《【完結】悪と呼ばれたもと王妃はもうも結婚もコリゴリなのです》久しぶりの婚約者

「ファビア。久しぶりだな。」

「ディエゴ様。」

思わずうれしくなる。

どんなにほおっておかれたってやっぱりこの人のことを好きなんだとファビアは思った。

それに…。

これから顔合わせがあるせいか今日は正裝を著ていて、ピシッとした軍服姿がしい。

エメラルドの糸をポイントで使っているのはファビアのドレスとあわせてあるのだろう。

ガーディアンに來ていたときは軍服ではなくウエストコートだったので軍服姿を見たのは初めてだ。

軍服がミルアーの貴族男の正裝なのだ。

まじまじと見つめていると、ディエゴが侍たちに人払いを命じ、部屋にはディエゴとファビアの2人きりになった。

「お前に言っておかなければならないことがある。」

「はい。」

手袋を丁寧にはずされ、素手で指と指をからませて手を握る。

気配を消さなければならない話らしい。

「まずはミルアーにおける俺の立場だ。皇太子ではあるが、実質他の國の皇太子ほどの権限はない。」

「え?」

「ミルアーは皇帝の力が強い。だから全部アイツがOKといわなければ政治は進まないし何も決まらない。俺がどう反論してもだ。今回の結婚についてはアイツはあまりいい顔をしていない。」

ひとつ変えずに事務的な口調でディエゴが話していることにファビアは気づいた。

もしかして皇帝陛下と仲が悪いのかしら?

「お前は歓迎されていないということだ。」

うっ…。

「それはどうして?ディエゴ様が勝手にわたしを連れて來たから?」

「まぁそうだろうな。それに…。俺が前世のころのように戦爭狂として他の國をつぶしにかからないことが気にらないらしい。その俺がつれてきたが気にらない。まぁ要するに俺を気にらないんだ。」

「え?」

ディエゴの戦爭狂は皇帝陛下が元兇だったということ?

「前世では當たり前の事のように皇帝の命令を聞き、領土を広げる事だけを考えて毎日ひたすら任務のようにこなしていたからな。も涙もなかった。」

そうだった。とファビアは思った。

ディエゴはそれを悔いているんだったわ。今世ではそうはならないと。民を救うためだけに戦爭をすると、それがディエゴの今世での生き方。

「ではディエゴ様は、皇帝陛下の命令に背いて民を救っているの?」

「まぁ。できうる限りな。アイツの目を盜んでいろいろいているのさ。」

「ディエゴ様…。」

そんなこと全然知らなかった。

全然言わないから…。

ファビアは思わずディエゴの手をぎゅっと握りしめた。

絶対的権力の皇帝陛下に背き、民のための政治を行う。

それがどれだけ大変な事か…。

ディエゴは一瞬目を見開きファビアを見たが、再び事務的な口調でつづけた。

「今日の顔合わせではアイツもめったなことはしないと思うが、これから先俺がいない時に何を仕掛けてくるかわからない。」

やっぱりディエゴはあまりいないのだろうか。

「アイツは俺とお前を會わせないために明日から俺をまた戦爭に派遣した。しばらく戻れないだろう。」

「まぁ。」

「おまえにはアランドロに頼んでかなり剣を叩き込んでもらったからな。々のことでは屈しないだろうが…。」

「あれはそのためだったの?」

婚約してから、ミルアーのしきたりについて家庭教師がついたが、それ以外にアランドロから鬼のような剣の訓練が繰り返され、何なのかと思っていたところだった。それ以外に各種の毒の報についてもかなり勉強させられ叩き込まれた。

マナーやミルアー語や周辺諸國の件については、前世で頭の中に叩き込んであったので、ディエゴはすっとばしてくれた。

「ミルアーで生き抜くためには必要だ。特にお前のように他國からきた皇太子妃となるとな。毒についても十分注意しろ。解毒剤は主なものはそこの壁をぶち抜いたところにれてあるし、俺の部屋にもある。いざとなれば確保できるはずだ。」

帝國の皇太子妃となる。

それはこれくらいの覚悟がいるということなのだろう。

「わかりました。十分注意します。」

「よし。話は終わりだ。あとは晩餐を楽しむだけだ。あまり待たせるとまたうるさい。早く行こう。」

ディエゴはすいすいと手袋はめてくれ、自分も手袋をはめた。

そして手をとる。

「ようこそ。わがミルアーへ。」

うやうやしく、禮をし、手袋の上から手の甲にキスを落とす。

「ありがとう。ディエゴ様。」

ファビアはにっこり笑った。

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