずっと僕は頭を抱えていた。
本來であればファラの従者として城を出りするはずだった。
なのに、マレインの屋敷で別れてしまった。
このまま城に戻ると父上に恐らく見つかって大変なことになる。
そんな僕を見た後、ディアナはクリスに振り向き言った。
「それでしたら、クリス様がリッド様に用事があるとお伝えして私達も一緒にれば良いのではないでしょうか?」
「へ……? 私ですか?」
ディアナから思いもよらない話を振られてクリスはきょとんとした顔をしていた。
確かに、クリスが僕に用事があるから迎賓館に行くといえばすんなりれるはずだ。
こうなれば一度、迎賓館に戻ってからファラ達の所に行くべきだろう。
僕もクリスの顔を見て言った。
Advertisement
「ごめん、クリス。協力してもらっても良い?」
「はぁ……わかりました。でも、次からはこんな無茶なことはしないようにして下さいね」
「……うん、気を付ける。ありがとう」
クリスはため息を吐きながら「やれやれ」と言った様子で城の門に僕達を先導してくれた。
門番の兵士がクリスを止めるが、迎賓館のバルディア家の関係者であることを告げるとすぐに通してくれた。
僕は小聲でクリスに「ありがとう」とお禮を言った。
クリスはし呆れたような表しながら頷いていた。
城にり、し歩いたところで迎賓館が見えてきた。
これでようやく何とかなる、そう思った瞬間に聞いた事のある聲が聞こえた。
「見つけたぞ‼ ティア‼」
見つけた? 僕の事を知っている人でしかもこんな呼び方をするのは誰だろう?
そう思いながら聲の主を探すと僕はの気が引いて真っ青になった。
そこに居たのは、なんとレイシスだった。
彼は腰に手を當てながら指をこちらに指していた。
Advertisement
僕は正がバレないか、おどおどしながら答えた。
「レ、レイシス王子、どのようなご用件でしょうか?」
「いやその、べ、別にお前が戻ってくるのを待っていたわけじゃないぞ‼」
なんだか凄く気になる言い方をレイシスがしたのは気のせいだろうか?
ともかく、僕はこの場を去りたい一心で逃げるように言った。
「申し訳ありませんが、この後の仕事が立て込んでおります。ご用件が無ければ失禮致します……」
言い終えるとレイシスに一禮してそそくさと、僕は迎賓館に向かおうとした。
「い、いや待て‼ ある、用ならあるのだ‼」
「……どのようなご用件でしょうか?」
多分、僕は今まで一番と思えるほど嫌な顔をしていたと思う。
だが、レイシスはそれでも怯まずに言ってきた。
「お、お前と二人で話がしたい……‼ か、勘違いするなよ? 決してお前のことが気になっているわけじゃないからな⁉」
「へ……⁉」
僕はレイシスの言葉に呆気に取られて、目を丸くした。
そして、彼の言葉の意図に気付いての気が引いて真っ青になった。
ゆっくりとディアナとクリスの顔を見ると、二人ともスッと顔を背けた。
とりあえず助けは期待できないことはわかった。
僕は深呼吸をしてからレイシスに言った。
「……大変ありがたいおいなのですが、私も仕事がありますのでまた後日にしていただけないでしょうか?」
レイシスには大変悪いが後日になれば、「ティア」というメイドはこの世界から消えてしまう。
彼の心を一番傷つけなくて済むはずだ。
「そ、そうか? いや、でも、す、しだけならどうだ⁉ 時間は取らない。ディアナ殿はどうだろうか? レナルーテの王子としてお願いなのだが……」
(レイシス‼ こんなことで王子の権力を使うな‼) 僕は心の中でび、ディアナに斷ってしいと必死に目で訴えた。
だが、彼から帰って來た目の返事は「ごめんなさい」だった。
「……わかりました。短時間でしたら、大丈夫かと思います」
「……‼ すまん、ディアナ殿、恩に著る‼ さぁ、ティアこっちに來てくれ」
「……は…い」
僕は口から魂が抜け出ていくような覚を味わい真っ白になりながら、レイシスに腕を摑まれて彼の導くままに移した。
◇
気が付くと移した先にあったのは大きな桜の木だった。
それを見た僕は、ファラがそういえばしがっていたなと思っていた。
そして橫を見ると、ファラが……居なかった。
何故かレイシスがいた。
僕は正気を取り戻してげっそりした。
だが、そんな僕の様子に気付かない彼は目を輝かせながら言った。
「ティア、おま……じゃない。君にこれを見せたかったのだ」
「……そうですか。凄く綺麗な木ですが、何故これを私に見せたかったのですか?」
僕は心を鬼にして冷たく、興味ない素振りを見せた。
ごめん、レイシス。でも、きっとこれが君の為なんだ。
だが、その様子にも彼は挫けなかった。
「……す、すまない。私が強引過ぎたな。だがきっと私は君に惹かれていると思う。だから、どうしてもこれを見せたかった‼」
