《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》ザックとカペラ
「カペラ、お前には苦労を掛けるがよろしく頼むぞ」
「……承知致しました」
カペラとザックは、ライナーやリッドとの會談が終わると迎賓館の執務室に移した。
今、二人は機を挾んで対面に座りながら會話をしている。
その中で、ザックはし悔しそうな顔をしながら呟いた。
「リッド君はやはり侮れんな。お前にあの場で忠誠を誓わせるとは思わなかった」
「……あの場の忠誠は今後の任務にしばかり支障は出そうですが、そこまでの影響はないかと存じます」
ザックは彼の言葉に靜かに頷いた。
カペラをリッドの従者にすべきとエリアスに進言したのはザックだった。
本來、カペラは將來的にレイシスの影となり、ザックの後継者となる予定だった。
だが、ザックはそれよりもリッドの影としてカペラを送り込むことこそ、國とリバートン家の繁栄に繋がると考えていた。
リッドがファラと婚姻して長すれば將來、レナルーテの立場すら何かしら変化が生まれるのではないか?
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彼はそうじさせる神であり、麒麟児だった。
「……しかし、リッド殿が神であることは疑いませんが、頭目がそこまで惚れ込むのは何故でしょうか?」
カペラは無表のまま尋ねた。
彼はリバートン家が管理する「忍衆」の中で実力が最も優れた存在だ。
それを、他國の従者にするということは自國の戦力を落とすことにも繋がる。
リッドにはそれだけの魅力があるということだろうが、彼にはそこまでの人とは思えなかったのである。
彼の怪訝な表を見たザックは笑みを浮かべて言った。
「それはもちろん、私の筋のエルティアの絵に見惚れた上、ファラを大切にしてくれるのであれば、それだけで十分ではないかな?」
「……頭目、茶化さないで下さい」
カペラは無表で苦言を呈した。
その様子にザックは「やれやれ」とおどけた様子で説明を始めた。
「つまらん奴だな。まぁ良い。惚れ込む理由は簡単だ。彼が今のまま長すれば、いずれ甘さも消えるだろう。そうなったとき、彼はレナルーテにとって帝國とバルスト、他の他國に関しても抑止力となる人になるだろうと私は見込んでいる」
「……彼はあくまでも帝國人です。我ら、ダークエルフの為にいざと言う時にくでしょうか?」
ザックの言うことはわかる。
だが、カペラはいざダークエルフの為にリッドがくかどうかについては懐疑的だった。
ザックはカペラの言わんとしていることに気付くと、笑みを浮かべて言った。
「その點には関しては心配いらん。彼の母親は病に倒れており、その治療方法を必死に彼自も探しているそうだ。それだけ、家族に対する思いが強いのであれば婚姻後はファラに関わる問題が起きれば積極的に參加してくるはずだ。 ……まぁ、そうなるようにお前を行かせるのだがな」
言い終えた後のザックの表は諜報機関を統べるに相応しい冷徹なものであった。
カペラは自分に言われたことを察した。
『リッドを手懐けろ』ということだろう。
ノリスがレイシスにした事と容は同じだ。
だが、もっと本の部分に沁み込ませる。
そして、本人や周りが気付かないように行い、ある種の洗脳をしろというということだ。
カペラは思案してから呟いた。
「……彼が見せた『魔法』については良いのですか?」
「あれは、副産程度と思って良い。それよりも、ファラとリッド君の仲を取り持つことを優先しろ。あの二人がより良い形に収まれば、自然と我らに恩恵も來るはずだ。まぁ、先行投資というやつだな」
無表のまま、カペラは心驚いていた。
リッドが見せた魔法は相當に強力なものだった。
それすらも副産であると言う。
ザックは今後、リッドがもっと凄い何かをすると睨んでいるのだろう。
「……承知致しました。リッド様とファラ王のお二人がうまくいくよう取り計らうように致します。ちなみに、バルディア家の報はいかが致しましょう?」
「それは必要最低限でよい。お前の目的はリッド君もといバルディア家の『信頼と信用』を得ることだ。警戒されている中で下手に報を流して見すれば、お前の価値が無くなる。それよりも従者に徹しろ。 ……信頼を得る為なら聞かれれば『忍衆』について話しても構わん」
さすがのカペラも「忍衆」について話しても良いと言われるとは思っていなかった。
「忍衆」を話せるのはザックが実力を認めた相手だけに限られているからだ。
彼はしだけ眉を「ピクリ」とかしてから返事をした。
「リッド様の『信頼と信用』を得られるように命を盡くします」
「うむ、宜しく頼む。 ……しかし、今後はバルディア家に仕えるのだぞ? しは表筋もかせ」
無表で會話をするカペラに対して、ザックは苦言を呈した。
彼は戸い、困ったような雰囲気を出した後に、「……こうでしょうか?」とぎこちない笑みを浮かべた。
その顔を見たザックは珍しく顔を引きつらせたあと、咳払いをした。
「ゴホン……お前にとっても良い機會になるかもしれんな。もうし『笑顔』の訓練はしておけ」
「……意」
凄腕の影であるカペラはこの日からリッドに仕えるまでの間、必死に笑顔の練習をする日々となった。
彼を知る者からすればその姿はとても稽で、一度見たら忘れられない顔だったという……
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