《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》リーゼル・タムースカ
「リーゼル・タムースカ」、彼の父親はタムースカ家の中での立場は弱い。
暮らしは平民よりちょっと良いぐらいだった。
そんな狀況が一変する出來事が起きた。
「タムースカ」の一族で力を有する祖父のノリスから手紙が屆き「エリアス陛下の王妃候補者となるように」と命令が下ったのだ。
一族の中で「一番若い」のが選ばれた理由だと聞いた時は、なんて酷い話だとリーゼルは憤慨した。
だが、彼の両親は喜んだ。
候補者とは言え、王の側室になるのである。
娘の幸せを願う親としては、平民に近い暮らしを娘にさせていたのは非常に心苦しいものがあったらしい。
リーゼル自は、華族同士のしがらみが嫌いだったので、今の暮らしに不満はなかった。
なからず好意を抱いていた馴染もいたので、お斷りの返事をしようとした。
だが、全力で両親に止められた。
命令を下したノリスという人は非なところがあり、下手に斷ると大変なことになる。
それに側室に行けば、リーゼルだけでも幸せになれると説得された。
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やむを得ず王妃候補者としてノリスの所で王妃教育をけた後、王の元に行くことになった。
リーゼルは馴染に別れの挨拶だけでもしたかったが結局、彼には何も言えずに家を出ることになってしまった。
詳細は省くが、彼がノリスの所でけた王妃教育はリーゼルの人生で一番、最悪な日々として記憶に殘ることになった。
リーゼルが登城してから數日後、彼はエリアスと対面した。
第一印象は特に何もなかった。
強いて言うなら「この人が王か」ぐらいだ。
リーゼル自が王妃に興味がないのもあったが、登城してすぐに「エリアス陛下の思い人はエルティア様。あとは眼中にない」という話を聞いたからだ。
その話を聞いた時、リーゼルは「王妃候補者として、一族の中から選ばれた本當の理由はそれだな?」と直した。
人を何だと思っているのだ⁉ と憤慨していた。
彼は初対面したエリアスに対して、ノリスの所でけた最悪の王妃教育と人生をめちゃくちゃにされた腹いせをしようと思い立った。
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彼が今後一切の興味を持たないようにするつもりで不満を全部ぶつけた。
「エリアス陛下、無禮を承知で申したきことがございますが、よろしいでしょうか?」
「うむ? 申してみよ」
リーゼルは深呼吸をしてから言った。
「では、申させて頂きます。今回、私はエリアス陛下の王妃候補者として登城致しました。ですが、私はエリアス陛下に興味がありません。むしろ、タムースカからの候補者として無理やり選ばれました。挙句に最悪な王妃教育をけ、誠に以て甚だ憾であります」
エリアスを含めて、その場にいた者が全員唖然とした。
リーゼルはさらに言葉を続けた。
「また、登城をして最初に私が耳にした話は、エリアス陛下とエルティア様が両想いであるということでございました。私は王妃候補者としてここにおりますが、無理に陛下の寵をけようとは思いません。表向きだけの候補者、側室で構いません。私の事は今後、気にされずに結構でございます」
リーゼルが言い終えると、その場には靜寂が訪れた。
王妃候補者から落とされても良い。
処刑になってもしょうがない。
そうなれば「あいつら」に一泡吹かせられるかもしれないと思い、不満を発させ半ばやけを起こしていた。
無言の時間がし流れ、最初に聲を出したのはエリアスだった。
だが、彼が発したのは大きな笑い聲だった。
リーゼルは予想外の反応で呆気に取られた。
周りに控えている者達も同様だ。
ひとしきり笑ったエリアスはリーゼルに興味津々と言った様子で言った。
「ふふふ、リーゼルだったか。貴殿ほど面白い事を言う者は中々におらん。是非とも我が傍に置きたくなった。誰が何と言おうとも、王妃候補者として迎えれよう」
リーゼルは小さく「えぇ……」と呟いてから、言った。
「……不束者ですが、よろしくお願い致します」
彼、リーゼルは知らなかった。
「逃げるを捕まえたくなるのが、権力を持った男のである」
リーゼルは図らずもエリアスをある意味「魅了」したのだった……
登城してから月日が経つと、エルティアとリーゼルの二人はとても仲良くなっていた。
登城してから間もないリーゼルは、付け焼刃の王妃教育で城の中では四苦八苦することが多かった。
また、良くも悪くもエリアスの興味を引いてしまったので、候補者達の中で孤立してしまっていた。
そんな狀況を見かねて助けてくれたのが、なんとエルティアだった。
エルティアもエリアスの寵をけていると見られて、孤立していたのだ。
その結果、二人の流が深まるのは必然だった。
エリアスの出りも気付けばエルティアとリーゼルに偏り始めた。
華族の中ではどちらかが王妃になるだろうと言われ始めた。
その矢先にリーゼルの懐妊が発覚するのだった。
リーゼルの懐妊にエリアスとエルティアは喜んでくれた。
彼は二人に子供を諦めないように伝えた。
その上でリーゼルは、自分は王妃のではない。
エルティアがなるべきだと訴えた。
そんな彼をエルティアは諭すように優しく叱った。
「リーゼル様、王妃のがあるから、王妃になれるのではありません。『王妃になる者が、王妃のとなる』のです。大丈夫、私達があなたを支えます」
「エルティア様……」
エルティアの言葉に支えられ、リーゼルは王妃となった。
名前も「リーゼル・レナルーテ」と改められた。
約一年後、リーゼルは男の子を無事に出産した。
その子の名前は「レイシス・レナルーテ」と名付けられた。
レイシスが生まれると、王妃候補者から側室になった達の一部は城を去り始めた。
レナルーテの側室は、誰かしら王の世継ぎを産めば、側室を続けるかどうかの意思表示が出來る。
意志が尊重され承認されれば側室を辭め、城を去ることが出來る。
ただし、一度辭めると王からの要が無い限り側室に復帰することは出來ない。
通常、側室を継続する者が多い。
だが、エリアスの場合はリーゼルとエルティアの二人を大切にしている。
その為、機會に恵まれにくい狀況があった。
そして、側室を辭める意思表示をした者達にエリアスは出來る限りの支援を約束していた。
元から側室を辭めた者に対しての支援は國として行われているが、エリアスはこれをさらに手厚くした。
これは、リーゼルがエリアスに王妃候補者となった経緯や不満を伝えたことが大きい。
エリアスなりに候補者、側室となってくれた達にしでも報いたい気持ちから行ったものだった。
エリアス、リーゼル、エルティアの三人はお互いに支え合い、レイシスも元気に育っていった。
順風満帆と思っていた。
だが、しずつレナルーテの運命を大きく変える出來事が起きようとしていた。
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