《社畜と哀しい令嬢》鷹司家にて
智子視點です
三條義政への挨拶は驚くほど簡単に終わった。
玲奈を興味無さげに一瞥するあの目には怒りをじ得なかったが、これだけで挨拶がすむのなら安いものだ。
智子が挨拶をした際に向けた好な視線に関しては気付かなかったフリをする。
せいぜい金を手にしたと今のうちに喜んでおけばいい。
冷めた気持ちで智子は老齢の男を見據えた。
「報告ありがとう。お疲れさまでした、日永さん」
「はい。こちらこそありがとうございました」
智子は目の前に座って微笑む憲史に頭を下げた。
初対面こそ疑いのを滲ませて智子を見ていた憲史だったが、最近では穏やかな表を見せてくれる。
しは信用されたのだろうかとも思うが、もしかすると橫に鷹司玲子がいるからかもしれない。
その事に安堵しながらも、智子は心震えあがっていた。
義政との面會後、智子と玲奈は昨日行けなかった鷹司邸へ向かった。
端末を通して見てはいたが、宮森家の上を行く豪邸に智子は震え、の置き場を失って逃げ出したくなった。
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だって考えても見てほしい。
何気なく歩く回廊のそこかしこに、云百萬云千萬はくだらないアンティークや置が置いてあるのだ。
數萬円の買いすら孝する智子にとって、この豪邸はある意味お化け屋敷だった。
さらに智子を張させたのは、通された客間にいた憲史と玲子、憲人の存在だ。
畫面でも見ていたが、実際の玲子と憲人のご尊顔の麗しさといったらない。
影のものを自負する智子はその眩さに目が潰されるかと思った。
隣にいる玲奈も含めると四対一で智子が灰になる計算である。
(目が!目があー!ってやりたい…さんなぜいないんですか! 私ここで孤獨死しますよ!?)
會社で働いてる富永に因縁をつけつつ、初めての鷹司家お宅訪問が始まった。
まず出された紅茶とケーキにマナーとはなんぞやと自問しつつ戦いは始まる。
そもそも手にしているカップが怖い。
以前雑誌のセレブ用達! 高級ブランド特集とかで見かけたものに似ている。
茶を飲むだけでなにをこんなにお金をかけて! これだから金持ちは!と、妬み100%で富永と悪態をついた記憶がある。
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割ったら最後、割ったら最後だ。
お茶を飲むのにこんなに気をつかう事があるだろうかと苦悩しながら、智子はふと客間から見えるしい庭園に視線を向けた。
ここからは見えないが、庭には玲奈と憲人が一緒にいる。
久しぶりに彼らを會わせることができたので、智子の報告がてらゆっくりと二人きりで話せる時間を設けたのだ。
(その代わり私は憲史様と玲子様と向かい合ってるけどねー! ハッハー!!!)
ビジネスモードに切り替える事で何とか會話を繋いでいるが、正直智子にこの二人はハードルが高かった。
幸いにも智子の職業に興味を持った玲子がたくさんの質問をしてくれたので、その場を繋げることができる。
(お客様、ここにいるのはお客様なのよ智子! 最高の笑顔で最高のおもてなしよ!!)
もちろん智子は憲史や玲子を疎んでいるわけでも、嫌いなわけではない。
話していて分かるが、憲史と玲子には庶民にはない上流階級特有の雰囲気がある。
いわゆるお育ちの違いだ。
どれだけ智子が社會人スキルを駆使したとしても、目の前の高貴なお育ちの二人の足元にも及ばない。
それはカップを持つ仕草からも分かってしまう。
もちろん、理不盡に人を傷つける事を良しとしない人柄なのは理解している。
しかし人間としての格の違いに萎してしまうのだ。
分かりやすく言えば、眩しすぎて智子には荷が重い。
そもそもここで喜んで會話ができる人間ならば、富永から休憩室を借りたりすることも無いだろう。
相手が良い人間かどうかは、親になる上ではさして重要なものではない。
智子にとって二人は、遠くから眺めていたい存在なのだ。
だが、これからの事を考えるとそうも言っていられない。
住居を提供してもらっているし、智子は玲奈の保護者になる。
玲奈が將來嫁ぐ鷹司家と円な関係を築き上げるのは保護者としての大事な任務だ。
そして差しさわりの無い人間関係を築くために必要な事を、智子はすでに知っている。
我がことながら心のクズなことよと思いつつ、智子は百點満點の笑顔を浮かべるのだった。
「――そろそろ二人を呼んできましょうか」
どれくらい経ったのか、智子には數時間にもじた時間を中斷するように憲史が呟いた。
憲人と玲奈を呼ぶために使用人らしきが客間から退出する。
(やった! 今日一番の…いや、今月最大のミッションが終わった!!)
