《【完結】悪と呼ばれたもと王妃はもうも結婚もコリゴリなのです》プロローグⅢ
醫師からは怖い夢を見て嘔吐しただけだから問題ないと診斷されたにもかかわらず、過保護な父である公爵のジーニアは大騒ぎしている。
「おー。かわいそうに。ファビア。何か悪いものでも口にしたのではあるまいな。」
ぐるぐる巻きにされて寢かされているベッドの回りにいた使用人たちをギロリ、見回す。
お前たちが毒でももったのではないかと一人一人尋問するくらいの勢いだ。
「ちがうの。お父様。わたくし、悪い夢を見たのよ。一度死んじゃってまた生き返る夢を見てとても怖かったの。」
「おお。そんな夢を見たのか。かわいそうに。それもこれもファビアを寂しくさせている者がいるからだね?」
さきほどからのその冷たい聲は使用人と、そして公爵の後ろにひかえている公爵夫人キャロライナへ向けたものだ。
うーん…。
心の中でファビアがうなる。
そういえばそうだった。と…
父親の公爵ジーニアはファビアを溺しておりいつもファビアを甘やかしていた。
そもそもファビアはここ、ガーディアン王國では屈指の名門の家柄、ロンズディール公爵家の一人娘なのではあるが、このジーニア、かなりの遊び人で若いころは外に人を何人も持っており、結婚もせずに遊び惚けていたらしい。
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そんな中、唯一産まれた子どもが、地方の分の低い田舎の豪族の娘との間にできたファビアだったが育児は母親にまかせて自分は放置していた。
いい加減にしろと両親から言われてやっとまともな貴族と結婚したものの、何にでも「はい。」と従順に自分に従う淑の鏡のようなキャロライナ夫人が気にらず辟易していたところへ、ファビアの母親が死んでしまったと田舎豪族から連絡がきて、仕方なく迎えに行ってみるとそのファビアのかわいさにメロメロになってしまったというわけだ。まぁそれには理由があって、ファビアが名うての形で有名なジーニアとおそろしく瓜二つだったというわけだからさないわけにはいかなかったのだ。
けれど、これがいけなかったのだ。
ファビアを溺するのはわかるが、これだけ周りをうたがっていてはファビアに敵を作るだけだというのに…。
なんとかしなければならない。
父親が自分の味方であることを笠に著ていた昔とは違う。
失敗しないようにしなければ…。
「わたくし寂しかったのかも。けれど、このぬいぐるみがあるからこれからは大丈夫よ。お父様。」
「ぬいぐるみ?」
さきほどから抱きしめているうさぎのぬいぐるみをベッドの中でさらにぎゅっと抱きしめる。
「お母さまからにいただいたの。さすがお母さまだわ。わたくしがさみしいことをわかってらっしゃったの。」
「おまえが?」
ジーニアが後ろを振り向くと、キャロライナが突然自分を不思議そうに見つめる夫にドギマギしたように口を開いた。
「あ、はい。お誕生日に…。」
普段ろくに自分を見向きもしない夫がまじまじと自分を見ていることに耐えられなくなったように夫人はうつむく。
「そうか…。おまえが…。」
ジーニアはぼそっとつぶやき、視線を娘に戻した。
「気にったのならよい。今日の誕生日パーティーは大丈夫か?もし無理ならやめてもよいのだぞ。」
ファビアの7歳の誕生日パーティーは盛大に開かれることが決まっていた。
今まで地方に引っ込んでいたファビアを王都ガナディーでお披目する意味もある。
まだ7歳のの子なので、母のキャロライナがお茶會を開くという名目での誕生日パーティーだが、ガーディアン王國の主要な面子の夫人や子たちがやってくることになっている。
「大丈夫よ。お父様。わたくし、綺麗なお洋服を著たいわ。」
「おお。そうだな。ファビアなら何を著てもかわいいに違いない。調が問題ないなら予定通り誕生日パーティーを開こう。」
綺麗な洋服を著たいといえば何も言わないだろうと思ったがその通りだった。
ほっとをなでおろす。
母が企畫したこの誕生日パーティーをやめると言ってしまうと、母が悲しんでしまう。
前世でさんざん泣かせたこの人のよい母を泣かせるのはもう嫌だった。
使用人たちの信用もまた失うことになる。
そういえばこの誕生日パーティーで前世では高慢にふるまい、の敵をたくさん作ってしまったのだが、今世では決してそんなことにはならないようにしなければ…。
敵は作らず、ガーディアン王國でつつましやかに暮らし、一生を終えよう。
もう結婚はコリゴリだし、もコリゴリだ。
幸い公爵家の領地は腐るほどある。一生獨でいい。
かつて悪と呼ばれたわたしだって、ガーディアン王國民として産まれたのだからこの國をしている。
國を失いたくなんてない。
だからなんとしてもガーディアン王國の末路を変えなければ…。
そのためにも決してわたしなどが、王妃になってはいけないのだ。
王妃にふさわしいが…きちんと王妃になれるよう…ガーディアンが滅ばず繁栄するようにわたしはの程をわきまえ、つつましやかに獨貴族として人生を楽しむわ。
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きっとそれは何か意味がある。
神はなぜなのかは教えてくれなかった。
ってことは自分で考えろってことなのだ。
それはもしかしたらガーディアン王國の滅亡を阻止するためなのじゃないかと思う。
いや、そうにちがいない。
そのためには、わたしが王妃にならないこと。これが條件だ。
今日からわたしは自分が王妃にならないようにするために全力を盡くす。
絶対に間違えてはいけないのだ。
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