彼のあまりに熱すぎる視線に僕はたじろぎながらも返事をした。
「そ、それは、何かの勘違いだと思います。そもそも、私とレイシス王子が出會ったのは今日の朝だけではないですか? それは、惹かれていると思い込んでいるだけかと……」
僕は必死に丁寧に冷たく突き放した。だが、彼の目に宿ったはまだ熱いままだ。
「……私もそう思った。だが、母上に相談をしたらこれはだと教えてくれたのだ‼」
「へ……? リーゼル王妃ですか? な、なにを言われたのですか?」
レイシスは自分の発言に興味を持ったのがよほど嬉しかったのか、リーゼルに何を言われたのかを教えてくれた。
「ティア」と初めて出會った後、彼はの鼓と高まりが収まらなかった。
悩んだ末に彼はリーゼル王妃に事の顛末と自の狀況を話した。
すると、王妃は「あなたにもそんな人が出來たのね」と大変喜んだらしい。
王妃はレイシスに、その気持ちは「」であり、好きな人が出來た証拠と言われた。
その瞬間、雷が落ちたように彼は理解した。
これが「」なんだと。
母上にどうティアに接すれば良いか相談した結果、まずはお互いを知ることから始めるべきと言われた。
そこで、この話し合いの場をどうしても作りたかったらしい。
僕は、レイシスからの説明を聞いてがっくりと俯いた。
王妃が子を思う母としての気持ちに、何も間違いはなかったと思う。
だけど、これは絶対に勘違いだ‼
恐らく、レイシスは初めて帝國出で年齢が近いの子(違うけど‼)に出會って戸っただけだ。
それを、一番信用している母親に「」と言われて壯大な勘違いをしている。
だが、これは由々しき問題だ。
何故なら彼は思い込みが激しい。
彼は説明をしながらも熱い視線を僕に送っていた。
そんな彼に諦めてもらうにはどうすれば良いか僕は考えた。
その結果、とても心が痛いが無理難題を吹っ掛けて諦めてもらおう。
僕はそう思い、冷たく、突き放すようにゆっくりと言葉を紡いだ。
「……レイシス王子のお気持ちは理解致しました。しかし、失禮ですが私は弱い王子には興味がありません」
「……弱い王子だと?」
彼の目に怪訝なが燈る。
僕は遠慮せずに続けた。
「はい。レイシス王子、あなたはリッド様に敗れました。それも完無きまでに。そのような時に、思い込みでの子になどと良く言えるものです。その前にすべきことがあるのではないでしょうか?」
「……君は意外と辛辣なのだな。最初に出會った時とはまるで違う。でも、さすが私がした人だ! そのようにハッキリ言ってくれる君のような人こそ私は求めているのだ……‼」
レイシスが言った言葉を聞いた途端、背筋に悪寒が走った。
何を言っているのだ、この王子は‼
僕は後ずさりしそうになるが踏ん張り言った。
「なからず、リッド様より強くなってからだの何だのと仰ってください」
「……ひょっとして、君はリッド殿が好きなのか?」
「へ……? ゴ、ゴホン。はい。そうです。お慕いしております。ファラ様とリッド様が婚姻されてもその気持ちは変わりません。思いの形とは人の數だけあります。なので、諦めて下さい」
僕はレイシスの思いもよらない言葉に乗っかった。
だが、彼は落ち込むどころか目のが強くなっていた。
「……わかった。私はリッド殿を超えられるように日々修練を欠かさない。元々、リッド殿にはいずれ再戦を願い出るつもりだった。いずれ彼を超えた時に再度、君に會いに行く。その時にまた今の質問をさせてしい」
「へ……? そんなことしても、何も変わらないと思いますよ……?」
「ふふ、わかっている。これは私の意地だ。ありがとう、こんな気持ちになれたのは初めてだ。とは素晴らしいな」
レイシスは清々しい顔をして遠くを見ていた。
良くわからないが自己完結してくれたらしい。
「すまん、そろそろ時間だな」
彼はそういうと、ディアナ達と別れた迎賓館の前まで僕を送ってくれた。
「……ティア、私は必ずリッド殿より強くなって見せる。その時にまた先程の質問をさせてしい」
彼は去り際にそう言い殘すと僕達の前から去っていった。
その時、僕は真っ白な砂になって崩れたい気分だった。
僕達の様子を見ていた、クリスとディアナの二人は茫然としていた。
やがて、ディアナが呆れた様子でおもむろに言った。
「……王子と王のご兄妹揃って落とすのはさすがに非常識かと……」
「……⁉ 違う‼ レイシスは勘違いしているだけだ‼」
僕の言葉にクリスとディアナは憐みの視線を送っていた。
二度と「ティア」になることはないし、絶対にレイシスとは再戦しないと僕は心に誓った。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます!
