《社畜と哀しい令嬢》別れのとき
その日の事は、途中までしか覚えていない。
お母さまの容態が急に悪化したと知らせがあったのは早朝で、私は斉藤さんと病院に急いだ。
たくさんの管に繋がったお母さまの目はく閉じて開かない。
お醫者さまが斉藤さんを連れていって、何かを話していた。
私はそれを聞きたくなくて、お母さまの手を握る。
「お母さま…お母さま、起きて」
無意識に出た聲が震えていた。
縋るように手を強く握っても、お母さまはピクリともかない。
無機質な機械の音だけが一定の時間で鳴り響く。
「玲奈さま…」
いつ戻って來たのか、斉藤さんが涙を流して私の肩にれた。
私はその手に縋り付きたくなったけれど、お母さまから目を離してはいけないと思った。
「玲奈さま、沙耶さまに呼びかけてください。いつものように、たくさん話しかけてあげてください」
その言葉が何を意味するかなど、考えたくなかった。
けれど私はもう、そうする以外にできる事はないのだろう。
「お母さま、玲奈よ。実は今日は學校をサボってしまったの……」
ーーねえ、だから、叱って?
そうして、どれほどの時間を過ごしたのかは分からない。
絶えず話し続けて聲が枯れそうになった時、お母さまが一瞬だけ微笑んだ気がした。
「お母さま?」
目が開きそう、と思った時だった。
機械の音が長く鳴り響いた。
私はそこからどうやって過ごしていたのかはっきりと覚えてはいなかった。
あの音が鳴った瞬間から世界がぼんやりとして霞みがかっていて、なんにも覚えていない。
分からなかった。自分がなんなのか、どうしてここにいるのか。
お父さまや里が何かを言っていた気がするのに、それすらも覚えていない。
自分のがどこかに行ってしまったようだった。
何を見ても、何をしても心がかない。
喜びも悲しみもない。
今の狀態がいいのか悪いのかも、もう分からない。
(私はこのままどうなるのかしら)
お母さまを支え続けた斉藤さんは、心労と無理が祟ったのか調を崩してしまった。
私はこの世界に一人、放り投げられたのだ。
でもそれすらもどうでもいい。
今振り返れば、それがおかしな狀態だったのだと思う。
けれどその時の私にはそれがおかしな事だとは思えなかった。
暗闇に足を取られていることに気付きもしなかったのだ。
ズブズブとが沼にっていって、出るのが億劫になっていた。
けれど、私にかかった霧を晴らしてくれたのは、前に同じように私を救ってくれた人だった。
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