《やり込んだ乙ゲームの悪役モブですが、斷罪は嫌なので真っ當に生きます【書籍大好評発売中&コミカライズ進行中】》レナルーテの暗雲

「本日も、行方不明者の報告が來ております。恐らく、奴隷関係の拉致、拐と思われます……」

「……またか。ザック、影達のきはどうなっているのだ⁉」

エリアスの自室に怒號が響いた。

彼の表は険しく苦悶に歪んでいた。

レイシスが生まれ約一年が経過していた。

リーゼルが王妃となり、それを支えるエリアスとエルティア。

も以前より活気に溢れていた。

だが、レナルーテに影を落とす出來事の報告が起き始めた。

のダークエルフ、主に子供とが行方不明になるという報告が多発し始めたのだ。

エリアスは早急に國に拉致、拐についての注意喚起を行った。

ザックに調査を命じていたが詳細の報告が中々上がって來ず、エリアスは苛立っていた。

エリアスのを諫めるようにザックは話し始めた。

「エリアス陛下、気持ちはわかりますが落ち著いて下さい。影達による報告をまとめた資料を本日お持ちしております。厳しい容の為、心を落ち著かせて目を通してください」

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ザックの言葉にエリアスは深呼吸をしてから書類をけ取り、目を通した。

容はザックの言う通り厳しいものだった。

レナルーテの國民を拐していたのは隣國「バルスト」の息がかかった者達だった。

しかし、影達でも繋がりを立証できる的証拠は何も手にれることが出來なかった。

拉致、拐に関與する実行部隊はバルスト國もしくは周辺で雇った者達を使い、足がつかないようにしていた。

それでも、手にれた報から辿っていくと、バルストの暗部が関わっている可能が高いことがわかった。

だが、現時點でわかったことはそこまでだ。

エリアスは険しい顔のまま、目を瞑り考した。

バルストの目的は何か?

ダークエルフが奴隷として高値で取引されることは知っている。

しかし、隣國であるレナルーテの民を拐、拉致すれば國家間の関係は著しく悪くなる。

バルストの暗部が関わっている可能があるなら、國が主導していることになる。

エリアスは呟くようにザックに質問をした。

「……現在、我が國とバルストの兵力と國力差はどれぐらいだ?」

「國力差は現時點ではあまりありません。ですが、數年後にはバルストが上回る可能が高いでしょう。また、兵力は質では勝っておりますが、數で負けると思われます。もし、戦爭となれば勝つのは難しいでしょう」

「數で負ける……バルストの奴隷兵か……」

エリアスは苦々し気に呟いた。

バルストは「奴隷」が「合法」とされており、その労働力と兵力により急激に國力を増加させていた。

ザックはエリアスの言葉に頷き、説明を続けた。

「はい。一回や二回であれば我々が勝てるでしょう。ですが、それ以上となると、我が國の兵力が耗して維持できない可能が高いと思われます」

「……影による暗殺、裏工作はどうだ?」

ザックはエリアスの言葉に首を橫に振ると、し悔しそうに言った。

「殘念ながらバルストは、現在ダークエルフが國しただけで強制的に奴隷落ちになっております。すでに影から數名送りましたが、警戒と対策もされているようで失敗致しました。勿論、こちらの報はわからないように処理しております。ご安心下さい」

「……そうか。苦労をかけるな」

エリアスは再度、目を瞑り考し始めた。

バルストの目的は挑発だろう。

昨今の國力増加による兵力増強により、レナルーテを手中に収める算段を付けていているのかも知れない。

レナルーテとして出來ることは何か?

今後のバルストとレナルーテの運命の鍵を握るのは何なのかを考えた。

目をゆっくり開くとザックに指示を出した。

「……早急にバルストに使者を立てろ。レナルーテの民を拉致して奴隷売買することは國家間の爭いを招くだけだと。そして、バルスト経由で奴隷落ちしたダークエルフのすべてを返還するように伝えろ」

「承知致しました」

エリアスの言葉にザックが頷くのを見てから、付け加えるように言った。

「……それから、マグノリア帝國の皇帝に繋いでしい旨と、現狀を伝える使者を帝都に出してくれ。それから、バルディア領のライナー・バルディア辺境伯にも同様の容で使者を出しておいてくれ」

ザックは珍しくエリアスの意図に首を傾げて、確認するように質問した。

「帝都はわかりますが、バルディア領のライナー辺境伯にも必要でしょうか?」

「うむ。帝都の貴族共に使者を出したところで対岸の火事と見るだろう。だが、萬が一のことがあればバルディア領は対岸と言っても近過ぎる位置での出來事だ。帝都の貴族よりも我らに友好的になってくれるかもしれん」

「……承知致しました」

ザックは納得した様子で頷いた。

エリアスはザックとの話し合いが終わった後も、今後のレナルーテの行く末を案じて目を瞑り考するのであった。

それから數日後、思いもしない吉報がエリアスに屆けられた。

「……本當か? エルティア⁉」

「はい。陛下の子供が今、私のお腹の中におります……‼」

「おお‼ これほど、めでたいことはない‼」

エリアスは歓喜していた。

リーゼルに続き、エルティアも懐妊となった。

これで、レナルーテの王族は安泰だろう。

あとは、バルストとの問題をどう収束させるかであった。

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