もし、しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、
差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。
評価ポイントはモチベーションに直結しております!
頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張る所存です。
これからもどうぞよろしくお願いします。
※注意書き
攜帯機種により!、?、‼、⁉、など一部の記號が絵文字表示されることがあるようです。
投稿時に絵文字は一切使用しておりません。
絵文字表記される方は「攜帯アプリ」などで自変換されている可能もあります。
気になる方は変換機能をOFFするなどご確認をお願い致します。
恐れりますが予めご了承下さい。
冥府
山中で夜間演習中だった陸上自衛隊の1個小隊が消息を絶った。 助け出そうと奔走する仲間たち、小隊を付け狙う地獄の使者、山中一帯に伝わる古い伝承。 刻々と死が迫る彼らを救い出すため、仲間たちは伝承に縋る。 しかしそれは、何の確証も一切ない賭けだった。 危機的狀況で生きあがく男たちの戦いを描きます。 カクヨムにも掲載しています。
8 140Waving Life ~波瀾萬丈の日常~
※題名を変更しました。 主人公、蔭山 剣也(かげやま けんや)が多くのヒロインと引き起こす、波亂萬丈の青春ラブコメディー。 岸川 蘭華(きしかわ らんか)は、いつも一緒に遊んでいた幼馴染。 皆田 絵里(みなだ えり)は、実は小學校時代に不良の自分を救ってくれた恩人。 そんな2人から入學して僅かの間に告白される。 そして更に、蘭華は留學することになり更なる問題に直面する。 その他沢山の問題にぶつかっても挫けずに頑張る主人公やヒロイン達に注目! 多くのヒロインと関わることで、主人公の感情は変化していく! 戀愛もの好き必見‼︎ ジャンル別日間最高19位、週間65位の作品です。
8 197甘え上手な彼女
普通の高校生、八重高志(やえたかし)は新學期に入って間もないとある日、同じクラスの宮岡紗彌(みやおかさや)に呼び出される。 「単刀直入に言うけど、付き合って」 「えっと、どこに付き合えば良いの?」 クールで男を寄せ付けない、そんなヒロインが、主人公にだけは甘えまくりの可愛い女の子。 そんなヒロインに主人公はドキドキの連続で毎日が大変に!? クールで甘え上手なヒロイン宮岡紗彌と、いたって普通な高校生八重高志の日常を描いた物語!! 2018年6月16日完結
8 160男がほとんどいない世界に転生したんですけど
部活帰りに事故で死んでしまった主人公。 主人公は神様に転生させてもらうことになった。そして転生してみたらなんとそこは男が1度は想像したことがあるだろう圧倒的ハーレムな世界だった。 ここでの男女比は狂っている。 そんなおかしな世界で主人公は部活のやりすぎでしていなかった青春をこの世界でしていこうと決意する。次々に現れるヒロイン達や怪しい人、頭のおかしい人など色んな人達に主人公は振り回させながらも純粋に戀を楽しんだり、學校生活を楽しんでいく。 この話はその転生した世界で主人公がどう生きていくかのお話です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ この作品はなろうやカクヨムなどでも連載しています。 こちらに掲載しているものは編集版です。 投稿は書き終わったらすぐに投稿するので不定期です。 必ず1週間に1回は投稿したいとは思ってはいます。 1話約3000文字以上くらいで書いています。 誤字脫字や表現が子供っぽいことが多々あると思います。それでも良ければ読んでくださるとありがたいです。 第一章が終わったので、ノベルバでこの作品を更新するのはストップさせていただきます。 作者の勝手で大変申し訳ないです。 続きを読みたいと言う人は……是非カクヨムなどで見て欲しいです。
8 197付き合って結婚した後
「付き合ってから結婚するまで」のスピンオフ作品です! こちらでは主人公の五十嵐優人とヒロインの工藤陽菜が結婚した後の新婚生活、子育て、イチャイチャや他の友達の生活を投稿していきます! ちなみに、名言やはっきりした起承転結はありませんのでよろしくお願いします。
8 50幽霊公女(プランセス・ファントム)
退廃の空気ただよう世紀末のパリ。人ならぬものの血を引く美しい公爵令嬢が、二人の契約魔をしたがえ、闇夜にひそむミステリーを解く物語。主人公は見た目はお人形のように綺麗ですが、面倒くさがりのけっこうイイ性格です。俺様で過保護なインキュバスや、悪運の強い貴公子(煮ても焼いても食えない性格と體質)との戀とか愛とかもあったりなかったり。 R15は保険です。 偶數日ごとの投稿です。
8 87