《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》ファラの疑念、ディアナの憂鬱

「……うん。その、これからよろしくね」

「……は、はい。よろしくお願い致します……」

僕とファラはお互いの気持ちを何故か父上やエリアスなどがいる前で告白することになってしまった。

僕達の間にはなんとも気恥ずかしい雰囲気が漂っている。

ファラは顔を真っ赤にしながら俯いて耳を上下させている。

その姿がとても可らしい。

やっぱり耳のきってそういうことなのだろうな、と僕も顔を赤くさせながら思っていた。

今となってはファラの耳がく理由を聞こうとした時、ディアナに制止されて良かった気がする。

甘い雰囲気を出している僕達を見ていたエルティアが軽い咳払いをしてから凜とした聲を出した。

「コホン……お二人ともお気持ちが通じていたようで何よりでございます。これにより、婚姻が実現できれば両國の関係はより良いになると存じます。ライナー様、リッド様、大変、差し出がましいことを申しました。お許し下さい」

エルティアは言い終えると僕達に綺麗な所作で頭を下げようとするが、父上が制止して返事をした。

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「エルティア様、そのお気持ちだけで十分でございます。仮令國同士の繋がりを強固にする為の婚姻だとしても當人同士が思い合っているのであれば、これほどの良縁もありますまい」

父上は僕とファラを互に見ながらエルティアとエリアスに向けて優しい聲で言った。

「うむ。今回の我が娘とバルディア家の婚姻はお互いにとって、良い結果となるだろう。 ……リッド殿、改めてファラを頼むぞ」

「……‼ はい。承知致しました」

エリアスは最後の言葉を鋭い眼で僕を抜くように見ながら言った。

その視線に気づいた僕はを張り、その目を見據えながら言葉を返した。

僕の言葉に満足した様子のエリアスはニヤリと笑っていた。

エリアスと僕のやりとりを見ていたエルティアは、小さくため息を吐くとし辛そうな聲で言った。

「ふぅ……エリアス陛下、ライナー様、申し訳ありません。し気分が優れないので私は退席させて頂きたく存じます」

エリアスとライナーの二人は彼の言葉に頷きながら心配する言葉をかけた。

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エルティアはその言葉に軽く謝意を述べると、そのまま部屋を退室しようとファラの前を通り過ぎようとしていた。

「……母上、私には母上のお気持ちがわかりません。何故、先程は私の背中を押すようなことを仰ったのですか?」

ファラはエルティアにしか聞こえない程度の聲で話しかけた。

が行う言の意図がファラにはわからなかった。

先日に続き、今日の行も意図がわからない。

何を考えているのだろうか? ファラは怪訝な表で彼を見ていた。

ファラの表を見たエルティアはいつも通り、冷たく突き放すようにファラにだけ聞こえるように言った。

「ファラ王、私はあなたとの縁は切りました。母上と呼ばれる筋合いはありません。ですが……運命の流れに翻弄されても決して挫けず、あなたの進みたい道を歩みなさい……」

「……‼」

エルティアはそれだけ言うと、表書院から退室した。

ファラは去っていくエルティアの背中を見ながら、先程の言葉にはいつもと違う「慈」に近いものをじていた。

エルティアがファラの前を通り過ぎようとした時に何やら話していた様子だが、僕の位置からはその會話を聞くことは出來なかった。

二人で會話をしたあとファラは俯いて何か考えに耽っているみたいだ。

その時、エリアスが僕を見據えながら言った。

「リッド殿、時にクリスティ商會の後ろ盾になってしいという話をしていたな。代表はすぐ呼べるのか?」

「え? は、はい。ここに來る前に一応、連絡はしておりますので呼べばすぐに來るとは思います」

僕はここに來る前に一応、クリスに使者を送っていた。

エリアスにクリスティ商會の代表を連れてくるようにと、前回の話し合いで言われていたからだ。

使者を通してクリス伝えた容は、「エリアス陛下から呼ばれるかもしれない。良ければ、迎賓館に待機しておいてしい」だったはず。

僕も朝から準備に忙しかったから詳細は伝えられていない。

でも、クリスなら待機してくれていると思う。

「ほう、さすがはリッド殿。話が早くて助かるな。すぐに使いを送ろう」

「それでしたら私が直接、行ってもよろしいでしょうか? 代表のクリスにはエリアス陛下が後ろ盾になってくれるという話をまだしておりません。迎えに行くのと合わせて話が出來れば、説明の手間も省けます」

