《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》リッドとファラ
今、僕達は本丸殿の表書院に來ている。
ここに初めて來た時に案された場所だ。
昨日は々あり過ぎた結果、最後は父上にしこたま怒られて終わった。
その後、自分の部屋でベッドに橫になるとそのまま意識が無くなった。
気付くと朝になっており、ディアナに起こされて目を覚ました。
彼も昨日は父上に怒られたのだが、すでに気持ちを切り替えている様子だ。
僕が寢ぼけて「ボーっ」としていると、エリアスから僕と父上が呼ばれていると報告をもらい、急いで準備して本丸殿に移した。
そして、いまに至っている。
バルディア家からこの場にはいるのは父上、僕、ディアナの三名だ。
部屋に案された時にはすでに、エルティアとファラとアスナの三人が先に待機していた。
だが、ファラとエルティアの間には何やら張が漂っている。
アスナはファラの橫で靜かに佇んでいた。
僕は二人の様子を気にしつつも軽く挨拶を行ってから、頭を下げてエリアスの室を待っていた。
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その時、兵士が高らかに聲を出した。
「エリアス陛下がお見えになられました‼」
兵士の言葉が響くと襖が開き、足音が聞こえた後に椅子に座る音がかすかに聞こえた。
し間があった後、威厳のある聲が響いた。
「苦しゅうない、面を上げよ」
聲がした後、僕達は頭をゆっくりあげた。
エリアスは僕達を見ると厳格な表を崩して笑みを浮かべた。
「話は聞いていたが、リッド殿の調はもう大丈夫そうだな」
「はい。特に問題はありません。ご心配頂きありがとうございます」
言い終えると僕はその場で一禮をした。
その様子を見たエリアスは「よいよい」と言いながら言葉を続けた。
「本來、謝罪せねばならんのはこちらだ。ノリスの行ったことは貴殿らにとっては許されざることだろう。我が國としても許すことは出來ない、追って斷罪する予定だ。リッド殿には、我が國の華族がしたことで気分を害したであろう。本當に申し訳なかった」
エリアスは僕と父上にそれぞれの顔を見てから、頭を下げた。
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その姿に周りがざわついた。
一國の王が頭を下げるなど普通はあり得ない。
父上は咳払いをしてから、エリアスに向かって言った。
「エリアス陛下、頭を上げ下さい。ノリスの件はしかと『斷罪』して頂けるのであれば、我らから言うことはありません」
「僕も彼を許すことは出來ませんが、『斷罪』が決まっているのであれば父上同様、言うことはありません」
僕達の言葉を聞いたエリアスは顔を上げると笑みを浮かべながら言った。
「そう言ってもらえると助かる。奴の『斷罪』は貴殿らの來訪が終わり次第、行う予定だ。容は追って伝えよう」
「……承知しました。ところで今日、こちらに我々が招かれた理由はノリスの謝罪の件なのでしょうか?」
父上は返事をした後、怪訝な表をしながら本題について尋ねた。
僕も、ノリスの件は本題ではないと思う。
ノリスの件だけなら、この場にファラやアスナ、エルティアはいらない。
何の話だろうか? と思った時、エリアスが僕をちらっと見てニヤリと笑った気がした。
「うむ。もちろん、本題は別だ。ファラとリッド殿の婚姻の件だ。今回の一番の目的は両者の顔合わせだったからな」
エリアスの言葉を聞いたファラは顔をし赤くして俯いた。
彼の耳はし上下にいている。
ファラをチラッと見たエリアスは、咳払いをして言葉を続けた。
「ゴホン……リッド殿はまだ『候補』ではあるが我が國としては是非とも、ファラとの婚姻をしてしいと思っている。國同士の繋がりである故、この場で決定といかないがマグノリア帝國にはバルディア家との婚姻にて進めてもらうよう打診するつもりだ」
「エリアス陛下、有難いお言葉ありがとうございます。私も國に戻りましたら、その旨をすぐに帝都に連絡を致しましょう。我が國の皇帝陛下もお喜びになると存じます」
父上はエリアスの言葉に丁寧に了承の返事をすると一禮をした。