ホッと智子が息をついた瞬間、目の前の玲子が深く頭を下げた。
「日永さん、今回の件では深く謝申し上げます。本當にありがとうございました」
「ええっ!?」
突然の事に揺した智子は咄嗟に聲を上げてしまった。
「私からも謝を。あなたは玲奈さんだけではなく、憲人も救ってくれた」
玲子の隣に座る憲史にも頭を下げられて、智子は揺した。
「あの、お言葉はありがたく頂戴しますので、顔をお上げください…!」
否定して問答するのが嫌だった智子が素直に言葉をけると、憲史も玲子も顔を上げた。
「ですが、私のに余るお言葉でもあります。私一人がどれだけいても、こんな風に玲奈ちゃんを連れだす事はできませんでした。憲史様のお力あっての事ですし、家も提供して頂いているとしましてはこちらが謝を申し上げたいくらいでして…」
智子の言葉に玲子は頭をふった。
「いいえ。あなたとご友人がいていなければ、私たちは玲奈ちゃんを案じながらもここまで早くに手は出せなかったはずです。私たちの世界にも不文律は存在しますから」
玲子はしりを見せて微笑んだ。
確かに玲奈と連絡を取れない狀況下では、憲史も手を出しにくかっただろう。
だからこその謝なのだと分かっていたが、先ほど言ったように智子にはなんの力も無く、案だって富永のものだ。
それを自分の手柄のように思う事だけは許せなかった。
「分かりました。ですが、これ以上はどうかお許しください」
それでも真摯に謝を述べる玲子に、智子はビジネス用ではない、本來の智子の笑顔を見せたのだった。
――――――
「張したあああああああ」
三條家と鷹司家の行腳を終えて家に戻った智子はソファに倒れこんだ。
そんな智子を玲奈は不思議そうに見つめて、一人がけのソファに座る。
「憲史様も玲子様も、智子さんが何をしても怒りませんよ?」
「それは関係ないのよ玲奈ちゃん。品が良すぎて私のに余るの! あれ以上一緒にいたら眩しくて溶けるの私は!!」
「もう、溶けませんよ」
苦笑する玲奈を見て、智子は寢ころんだまま「あ!」と聲を上げた。
「憲人様と、ちゃんと話はできた?」
唐突な話題展開に玲奈は目をぱちくりとさせたが、すぐに赤くなってやわらかい笑みを浮かべた。
その殺人的な可さに死にそうになりながら、智子も嬉しくて笑う。
「その様子だと、楽しい時間だったんだね」
「はい。婚約破棄の件があって不安でしたが、やっぱり憲人さまは憲人さまでした」
「そっか」
「あ、でも憲人さまが落ち込んでいたのがし気になりますけど…」
なんとも言えない表の玲奈に智子は首を傾げた。
「落ち込んでるって、なんでまた」
「あの、今回の件で何もできなかったと仰って。自分が子供なのがけないと…」
「ははあ…」
玲奈の言葉に智子は納得した。
大事な人のために何かしたいと思うのは當然だ。
どうにかしたいと思って何もできなかった時、人間は無力に苛まれる。
智子だって、今回自分がした事を振り返って落ち込んだのだ。
好きなの子を自分の手で救えなかった憲人は、さぞかし辛かっただろう。
「でもまあ、それだけされてるって事だもんねえ」
「あ、あいって…智子さん!」
何気ない呟きだったのだが、玲奈は智子の言葉に顔を真っ赤にして俯いてしまった。
その様子が大変可かったので暫く憲人の話をふっていたが、玲奈がを尖らせて拗ねてしまったので智子は何度も謝罪する羽目になったのだった。
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