《家族に売られた令嬢は、化け公爵の元で溺されて幸せです~第二の人生は辺境地でほのぼのスローライフを満喫するので、もう実家には戻りません~》第20話:スイート野菜の栽培4

翌日、マノンさんと一緒に裏山の様子を見ていた時のこと。

早くも雑草と一緒に野菜の芽が出てきたため、領民たちに雑草抜きの仕事を割り振っていた。

そこに遅れてきたジャックスさんが合流すると、

「噓だろ。もう芽が出てやがる……」

などと言い、目の前の景に呆然と立ち盡くしていた。

昨日ちゃんと言っておいたけど、やっぱり信じていなかったんだろう。盛大なフラグを回収して、現実をけ止めきれていない。

「嬢ちゃん。これは夢じゃねえよな?」

「違います、現実です。長が早いって言いましたよね?」

「すまん。本當にここまで早いとは思わなかった」

ジャックスさんが驚く一方、すでに各々の作業に取り掛かっている領民たちは、余裕のどや顔を見せている。

「俺たちはお嬢のことを信じてたから、驚かねえよ」

「お嬢を疑うなんて、俺たちにはできねえからな」

「お嬢の指示通りにけば、間違いないってわけ」

みんなのテンションがおかしな方向に向かっているが、彼らはジャックスさんより驚いていたことを、私は知っている。

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『マジかよ!! もう芽が出てるじゃん! 普通にあり得なくねー!?』

『ええええっ! もっと時間かけて出てこいよ!! 頑張りすぎだ!!』

『お、お、落ち著けよ。ま、まだ芽が出てきただだだ、だけやろ?』

ジャックスさんを落ち著かせるよりも、気が転しすぎた彼らを沈める方が倍以上の時間がかかっている。

そのおかげか、妙に打ち解けられたみたいで、気がつけば『お嬢』と呼ばれ始めていた。

早くも公爵夫人という印象が薄れているような気がして、ちょっぴり悲しい。れてもらられたという意味では、とてもいい結果なんだけど。

そんなことを考えつつ、改めてジャックスさんに今後の栽培について話すことにした。

「どちらかといえば、スイート野菜は実を付けてからが長いです。それでも、普通の野菜よりは早く収穫できるじですね」

「じゃあ、どうして高騰しているんだ? 単純に考えて、普通の野菜よりも収穫量が増えるだろ」

「水分と魔力の調整が難しいんですよ。まあ、見ればわかると思いますけど……笑わないでくださいね?」

「ん? ああ」

こうして徐々におばあちゃんの教えを浸させていくのか、と思いながら、こほんっと咳払いをする。

「今日の水やりで、水分が足りてない子はいるかなー?」

「嬢ちゃん。さすがに植は返事をしな――」

し呆れたジャックスさんだが、すぐに本日二度目の呆然とした表を見せた。

風も吹いていないのに、一部の野菜の芽がパタパタと揺れく。それはもう、返事をしているようにしか見えなかった。

「マジかよ……」

「マジですね。ちなみに、あのグッタリしている子は水をあげすぎました。あとで土を乾燥させないと枯れてしまいます」

「掘り起こして乾いた土でも混ぜるのか?」

「いえ、火魔法で土を乾燥させるじですね」

「そういう方法もあるんだな……」

ジャックスさんが半信半疑に見えたので、グッタリしている薬草の元に向かう。

軽くしゃがみ、土をって火魔法で乾燥させると……、ちょうどいいところで葉がパタパタと揺れた。

何とも言えない表を浮かべるジャックスさんだが、この景を信じていないわけではないだろう。

子供だったら『すっごーい!』と興味を持ってくれると思うが、大人だと『おかしい……』と常識を疑わなければならないため、戸っているんだと思う。

「植學士というのは、みんなこうなのか?」

「うちの家系はこんなじですけど、魔力の質とかの問題があって、けっこう難しいんですよね。たぶん、珍しいやり方だと思います」

「だろうな。特異な方法だと思ったぞ」

そこまでハッキリ言わなくても……と思う反面、ずっと近くで見ていたマノンさんが一緒にうんうんと頷くのだから、そういうことなんだろう。

「一般的なスイート野菜の栽培方法だと、毎日あげる水の量を計算して求めます」

「計算……?」

「はい。土と葉の魔力量を一時間起きに測定して、野菜の平均消費魔力を求めるんですよ。それを踏まえた上で、その日の度と気溫を測定して、水を與える量をまた計算で求めるんです」

「なるほど。高騰の理由がわかった気がする。それを毎日やるとなれば、相當面倒だろうな」

ジャックスさんがゾッとしているので、もうこれ以上は言わなくてもわかるはずだ。

そこに植合まで考慮されるなんて言ったら、今後はスイート野菜がおいしく食べられない可能があるので、緒にしておこう。

「植學士は幾帳面な家系が多いので、大雑把な行は許さないんですよね。私には到底無理な方法です」

「他の植學士からしてみたら、嬢ちゃんの方が難しいと思うだろうな。ないものねだりってやつさ」

「結局、ちゃんと育てば同じですからね。私もこれだけ広い規模になると、さすがに水をあげすぎる子も出てきましたけど、まあ、大丈夫でしょう」

うまく管理できるか不安だけど、私一人でやるわけじゃない。ここで働く領民たちの協力があれば、きっとうまくいくだろう。

仕事に取り組む彼らの姿勢を見て、私はそう思っていた。

「たった一日ですげえ量の雑草だな」

「早く抜いてやろうぜ。お嬢の野菜が育つところを早く見てえ」

「明日には実を付けてるかもしれないからな」

さすがにそれはないよ、と教えてあげたい。でも、彼らも冗談で言っているだろうし、それだけワクワクしているのなら、水を差すわけにはいかない。

興味を持って育てることで、が芽生えてくると知っているから。

彼らがどんな野菜に育ててくれるのか、私も楽しみにしている。

そんなことを考えていると、マノンさんが私の服を引っ張った。

「奧方、なんか良いことでもあった?」

「そう見えますか?」

「うん。今日はいつも以上に機嫌が良さそう」

「ここの生活はいつも楽しいですけど……そうですね、今日は野菜が無事に芽を出して、特に嬉しいのかもしれません」

曖昧な返事で返したけど、何に嬉しいのか、自分が一番よくわかっている。

こうして誰かと野菜を栽培する喜びを分かち合うのは、生まれて初めてのこと。これから野菜の芽が育ち、収穫する喜びまで共有できることを、私は喜んでいるのだ。

「早く食べ頃になるといいね、奧方」

「まだ先ですよ。せめて、実が付いてから食べることを考えてください」

「いつ頃になる?」

「基本的には、五日ほどで実がついて、そこから一週間でじでしょうか。魔力や天候次第で多前後しますが……」

おばあちゃんが私に薬草の栽培を教えていたとき、こんな気持ちだったのかもしれない。

ワクワクしているみんなの姿を見るのが、たまらなく嬉しくじるのであった。

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