僕もそのきに合わせて頭を下げた。
その時、チラッとファラを見ると、顔を真っ赤にしながら俯いて、耳が上下にいていた。
喜んでくれているのかな? と思うと嬉しくてし自分の顔が綻んだ気がする。
その時、今まで沈黙をしていたエルティアがおもむろに口を開いた。
「……エリアス陛下、よろしいでしょうか?」
「うん? どうしたエルティア、何か不服があるのか?」
エリアスは怪訝な表でエルティアを見るが彼はじず、僕を鋭い目で見據えながら言った。
「ファラはレナルーテ國の『王』です。マグノリア帝國において『辺境伯』は皇族の次點の位に準ずることは存じております。ですが、我が國の王族と縁を結ぶ以上、この場でその王と婚姻をする覚悟を宣言して頂きとう存じます」
「へ……?」
僕はエルティアの発言に呆気に取られた。
周りにいた面々も同様にエルティアの発言に半ば茫然としていた。
すると、エリアスが咳払いをしてから言葉を続けた。
「ゴホン……エルティア、気持ちはわからんでもないが私はリッド殿からファラと婚姻をしたいという申し出を直接けている。そして、その理由も聞いているのだぞ? それで、十分ではないか」
「……それは、エリアス陛下しか聞いた者がおりません。それに、婚姻をする前提で今後は國同士がくのでしょう? リッド殿が陛下にした申し出の容をこの場で再度、宣言して頂き、この場にいる者が証人となれば繋がりはより強固となると存じます」
エルティアは丁寧かつ流暢に言うとエリアスに向かって一禮した。
彼の言葉を聞いたエリアスは思案するようなそぶりを見せる。
そして、意地の悪そうな笑みを浮かべながら僕を見據えた。
「ふむ、確かに國同士が婚姻に向けてくのであれば先日、リッド殿が私に言った言葉をこの場で宣言してもらうことに支障はないか…… リッド殿、申し訳ないがあの時、私に言った言葉をこの場で再度、宣言してもらえるかな?」
確信犯だ‼
言い終えた後のエリアスが浮かべたニンマリ顔に僕は心なしか殺意を覚えそうになった。
ふと、周りを見た時、ファラと目が合った。
彼は顔を真っ赤にしながら耳を上下にかしていた。
彼の目には大きな期待と若干の不安があるように思える。
橫に佇んでいるアスナは、ファラのその様子をみて微笑んでいた。
「リッド、エリアス陛下が仰っている以上、この場で発言しても問題ないのであろう? お前の言葉で両國の繋がりが強固になるのであれば、宣言するべきだろう……」
父上は僕を見據えながら優しく諭すように言葉をかけてくれた。
そして、その目からは「諦めろ」という言葉がありありと伝わって來た。
ちなみに、父上には僕がエリアスに何を言ったのかは報告済みだ。
父上も僕が宣言して問題ないと確信している上での言葉だ。
僕はこの狀況にがっくりと俯いて諦めたあと、覚悟を決めてその場に立ち上がった。
この場にいる皆の注目が集まるのをじながら、僕はファラ王を見據えると高らかに言った。
「ファラ王に出會った瞬間に一目惚れ致しました‼ どうか僕のお嫁さんになって下さい‼ 必ず幸せにしてみせます‼」
僕の言葉を聞いたファラは「ボン‼」と顔から煙が出そうな雰囲気になっていた。
その後、最初に口を開いたのはエルティアだった。
彼は咳払いをしながら僕を見據えると言った。
「ゴホン……リッド殿のお言葉しかと頂戴しました。ファラ王、惚けておらずに先日、私に言った言葉をこの機に宣言しなさい。それとも、あれは虛言だったのですか?」
エルティアの言葉にファラは「ハッ」とした様子で彼を見ていた。
先日とはどういうことだろうか?
僕がその様子に怪訝な表していると、ファラが深呼吸をしてから立ち上がった。
し前に出ると僕を見據えながら力強く、ハッキリと言った。
「わ、私もリッド様をお慕いしております…… もし、婚姻出來るのであればこれほど嬉しいことはありません……‼」
ファラの言葉に今度は僕が「ボン‼」と顔が真っ赤になり、煙が出そうな雰囲気になった。
この時の僕は、顔を真っ赤にしながら今日という日を一生忘れることはないだろうな、とじていた。
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