実際にクリスにはまだ、後ろ盾についての話は出來ていない。

昨日できれば良かったが、忙しすぎてゆっくり打ち合わせる時間もなかった。

ぶっつけ本番になるよりは、しでもクリスと話す時間があったほうが良いだろう。

「ふむ。よかろう。では、リッド殿に迎えに行ってもらおうか」

「承知致しました。それでは、一旦失禮いたします」

エリアスの言葉に一禮すると、僕は立ち上がった。

その時、ふとファラと目が合った。

それだけでファラは顔が赤くなり、耳が上下にいていた。

その姿に僕も照れ笑いをしながら、顔を赤くしていたと思う。

僕は咳払いをしてからファラに向かって、ニコリと笑顔で返事をすると部屋から退室した。

そして、迎賓館にクリスを迎えに行った。

僕が本丸殿から出る際にはディアナも護衛としてついて來てくれた。

迎賓館はすぐ近くだが往復となるとし時間がかかる。

その道中、ディアナがため息を吐きながら呟いた。

「はぁ……それにしても、先程のリッド様とファラ王の雰囲気は羨ましいですね」

「へ……? な、なにを急に言い出すのさ⁉ ディアナだって、ルーベンスがいるでしょ‼」

僕は、ディアナに先程の様子を言われるとは予想外で、思わずルーベンスの名前を出してしまった。

すると、ディアナの顔が珍しく「どよーん」と暗くなった。

何かいけないことを聞いてしまったような気がする。

「ルーベンスは……奧手過ぎるのです。まだ、手を握るだけでギクシャクするのですよ?」

「……可いと思えば良いのではないかな? それに、この間はいいじになっていた気がするけど……」

この間とは溫泉の出口で彼らだけの世界を創っていたことだ。

そのことを指摘した瞬間、ディアナが顔を赤くしながら、し怒ったように返事をしてきた。

「そ、そうです‼ あの一件から、ルーベンスがさらに私に対してギクシャクするようになったのですよ‼ リッド様が『浴』を著てルーベンスに會えと言うからです‼」

「あー……、あれはディアナが魅力的過ぎただけだと思うよ? あの姿は、どんな男でも魅了できるかもね……」

ディアナの溫泉上がりでの良い、濡れた髪と浴の姿が混ざりあいとても妖艶だった。

しかも、この世界において溫泉やお風呂は一般的ではない。

ルーベンスは生まれて初めて見た、ディアナの風呂上がりの浴姿という妖艶な様子に理が吹き飛んで、あのようなことをしたのだと思う。

あの一件から、「さらにギクシャクし始めた」ということはディアナを見る度にあの時の浴姿をルーベンスは思い出しているのではないだろうか?

そう思いながら僕はディアナに質問をした。

「そういえば、レナルーテに來てからディアナはルーベンスと話したりした?」

「え? いえ、私はリッド様の護衛ですからこちらに來てからは、あまり話せていないですね。まぁ、會ってもルーベンスが顔を背けるので話す気にもなりませんけどね……」

ディアナは言い終えると、し暗くなった。

ギクシャクって顔を背けることも指しているのかな?

それにしても「腑抜けのルーベンス」が帰って來たのか。

何か良い方法があれば良いけどな。

そんなことを話している間に迎賓館が見えてきた。

すると、迎賓館の前にいた人がこちらに気付いて手を振りながら駆け寄って來た、そうクリスだ。

「ハァ…ハァ…リッド様、すみません。遅くなりました。エリアス陛下に呼ばれるかもしれないとのご連絡を頂いたので、急いで來たのですが間に合ったでしょうか?」

「ごめん、詳細を伝えられてなかったものね。クリスをこれからエリアス陛下に紹介するから、本丸殿に一緒に來てくれるかな?」

「はぁ……?」

クリスは事の経緯がわからず呆気に取られた表をしていた。

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